Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

KUNG-FU GIRL milkさんインタビュー

久々のインタビュー記事です。今回は大阪を拠点に活動するインディバンド、KUNG-FU GIRLのボーカルとギターを務めるmilkさんにお話を伺う事ができました。2015年の夏にMiles Apart Recordsから100枚リミテッドでリリースされたデビューカセットをよく聴いており、そのアノラックとパワーポップにJUDY AND MARYをミックスしたようなソングライティングは新鮮に捉える事ができたのです。特にmilkさんの歌はあまりその手のサウンドでは聴く事のできない、どこかJPOPの香りを存分に残したもの。一刻も早いアルバムのリリースが待たれます。
と、いう事で本題のインタビューを。ネット上でも詳細なバイオグラフィーを見付ける事ができない彼女達、実はこんなバンドです。

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Miles Apart Recordsからリリースされたカセットも即完しまして、KUNG-FU GIRLを気になってるリスナーの方も多いと思うのですが、ネット上でもあまりに情報が少ないので、バンドのバイオグラフィーをお聞きしようかと。結成はいつ頃になりますか?
milk(以下 み):メンバーが4人集まって結成したのが、2014年の春です。その少し前位から、ドラムのハッピーと私の2人で、メンバーを探しながら曲を作ったりしていました。
バンド名の由来は一体どんなものなんですか?
み:由来は特に何も無いんです。前やってたバンド名に「ボーイ」という単語が付いたので、反動から新しいバンドには「ガール」を付けたかったんです。ちょうどメンバーでバンド名考えていた場で読んでいた雑誌に「カンフー」という単語を見付けたので、KUNG-FU GIRLになりました!
なるほど笑 milkさんとハッピーさん、おふたりの時代から今に繋がるような方向性、所謂ギターポップやパワーポップだったりっていうジャンルの曲を書いていたんですか?
み:そうですね。はじめに作ったのが、私達のsoundcloudに上がっているtiger trap という曲だったので、タイトルの通りギターポップは視野に入れていました。 ただ、具体的にどんなバンドにしようか考えてなかったので、変拍子のエモっぽい曲とかもありましたし、色んなタイプの曲作ってました。中でも一番しっくりきたのがtiger trapだったので、そのままそういう方向性になりました。tiger trapは改題してferris wheelというタイトルでカセットにも収録してます!
tiger trapといえば最高のアノラックバンドです。KUNG-FU GIRLのイメージとも直結します。そもそもmilkさんはどんな音楽がお好きで、バンドをはじめたんですか?
み:tiger trapは最高です!私はスピッツとBeach boysが大好きなので、ポップで可愛い音楽がやりたいなと思ってました。まあ、KUNG-FU GIRLではあまり難しい事は出来ないと思ったので笑 あとはK Recordsのtiger trapやall girl summer fun band、talulah goshみたいなギターポップや、fastbacksやmuffsみたいなガールズパンクも大好きで。
なるほど、出てくるバンド名全て最高です!まさしくKUNG-FU GIRLは上げていただいたバンドのハイブリッド、アノラックにパンクのラフさをミックスしたように思えます。プラス、milkさんのボーカルにはほんのりJPOP的なニュアンスを感じてたりしたのですが、特に影響の強い女性ボーカル等はいらっしゃったのでしょうか?
み:そうですか!初めて言われましたが、邦楽育ちなのでやっぱり出てますよね笑 邦楽の女性ボーカルでは、JUDY AND MARYのYUKIさんが大好きですね!担当はギターでしたが、JUDY AND MARYはコピバンも組んでましたよ。
ジュディマリ時代のユキさんの歌の感じは少し出てると思います、、!さて、昨年には Miles Apart Recordsからデビューカセットが出ましたが、リリースされた経緯についても教えてください。
み:はい!KUNG-FU GIRLのsoundcloudに練習の一発取り音源を上げていたのを、Holiday!recordsのヒデアキングさんが見つけて気に入って下さったんです。ライブにも足を運んでいただいて、褒めてくださって。その帰り道に、「Miles Apart Recordsとか合うんじゃない?」って言ってくださって。メンバーもみんなMiles Apart Recordsは大好きで憧れのレーベルだったので、「いつか出せたらいいね〜」みたいな話をして。その後すぐにヒデアキングさんがMiles Apart Recordsの村上さんに連絡してくださって、村上さんがsoundcloudの練習音源を気に入って下さって、すぐにカセットテープをリリースする事が決まりました。あの時は本当にびっくりしましたね。
ヒデアキングさんを通してMiles Apart Recordsと繋がり、お声がかかったと。収録曲はどのように決めたのですか?また、B面に収録されたAsh「Kungfu」のカバーも非常に印象的です。あのカバーはやはり曲名も踏まえて決めたって感じですか?笑
み: 本当にHoliday!recordsのヒデアキングさんには頭が上がりません笑 収録曲は、既存の曲プラス、Miles Apart Recordsに似合う新曲として作ったMaybe tomorrowを選びました。 Ashは私もハッピーも大好きで、そもそもバンド名が決まった時に「KUNG-FU GIRLだしKungfuのカバーやるしかないやん」となりまして、デビューライブから演奏してました!カバーするの大好きなんですよ。Kungfuは曲も私達にぴったりで気に入ってます!
なるほど。私もKungfuのカバーはとてもハマッているように思えます! ご存じの通り、デビューカセットは100枚プレスで即完となりました。僕もオーダー開始と同時に買ったり、頑張りました笑 反響はいかがでしたか?
み:ありがとうございます!反響は想像以上に良くて本当にびっくりしてます。そんなに今時の音楽をしてる訳でもないのに不思議です。でも自分が好きな事をやってみんなが聴いてくれるっていうのはめちゃくちゃ嬉しかったです…!
現在は関西を中心に活動されていますが、現行のバンドで特に強い共感を覚えたり、おススメしたいバンドはいますか?
み:ガールズバンドが好きなので、みんな大好きなHomecomingsは私も好きです。面識はありませんが…。She saidもカッコ良いですね!あんなクールな女の子のバンドあんまりいないですよね。あとは、ladyflashとalicetailsは最高です!曲がキャッチーでワクワクします。ライブもカッコいいです。
本当にありがとうございます!最後に、スピッツナイトを主催するほどのスピッツ好きのmilkさんが選ぶベストスピッツアルバムを3枚教えてください。
み:はい、もちろん!
①インディゴ地平線
スピッツの作品でも一番可愛いアルバムかと!スピッツらしいキュートなポップソングが詰まったアルバムです。初恋クレイジーのイントロでもうやられます。
②名前をつけてやる
パンキッシュでノスタルジックで変てこな歌詞。パンクとキラキラギターポップが行ったり来たりで歌もヘナヘナしてて可愛くて最高です!
③小さな生き物
最新のスピッツも常に良いです。色んなテイストの曲があります。スピッツナイトでは野生のポルカでみんなで踊ります!
ありがとうございます!最後に何かあれば!
み:アルバムを今年の夏〜秋位に出したいと思ってます。まだレーベルも何も決まっていないんですが、宜しくお願いします!

MY 2015 BEST DISCS 60

今年もお疲れさまでした。10月ぐらいから主に仕事関係で心身共に困憊し、週に数枚届く新しい音源を楽しみに気力だけで働いた結果、年末には遂に倒れるはめに。社会の厳しさ・理不尽さを痛感した1年でございました。そんな中、1月に生まれた長女の目まぐしい成長と、高校生ぐらいから何も変わってない自分を対比させ勝手に落ち込んだりと面倒くさい奴全開だったと思います。
そんなわけで何かと更新が滞った2015年、個人的な音源のベストを60枚列挙させていただきます。50枚ではなく60枚であることに意味はありません。単純に絞りきれませんでした。順不同でございますので、順位はありません。また、活発だったリイシュー物、オムニバスも除外。良い音源たくさん聴けたなあ。さっき計算したら350枚くらい音源(CDレコードカセット)買ってました。少ない小遣いで創意工夫した結果です。
今年はKiliKiliVilla周辺のリリース及びライブに心底熱狂させていただきました。こんな状況がずっとずっと続けばいいのになあ と思います。やっぱりパンクが好きだし、音楽が好きだ。
旧譜については、ずっと掘り続けているネオアコからソフトロックに派生。数年ぶりに到来したビーチボーイズリバイバル(勿論自分内です)も相乗し、ロックのマッチョイズムからとことん背を向けたポップソングばかり探し出しておりました。年末は本当にyellow balloon周り、とくにBrady bunchのセカンドは毎日バカみたいに聴いてた。妻もキレてた。
来年も宜しくお願いします。来年こそはガンガンに活動して勝手に楽しみたいです。とりあえず1/11のKiliKiliVillaイベントが楽しみ。
※コメントは徐々に追記していきます。
PUNPEE『お嫁においで 2015』
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PUNPEEに言わせれば『マス対コア』じゃなくて『マスもコアも』って事なのかなーと。彼の代表作『Movie on the sunday』は未だに聴くし本当にエポックな作品ばかり発表し続ける姿勢には頭が下がります。センスだけで悪い奴全員やっつけちゃう感じ。数年前ほどヒップホップは聴かなくなってしまったけど、彼の動向にはこれからも目を光らせていきたい。早くオリジナルアルバム出して~!
CAR10『RUSH TO THE FUNSPOT』
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今年に入ってライブを観る機会も増えてきた。ジャンル関係なく様々なイベントに出演しているんだけど、どこでも必殺のパンクチューンを連発して後は楽しそうにフロアでお酒を飲んでいるメンバーの佇まいとやんちゃな音楽性が直結している感じが羨ましい。何より曲が本当に良いし好みだし、録音中だという新曲もめちゃめちゃに良い。もっともっと特別なオンリーワン、と思わずマッキーの名言でも引っ張り出したくなるくらい今年は本作ばかり聴いて毎回感銘を受けてた。担当させていただいたロングインタビュー(KKVウェブのマガジンに掲載)は絶対に読んでください!
NOT WONK『LAUGHING NERDS AND A WALLFLOWER』
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映画でも漫画でも何でもそうなんだけど、物語の始まりはいつだってワクワクする。NOT WONKのことです。僕らが愛していたMC4イズムをこんなに広大なスケールでアップデートする若者が北海道から現れるなんて…とかしたり顔をする僕らの数十倍のスピードで加速する彼らは既に遥か先を見ているんだろうなあ。当ブログでもインタビューやアルバム発売時に配布されたフリーペーパーに寄稿させていただいたりもしました。僕らの想像なんて余裕で飛び越えてぶっ壊してパンクを更新していってほしいと勝手にずっとずっと期待しています。
Salad boys『metalmania』
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pitchfolkでも6.8点と微妙な点数で片付けられていた事を私は忘れません。とにかくリードトラックであるDream Dateに惚れ込んで購入、ジャングリーで牧歌的なギターポップチューンの連打にやられます。なんと彼ら、同郷の伝説The CleanのボーカルであるDavidのバックバンドを担当した経験があるらしい。Flying Nunは大好きです。仕事(営業職ね)中、サボりスポットである閑静な住宅街の公園のベンチに腰掛けセブンイレブンのコーヒー飲みながら本作を聴いて数字が上がらない言い訳を考える日常でした。
山田稔明『The Loved One』
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今年は一度もライブを観る事ができなかったんだけど、本作の内容には舌を巻きました。前作『新しい青の時代』に色濃かった内省的なムードから脱却し、風通しの良いポップセンスを獲得する事に成功しています(それは軽やかな作風の企画盤『緑の時代』を挟んだ事も大きいんだと思う)。リリックのテーマには喪失が重要なモチーフとして含まれているはずなのに、しっかりと前を見据え未来へ鳴らしているように聴こえてくる。今年はシャムキャッツやayUTokio、スカート等東京インディーの代表的バンドとの邂逅にいちファンとしてワクワクさせられました。早く次の音源が聴きたいしライブが観たい。
Young guv『Ripe 4 Luv』
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私はパンクが大好きなので、Ben cook先生のベストワークはmarvelous darlingsであると信じて疑いませんでしたが、それは間違いかもしれないと本作を聴いて感じたのです。脱臼入院テクノポップから某ファンクラブ的ギターポップチューンまでバラエティに富んだ内容なんですが、全体を貫く空気感は『フェイク80'sポップfeat.サマーブリーズ』とでも形容したくなる爽やかでゴージャスなムード。誰も同意してくれないとは思いますがBlood OrangeのCupid deluxeを感じたりしました。
KID FRESINO『Conq.U.Er』
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今や日本のヒップホップで動向を注視しているのはDOWN NORTH CAMP周辺とTemple ats周辺だけになってしまいました。数年前まではそれこそギャングスタラップも喜んで聴いてはサグな日常をハッスルしてましたね。DOWN NORTH CAMP周辺の鳴らすヒップホップはとことん音楽思考で、日常から地続きで嘘なく活動している感じが最高に好きなんです。flashbacksのデビューにも相当衝撃を受けましたが、KID FRESINOのフロウで呼吸をするようなムードは少し小生意気で気取ったキャラと相性ピッタリ、何時間でもラップを聴いていたいラッパーです。
Toro Y Moi『What for?』
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フリー配信された『Samantha』も凄く良かったんだけど、選ぶならやはりこっちです。初めて本人の近影を用いたジャケット通り、過去最高に親密で人肌の温もりを感じるアルバムになったんだと思いました。恐らくはles sinsを始めた事で住み分けができたんでしょう、00年代の先駆者が60~70年代までタイムリープし、よりメロディアスな歌を持ち帰ってきたという出来すぎた物語。
Boys age『ELSE』
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2015年最もアルバムをリリースしたアーティストのひとりだと思います(7枚くらい出したよね?)。calm time5部作も良かったんですが、ギターポップ的な清涼感と軽やかさを携えた本作がベスト。持ち味のひとつであるベッドルーム感は薄く、ライブでも映えそうなハイライト『glorious daze』はbandcampで初めて聴いた時一発で心を撃ち抜かれたものです。
OMSB『Think Good』
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2010年頃のSIMI LAB出現には度肝を抜いた。Youtubeにアップされた『walk man』の映像は何回も観たし、PSGの台頭と共に新しい時代、価値観の到来を感じたものだ。あれからSIMI LABには色々あって、いくつかの素晴らしいアルバムを残して、実質的なブレーンであるOMSBが2015年にリリースした本作から放たれるポジティブなヴァイブス、Think Goodというタイトルからも現れる通り過去最高に開けた作品であると感じることができる。他ジャンルのリスナーでも一発で「これはやばい」と心を掴むことができるであろう、ヒップホップとしての強度と筋の通し方が敷居の低さを伴った最高のアルバム。このムードはSEVETEEN AGAiNの近作にも通底するものがある。
Homecomings『Another New Year』
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何より曲が好きで、ただただファンなんです。もはや彼女達をギターポップだのジャングリーだのの形容で済ませちゃう方はいないと思うんだけど、優れたポップソングだけが持ち得る普遍性を当たり前に内包した珠玉のソングライティングはインディーという言葉さえ窮屈であるように思う。アコースティックアルバムと銘打たれた本作はアコースティック故の録音やミックスの綻びは無く、いつも通り徹底してメジャーなプロダクション。そこが彼女達の魅力の一側面であると思うし、ソングライティングや録音で他の所謂インディーポップの追随を許さないものにしている。『HURTS』のアコースティックバージョン最高です。
星野源『YELLOW DANCER』
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某業界最大手商業メディアが本作を年間ベストに挙げていてちょっとひいたんですが、まあ良いものは良いと思います。事前情報のキーワードでありトレンドでもある『ブラックミュージック』色は思ったより濃くはなく、あえて薄めて飲み口爽やかなJ-POPに仕立てているバランス感覚はさすがモテ男ですよ。エポックメイキングなものにも出来るところをあえてしないというか、音楽的な余白を残しているところが上手いなあ~と。
Royal headache『high』
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新世代的な素晴らしいリリースが続くオーストラリアのwhat's your rupture?をレペゼンするパンクバンドのセカンド。ガレージパンクにモッドとギターポップをミックスした唯一無二のサウンドに熱いソウルをたぎらせたピンボーカル、男泣き必至です。勢いや音圧一辺倒ではなく、良いメロディが書けるバンドだと思います。
peach kelli pop『peach kelli pop 3』
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アリーちゃんのポテンシャル、ポップセンスが大爆発した最高傑作。前作までのチープ感を衣装ケースにしまい込み、よりドリーミーに、よりチャーミングに、よりメロディアスにドレスアップ。高い女子力で屈強なパンクスから自意識系インディーボーイまで内股にさせる青い名作!
NAVEL『heartache』
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もうね、私みたいな在宅系パンク偏愛家からすれば、NAVELは神様仏様なんです。日本のアンダーグラウンドにおける長嶋茂雄終身名誉パンクスなんです。そんなNAVELの10年ぶり3rdアルバムが聴けるだけで生きてて良かった~神様仏様…。1stの『uneasy』2nd『depend』は大クラシック盤なわけで、メロディックパンクが好きなのに聴いた事がないとかぬかす奴は足の裏を永久に猫に舐められるはめになればいい…とまで思っていたので、本作はリリースされただけで十分、存在してくれていれば最早聴かなくてもいいです。私は聴きますけど。
THE HUM HUMS『BACK TO FRONT』
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練り込まれたコードワークとビーチコーラス、王道のポップメロディで90's POP PUNKの黄金律を高らかに鳴らすハムハムス入魂のセカンド。POP PUNKを骨の髄まで愛し尽くし、POP PUNKの美味しいオカズを全て盛り込み弁当箱ごとぶちまけバーストする様はPOP PUNKの幕の内弁当や~!サーフを歌っているのに肝心のサーフィンが出来ないところは彼等のリスペクトするBeach boysと同じ!
Beach Slang『The Things We Do to Find People Who Feel Like Us』
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前身であるWESTONにはあまりピンときていなかったのだけれど、そこそこのキャリアを迎えたメロディック野郎共がまさか2015年にこんな進化を遂げるなんて…と驚愕した1枚。それは伝統のパンクサウンドに現行インディーのムードをぶちこんだ、新時代のサウンド。SEVENTEEN AGAiNヤブさんいわく、前例のない進化だそうです。何歳になっても新しいもの、今の時代の気分を受け入れる柔軟な姿勢に感服しました。
GUAYS『GOO! CHOKI! PUNCH!』
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2015年、最も純度の高い音楽活動を行っていたのは13月の甲虫クルーであったように思う。MEAN JEANSとのツアーや全感覚祭の開催における一連の活動からもそれは明らかだ、満場一致である。まるで音楽と心中するかのように美しく、故に儚さも感じさせる素晴らしいクルーだ。本作は肝心の音楽についても純度の高さを維持した100%天然のパンクロックを一切の妥協無しで繰り出す1枚。「GET UP KIDS!」はライブでも聴いてクソあがりました。
Fidlar『TOO』
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もう過去のアレやいつかの伝説や死んでしまったダレカの事はとりあえず忘れていい、今一番美しく生命を放射する音楽はドレとドレとドレで、キミとボクに必要なのはドレなんだ、果たしてソレは本当の事なのか、よく考えな、理解したら今日から始めよう、死ぬのは数十年先のいつかでいい、できるだけ大きな音で光は数万光年先の向こうまで。
SUMMERMAN『Temperature is...』
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エモリバイバル、スーパーチャンク、ラフメロディックギターポップ。彼等のサウンドを指して形容されるあらゆる横文字は少しだけ避けておいて、常に新しい価値観は新しい世代によってもたらされるのだという事について考える。私は彼等が心底羨ましい。商業誌や今月のパワープッシュ、チャートアクションとは無縁の場所でこんなに高らかに音を鳴らせるということ。ここが世界の中心ではなくとも、自分たちの好きな場所で好きなバンドと歌をうたうという事がどれだけ自由で美しい事なのかを理解しているということ。この暑い1日が夏のせいだということ。
Nic Hessler『Soft Connections』
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Catwalkのボーカルであった彼等がバンドの活動を休止後、満を辞してリリースしたソロアルバムがCAPTURED TRACKSから。その事実だけで胸一杯なのだが、収められたトラックの素晴らしさに胸が破裂しそうになる。ギターポップという私達好事家の慰み物に留まらず、まるでサイモン&ガーファンクルやベル&セバスチャンに宿る普遍性を伴った美しいポップソングの数々。まいりました。
SEKAI NO OWARI『tree』
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妙なアピールをするつもりは毛頭ないのですが、インディーデビュー当初よりひっそり彼等を好んでおりました。観念的過ぎるリリックについては私の範疇外なのですが、ロックだのバンドだのというカテゴリーに唾を吐きひたすらに素晴らしいポップソングを量産し続ける姿勢に感服です。本作はトータルアルバムとしても完成度が高く、世界観の統一、コントロールにおいて右に出るものはいないでしょう。与えられた潤沢な資本をクリエイティビティに全振りする姿勢はこれからも維持してほしいものです!
Tenement『Predatory headlights』
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2011年にファーストが出た時、「メロディックパンクの文脈に新鮮な要素を取り入れたバンドが出てきたなあゴニョゴニョ」とそれらしい事を思い、今後の躍進を確信したものですが、なんとセカンドまでに4年もの期間を経てしまいました。でも銀杏BOYZというバンドはセカンドまで9年かけてるから気にしないでね。
Doodles『The Incredible Pranking Doodles
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当ブログでもインタビューさせていただいたTHE SATISFACTION松澤くんがギターを務めるパンクバンドのファーストがUGから。インタビュー時にお伺いしたのですが、松澤くんは日本のロック/フォーク以外にもlate70's~early80's punk/power popフリークなのです!そんな松澤くんのポップセンスが暴発する自滅寸前ポップパンクサウンドに頭のネジをシンクに流して3日放置したようなガールボーカルが乗るわけです。これは2015年のGIRL NEXT DOORや!
Kung-fu Girl『Cassette Tapes Club #8』
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今年精力的にリリースをかましたMiles Apart Records(インタビューあるんで読んでください)の即完カセットテープシリーズでヌルッと滑り込むようにデビューしたギターポップ/アノラックバンドkung-fu girl。Fat Tulipsが幼児化したような、Go sailorが骨折したような、vaselinesからユージンが失踪したような、Haywainsにチャットモンチーが加入したような、City giantsが忘れてしまった初心を取り戻したかのような、僕と彼の好きなギターポップがここにあります。
Littlekids『Littlekids』
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とても悩んでいた時期(いつも悩んでいるけど)に本作をよく聴いてたせいもあり、今聴くのにはなかなか勇気がいる1枚。転職活動中における熊谷での面接の帰り道、車中で流れるlittlekidsと一緒に何度も『inside』を歌いながら自らの足元を見つめ、鑑み、ポジティブとネガティブが反転し、自宅に帰りスヤスヤ眠る娘の顔を見て泣いたり笑ったりしたものだ。結局転職はせず今の会社で働いていく決心をしたけれど、私はlittlekidsに借りができた気がしてならない。
Westkust『Last Forever』
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数年前にシングルが単発で出て、しばらく音沙汰ないと思ったらなんとアルバム!いやーluxuryは最高のリリース連発しておりますね。私はシューゲイザーってそこまでハマれないんですが(マイブラもラブレスよりsunny sandae派)、本作は最高でございます!歌にエフェクトを必要以上にかけず、ちゃんとメロディの良さで勝負している感じがして大好き。来日してほしい。
Martin courtney『Many Moons』
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Real estateのボーカルのソロ。real estateの近作が好きなら間違いなし、ソフトなサイケデリアに満ちたサンシャインポップス。水戸でNOT WONKやCAR10を観た帰りの車の中で聴いて凄く感動した記憶があります。teenage fanclub好きも是非。あと、ジャケットが大変好みであります。
sleeping aides and razorblades『Favorite synthetic』
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2015年、ロックやパンクが好きだと自負しているのに本作をチェックしていない方がいるとすれば、それは大変不幸な事だ。彼等は最先端のその遥か先を鳴らしているし、やや計算より初期衝動が勝っていたファーストに対し本作は完全に楽曲の持つポテンシャル、放つエネルギーを掌握しきっているのだ。本作の発売直後にリリースされたflexiもアルバムのアウトテイクながら後日殫ともとれる最高の出来、もはや彼等にあらゆる期待を抱かない方が無理って話であります。大好きです。
Gleam garden『Singles 2006-2013』
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名前は勿論昔から知っていたのですが、抱いていたパブリックイメージ(step up周辺でしょ?)から聴く機会が無かったのですが、9月のMEAN JEANS来日ツアー足利編でのライブに心打たれsnuffy smilesから出た本作をゲット。ストレートに胸を打つサッドメロディック全開、サッド成分が他を60%ほど凌駕する号泣サウンド、もはや泣き叫びすぎて段々腹が立ち、終いには大笑いしているような猛烈具合で最高です。
ECD『Three wise monkeys』
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ECDは昔からファンで、新譜が出るたびに半分惰性で買っていたのですが、前作からフロウが大きく変わったことにより新鮮に聴けるようになりました。Twitterでの彼の立ち振舞いに対する私個人の感情はさておき、彼のラップ、リリックから得られる感情はいつだって自分を奮い立たせてくれます。
THE ACT WE ACT『リズム』
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今年彼等のライブを観ることができず無念です。ceroのアルバムがあんなに評価されて何故本作の素晴らしさは誰も語らないのか。混沌が整頓されて根本が正論で形付くられた最高のパンクアルバムである。ニューウェーブもノーウェーブもフリージャズもパワーバイオレンスも全て一線で掌握するラウドミュージックのなれの果て。4/3にはキラーパスやミルクと共に下北でライブをするらしいので目撃したいですよ。
Alpaca sports『When You Need Me The Most』
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もうね、全然変わってない。私が愛するalpaca sportsそのまま。あの素晴らしいシングルを連続でリリースして、『Just for fun』という圧倒的かつ自然体のキラーチューンがあって、来日ライブで無邪気にAnother sunny dayカバーしちゃう感覚。あの感覚をなにひとつ変えずに2015年で再現しちゃう感じ。ノスタルジーと言われようがずっとこのままでいて欲しいって思っちゃうようなバンドなんだ、alpaca sportsは。
Starvingman『No Starvingman』
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年初にリリースされたデビューカセットもよく聴いてたんだけど、本作のリードトラックである『SAYONARISM』のMVにやられてしまった。誰にも似てないメロディやストレートなバンドサウンドは勿論ど真ん中でグッとくるんだけど、やっぱりリリックが良くて。マーティさん節としか言い様のない発音を英語っぽく崩した日本語なんだけど、所々にパンチラインが潜んでいて、それらが一番光るような形に構成が練り込まれてる気がする。パンクが好きで良かったなーと思います。
Total babes『Heydays』
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cloud nothingsとwavvesのコラボアルバムは正直滑ったと感じてるんだけど、total babesは安定した出来の作品をリリースしてくれた印象。向こう見ずなメロディと、あえて作り込まないラフなガレージサウンド、安っぽい録音。スピーカーの向こう側でメンバーがビールでも飲みながらゲラゲラ笑って演奏してる感じが見えてくる。パンクってそれでいいんだと思います。
And Summer Club『Superdash』
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今年の活躍ぶりは皆さんご承知の通りだし、王舟のニューアルバムのMVにも演奏で参加しててビビりました。当ブログでもインタビューやらせていただいて嬉しかったです。一聴するとリヴァーブが聴いた現行のインディーっぽいニュアンスなんだけど、そこにパンクの焦燥とスピード、ラフさを正面からぶつけてサーチ&デストロイしてる。全曲短くてあっという間に終わるところも実に潔い。早くアルバムが聴きたいです。
Anorak joy『You Can't Touch My Heart Anymore』
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英国伝統のネオアコサウンドfrom水戸。FRIENDSのカモメも巣に帰るくらい高らかに鳴り響くトランペット、ジョーストラマーのポスターを貼り直す程に青いメロディ、キラメキトゥモローにポップキッスはもうおしまいにしたくなる小洒落たアレンジ。毎日を少しだけ豊かにしてくれる細やかなたしなみとしての音楽がここにあります。
Batman winks『Gud Pops』
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全て嫌になる日が年に数回、いや月に数回ぐらいはあるとして。そんな日は正直音楽を聴く気もなくなるし、ベッドの中でジッと目を閉じながらひたすら時間が過ぎるのを待つだけなんだけど。ある日またそんな調子でベッドに入ろうとする時に踏んづけそうになったのがBatman winksだった。正確には少し踏んづけてしまったものだから焦ってディスクをCDプレイヤーに入れて再生確認したのね。イントロから脱力を通り越して脱臼してしまったかのようなローファイ極まるポップチューンが流れてきて「遂に壊してしまったか」なんて嘆く暇もなくダニエルジョンストンばりの酩酊メロディが私の脳髄に染み渡り、「全て嫌になる日も捨てたもんじゃないっす」とか思えたものでした。
Tom and boot boys『Latest Fuckin' Collection Vol.2015』
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高校生の時から、パンクに没入した瞬間からずっと変わらず好きなバンド。何故ずっと変わらず好きでいられるのかと聴かれれば、彼等の音楽がずっと変わらないでいるからだと答えるでしょう。ここ数年の新しい曲ばかり入った本作を何度聴いても、パンクを始めて聴いた瞬間の感動と高揚を味わえる。私はクズだけど、クズなりに精一杯生きてます。
VOGOS『100% VOGOS』
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本作を北浦和のユニオンで買った時、特典としてメンバーの顔のお面が付くらしく、それをCDと一緒に袋に入れられそうになり、必死で店員さんを制止したものの既に袋はテープで閉じられてしまった。「このお面本当にいらないなあ…」とか考えながら自宅に到着。少しでもお面を有効に活用してあげたく、自宅の冷蔵庫に貼っておいたら翌朝にはごみ箱に捨てられておりました。
Marching church『This World Is Not Enough』
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Iceageのボーカル、eliasのソロアルバム。Iceageの近作とも似通ったムードを共有しながらも、ピアノやストリングス等バンドには持ち込みづらいであろう楽器を全面に押し出したこれぞソロアルバム!ってな出来だ。ただeliasさん、自分で自分の顔をどや顔で眺めているというジャケットのデザインだけはいただけませんぞ。や、イケメンなんだけどさ。
GEZAN『言いたいだけのVOID』
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今年一番のキラーチューンでしたね。とにかく今のGEZANはかっこいい。音楽と投身自殺しかねないくらい、彼らの活動全てが音楽的であると思う。音楽に付いてまわる不純な事象全てをぶち壊して、彼らと黄金の時間だけ残ればいいと思う。
Communions 『Communions ep』
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真っ先にstone rosesを連想したけど、すぐに違うなって思った。眠れなくて朝になってしまい、光がカーテン越しに寝室を白く染めた瞬間が音楽になったような、ささやかな幸せと後悔の連なり。後にSEVENTEEN AGAiNの冒曲からもCommunionsからの影響を感じて凄くグッときた。
THE SATISFACTION『はすep』
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4月に新代田feverでライブを観てまずやられて、夏に出た本作を聴いてもっとやられた。「優男」「インザサマー」最高!彼らがリスペクトするピーズにもエレカシにも吉田拓郎にも無い、今この時代を生きる若者だけが持つ閉塞感、哀愁、愛憎を爆音のパンクサウンドにのせて鳴らすということ。松澤君の人柄も好き。
The Cavitys『5th demo』
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狂ったように矢継ぎ早に5枚のデモをリリースして、どれもがもうスノッティーでセンスフル、ファニーかつアンガーの連打で正しくパンク。音の抜き加減や音質も絶妙に計算されたショボイズムでございます。フルアルバム早めにお願い致します。
Sauna youth『distractions』
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name your priceと2980円の狭間を行き来してそろそろ息も切れてきた頃だ。Max eiderのリイシュー盤と一緒に購入した本作を聴きながら色々な事を考えるけど、結局サウナユースの爆音に飛ばされてどうでも良くなってしまうんだ。生きてればいい事あるよって言われてる気がして、また明日も頑張ろうって勝手に決意する。
Pictured resort『Phenomenon On My Pillow』
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アルバムには収録されていない、7'オンリーの激キラーポップチューンを。今この手の音をやると、猫も杓子もシティポップのタグを貼られてしまって嫌気が差す。彼らが鳴らすAORはチルウェイブ以降世界中のベッドルームで起きた革命の下に再定義された新しいインディーポップなんだ。新しい曲を書けなくなったprefab sproutには引導を渡して、僕達は僕達で楽しむしかないよね。
ISSUGI&DJ SCRATCH NICE『UrbanBowl Mixcity』
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ISSUGIは大好きなMCのひとりだ。DJ SCRATCH NICEと組んで制作された4thアルバムは言うなればいつものISSUGIなんだけど、それはマンネリを恐れて望まない方へ舵を切る大御所は成し遂げる事ができないセンスだと思う。
JIV『Cassette Tapes Club #6』
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Black lips直伝の悪がきガレージに浮遊感と多分のセンシティブを配合させたパンクサウンドを放つ早稲田のJIV。1発で好きになった。特に相馬君が初めて作ったというB面の一曲目「B.S.B」は初期WEEZERばりの繊細なアルペジオから一気に加速しシンガロングパートに突入する超キラー、KiliKiliVilla安孫子さんも激賞してました。
EXPERT ALTERATIONS『YOU CAN'T ALWAYS BE LIKED』
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SlumberlandからリリースされたEpが良くて愛聴の限りを尽くし、遂にリリースされたフルアルバムは歓喜の雄叫びをもって迎えました。ジャングリーというワードはこれからもっともっと大きなキーワードになっていく気がする。後にLiteratureとのスプリットも出て、自分の中の点と点が線になり震えた。
Killerpass『まわりたくなんかない』
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試行錯誤を繰り返して、ようやく辿り着いた待望のファースト。SEVENTEEN AGAiNの直後にリリースされた事実に拍手を送りたい。それだけでグッとくる。「少数の脅威」も「まわりたくなんかない」も根底にある感情は近いものだと思うし、この二作を同じ屋根の下に納めたKiliKiliVillaはこの国のパンクを再定義している。すばらしい。
only real『Jerk At The End Of The Line』
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odd eyes『A love supreme for our brilliant town』
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peepow『Delete Cipy』
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over head kick girl『over head kick girl wants to kill you』
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salt of life『Old youngster』
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suueat.『suueat.』
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Titus andronicus『The Most Lamentable Tragedy』
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falls『wednesday』
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SEVENTEEN AGAiN『少数の脅威』
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ご無沙汰しております。

f:id:ongakushitz:20151214144144j:plainすっかり更新が滞っておりました。というのもですね、レコードは相変わらずたくさん買っていますし、現行のリリースでもグッとくるものは多々あったりもしているのですが、何分仕事で神経をすり減らす日々が続いておりなかなか記事を書いたり話を聞いたり物事を考えたりする気にならなかったのが実情でございます。
12月の中旬には遂に心労から胃を壊してしまい、約1か月のお休みをいただく形になりようやく心身共に落ち着いてきた次第です。死ぬかと思いました。
休みをいただいたのはいいものの、平日休日問わず24時間オールフリー。社会人になってからの7年間、こんなにまとまった時間を過ごす事は無かったので暇で暇で困っています。娘の面倒を見ながら音楽を聴いたり、ソフトロックに傾倒してみたり、聴かなくなった主に和製ヒップホップやソウルのレコードを百数枚北浦和のユニオンに売りに行き思いっきり嫌な顔されたり(査定で三時間半待ちました)、スターウォーズ6作を一挙に観賞してみたり、昼間から回転寿司に行ってみたり、学生時代に戻ったかのよう。そろそろご近所のおば様方がざわめき出す頃です。
この勢い(ヒマの勢い)で色々記事を書いたりインタビューしたり企みたいと思います。ここぞとばかりに平日のライブにも出没します。どうぞ御贔屓に。
また、その他感想連絡苦情がある方は以下まで~。
shortcut-dancing-madness@ドコモ

今近所のワンダーグー内にあるソファーでこれを書いてるんですが、横で韓流雑誌を読んでる頭チリチリのおばさんが自らの股間をモソモソまさぐり出して吐きそうです。助けてください。

あの娘、Killerpass『まわりたくなんかない』を聴いたらどんな顔するだろう

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私はハヤシック君と話をした事がない。ライブハウスで目をギロギロさせていたり、物販前でオロオロしていたり、ステージでベースを弾きながら低空ジャンプを決めている場面は何度も目撃しているが、会話らしい会話は一度もした事がないのだ。しかし私にはハヤシック君がどんな奴で、どんな事を考えていて、どんな事に怒っているかが分かる。それは、このKillerpass『まわりたくなんかない』を毎日聴いているからだ。
このアルバムのリリックからは等身大のハヤシックという人間が見えてくる。それはパンクバンドのアルバムとして重要な事だ。ひとりの青年の徒然なる思いがパンクサウンドの上で飛び回る。実に痛快であり本質的だ。
特に私が心を奪われたのは『レイシズム』である。KiliKiliVillaのコンピレーションアルバムやTHE ACT WE ACTのスプリット盤にも収録された楽曲であるが、まさしくKillerpassを代表する名曲だろう。ドカドカ暴れまくる引っ越しおばさんの布団叩き的怒濤のドラミング、謎のエフェクトでフニャフニャに萎びたイカの一夜干し味のギター、ゴロゴロ喉を鳴らす野良猫ベースに部活帰りの中坊化したFAST FOODみたいなボーカル。レイシズムに対する感情を希望と諦め、相反する感情を込めて綴った最高のリリック、ストレートなポップメロディ。一聴して彼らと分かる、強烈に記名性のあるパンクロック。
彼はきっとひねくれていて、人見知りで、不器用だ。しかしながら強い気持ちと確かな審美眼を持ち合わせてる青年だろう。そんな彼の思いを増幅し撒き散らかすKillerpassサウンド、そのカラクリに迫りたい。
そもそもポップパンクというカテゴリーから彼らは始まった。
誤解を恐れずに申し上げるならば、ポップパンクとは様式美の音楽であるように思う。いかにフォーマットを忠実に再現するか、いかに様式美のクオリティを高めることができるか、いかにポップパンクとしてのポイントを抑えつつオリジナリティを発現するか。鉄板のフレーズ、カウント、メロディ、コーラス。私も大好きなフォーマットであることを断っておく。
音楽にとって「更新する」という行為はその面白味のひとつだ。どんなやり方だっていい。既存のフォーマットをナナメから見てみたり、新しい価値観や考え方を持ち込んでみたり、異ジャンルの要素や特徴を配合してみたり、ミックスや音響を著しくいじってみたり。やり方は様々だが、時代毎にそうした新しい何かを見つけ出したり、または繋げる事によって音楽は進化してきた側面がある。それが天然であろうが計算であろうが関係ない。例えばFruityが他のスカパンクバンドとは全くベクトルの異なる支持を受け続けているのもそういう事であるし、Going steadyやliteratureにも言えることだ。
ポップパンクはその様式美の素晴らしさゆえに、しばらくそうした配合が実現されてこなかったように感じる。現存する手札だけでポップパンクは最高なのだ。ところが、Killerpassである。彼らが愛するポップパンクに持ち込んだものは従来のそれにはない異質のものであった。メロディメイクこそユーロポップパンクのそれに近いが、ギターには謎のエフェクトが施され、ドラムは凶暴なD-BEATを叩きこみ、極めつけはまるでブルーハーツのようにストレートかつ剥き出しの日本語によるリリック。それが天然なのか計算なのか、バランスがよく分からないところもいい。この感覚はレーベルメイトであるCAR10にも共通するものがあると感じている。
Killerpassのファーストアルバム『まわりたくなんかない』はそんな新しいポップパンクが全開になった1枚だ。前単独作『Fun Herbivorous!ep』で設計されたサウンドスタイルを突き詰め、磨きあげ、こじらせた決定盤である。
ポップパンクのメロディに英語以外の言語が乗った時の楽しさもきっちり日本語でアップデートしている。全編を一緒に歌えて、踊れて、酒が進む。ポップパンクの機能性もしっかりキープしながらネクストレベルを作り上げた。
それは泥沼ポップパンカーからブルーハーツへの回答でもあるし、StikkyとQueersとroyal headacheとGoing steadyが様々な垣根を余裕で超えパーティを始めたようであるし、3人の青年の内緒の日記のようでもある。
私は名古屋という場所に行った事はないが、Killerpassのようなバンドが沢山の仲間に囲まれて活動ができる事実というだけで、素晴らしい場所である事を確信している。きっと彼らは近い将来、華麗なロングシュートを決めまくってライブハウスにいるあの娘の顔を笑顔にするに違いない。それがオウンゴールではないことを祈りながら。

THE SATISFACTION松澤くんインタビュー

9/2、I HATE SMOKE TAPESから単独カセットテープをリリースしたTHE SATISFACTION。今回はソングライターの1人であり、歌とギターを担う松澤くんのインタビューをお送りします。
インタビューは2部構成になっており、THE SATISFACTIONの結成から今までを振り返るバンドヒストリー的1部、松澤くんの人生を変えた5枚+1枚のレコード及び「はすep」に影響を与えた5枚のレコードに迫る2部。そんな形式であります。
THE SATISFACTIONの過去と現在、そしてこれからを繋ぐ本インタビュー、筆圧マックスでお送り致します。

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先ずはお馴染み私の駄文レビューを御覧ください。スルーOKです
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THE SATISFACTION「はすep」
くだらねえ と呟いてみたはいいが、あんまり好きな言葉じゃなかった。髪の毛を伸ばしても似合わないし、部屋だって7畳くらいはある。タバコは無理して吸っているし、本当は政治にも興味ない。体は見栄と矛盾と脂肪で出来ている。
昨日の練習でのこと。隣のスタジオから壁づたいに聴こえてきたバンドの音があまりにカッコ良くって、リッケンバッカーにターゲットマークなんか貼って気取って立ってるだけの自分が心底イヤになった。スタジオを出る時、なるべく気配を消して外へ出た。
もうTシャツの襟をわざと伸ばすのも、部屋の壁中にLibertinesの切り抜きを貼るのも、リサイクルショップでホラービデオを探すのも、練習だけのバンドごっこも全部終わりにしたい。
昔は誉め言葉のように聞こえた幾多の「キミ変わってるよね」、全部丸めて破いてゴミ箱に投げつけた。結局俺は何者でもないし、あんなにカッコ良い音を出す人間にはなれない。滑稽ながらに決意する。もうマトモになろう。
お酒で全部台無しになった日の夕方、誰かが忘れていった1枚のCD-Rから聞こえてきた歌。思わず停止ボタンを押してバンド名を確認する。「ザ・サティスファクション」黒マジックで殴り書きの文字。これ、あの日隣のスタジオから聴こえてきた歌じゃないか。
外ではセミがミンミン鳴いてた。俺は何度も再生ボタン押してる。壁づたいに聞こえた歌の詞が今はハッキリ聞き取れる。
''マトモになんかならなくてもいいぜ''
うるせーバカって思った後、すぐに泣いた。
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Anorak citylightsのタクです。本日は宜しくお願いします。
松澤(以下 松):THE SATISFACTIONというバンドでギターとボーカルをやってます松澤です。doodlesというバンドでもギター弾いてます。本日は宜しくお願いします!
THE SATISFACTIONの結成はいつになるのでしょうか?
松:結成は2009年です。僕が大学1年生の時に結成しました。元々THE SATISFACTIONの3人は高校時代の同級生で、バンドをやっていたのは広内だけでした。元メンバーに原っていう奴がいたんですけど、彼が「バンドやろう」って誘ってくれて。広内と原、僕と星野。この順番で集まり、この4人で始まりました。
集まったメンバーの共通項はあったんですか?
松:銀杏BOYZが好きだったって事ですね。漠然と銀杏BOYZみたいな音がやりたいという思いがありました。当初はライブハウス毎のブッキングで呼ばれてライブをやらせてもらってました。毎回お金を払ってライブに出ていたんですが、仲良くなりたいバンドがあまり見つからなくて困ってましたね。当初は下北沢でライブする事が多くて、初ライブも下北沢屋根裏(現:下北沢ろくでもない夜)のオーディションライブでした。それから3年ぐらい活動を続けていたんですが、2013年の夏に1度解散するんです。
時期的に、就職活動が理由ですか。
松:そうなんですよ。当時、ドラムの星野はほぼ脱退状態で。ずるずるドラムは叩いてくれているんですけど、就職活動があったから心ここにあらず状態でしたね。そんな状態だったので、なんだか僕もバンドやるのがつまらなくなってきてしまいまして。曲も全くできなくなっていたし。そんな折りに、ベースの広内がTHE NOWHERES'に加入したんですね。
UNDERGROUND GOVERMENT所属のパンクバンドですね。僕もファンです。
松:そうですそうです!広内は広内でTHE NOWHERES'で楽しくやりはじめた事でしたし、星野は就活だしで、THE SATISFACTIONは解けて散りました。
なるほど。銀杏BOYZに影響を受け活動を始めたわけですが、解散以前はプレイする楽曲も銀杏BOYZ直系だったのでしょうか?
松:自分達なりに銀杏BOYZをただ真似するのではなくて、彼らの綺麗な部分に影響を受けていましたね。というのも、銀杏BOYZ直系のバンドで滅茶苦茶な事をやるじゃないですか。そういうのは嫌だったんですよね。結局は同じなのかもしれませんが笑
コピー等はされなかったんですね。
松:演奏が下手過ぎてコピーできなかったんです笑 当初は元々広内が弾き語りで歌っていた曲をバンドでアレンジしてプレイしていたんです。今は僕もTHE SATISFACTIONの曲を書いてますけど、活動初期はソングライターは広内だけでした。
やはり明確にパンクがやりたかった?
松:はい、パンクがやりたいという思いがありました。少し話がずれるんですけど、僕の体には吉田拓郎の音楽が染み付いてるんですよ。
とても意外です。
松:ですよね笑 親父が吉田拓郎のファンなんです。幼少の頃から車の中でずっと吉田拓郎が流れてまして、逆に嫌いになってしまうぐらいだったんですね笑 反発しながらも、高校の時に親父のギターを借りて練習し始めた時に、どうしても吉田拓郎の曲が弾き心地が良い事に気付いて。歌謡曲というか、ポップスですよね。自分の根底にはパンクよりもポップスがあると思います。
お父さんの影響もあった吉田拓郎から、どのようにパンクに没入したんでしょうか?
松:きっかけはELLEGARDENです。本当はメロコアがやりたかったんですけど、技術的にできませんでした笑 そこから直ぐに銀杏BOYZに出会ったんですね。
エレファントカシマシやtheピーズはいかがでしょう?
松:ああ、もう大好きです。ダメな自分の背中を押してくれてます。
松澤くんの歌詞って割りとネガティブですよね笑
松:タクさん、ヤブさんと同じこと仰ってますね笑 自分では自分をポジティブ野郎だと思ってるんですが笑 なんだろう、パンクってやっぱりどうしようもない感じを歌ってると思うんですよ。良くも悪くもはみだし者というか、ダメ人間の気持ちに寄り添うというか。
吉田拓郎も凄く暗い歌を歌ってたりしますよね。
松:僕の歌いたい事、内側から出てくる事はそこなんですよ。コンプレックスだったり日々のイライラだったり。情けないかもしれませんが、仕方ないんです。
話を本筋に戻します。2013年の夏に解散し、再開はいつ頃に?
松:2014年の1月です。僅か半年での復活ですね笑 脱退状態だった星野が「またバンドやりたい」と言い出しまして笑 THE SATISFACTIONを解散以前と以後で一期と二期に分けるならば、一期は完全に広内のバンドだったと思うんです。10曲あれば8曲は広内が書いてましたし。でも、二期はもうちょっと民主的になったんです。 僕も曲をガンガン書くようになりました。活動再開後に録音した京都epも、僕と広内で半分ずつ曲を書いてます。
京都epは限られた流通であるにも関わらず、THE SATISFACTIONの名前を全国的に広める事になった名作だと思います。
松:ありがとうございます。僕達も何だかんだ長いこと一緒にバンドやってるんで、お互いに影響を受け合ってる節もあると思うんです。歌詞もそれぞれ2人で書いてるんですけど、世界観は共有できてると思います。名前が挙がった京都epなんですが、これは自分達で録音からミックス、ジャケットの制作まで行った完全にハンドメイドの作品になってます。手にとってもらえれば分かるんですが、インナー等意外と凝った作りなんですよ。これは星野が1枚1枚コツコツ作ってるみたいです。
星野くんお疲れさまです!笑 京都epなんですが、海外の超マニアックなパンクバンド等を知らなくても手放しで良いと思える感じが凄く良いと思っていまして。マニアックな聴き方をする必要がなく、ストレートに良い。
松:嬉しいです。恐らくはメンバーの引き出しが少ないだけだったりもするんですが笑 カッコつけるのがヘタクソなんですよ。京都epは活動を再開してから直ぐに作ったんです。と、いうのも活動再開後は今まで4人だったメンバーが3人になってしまったので、昔の曲が演奏できなくなってしまった。3人でやれる新しい曲を作るしかなかったんですね。そうして曲が溜まっていったタイミングで、THE FULL TEENZの伊藤くんが京都で打っている企画に僕達を呼んでくれたんです。僕達も彼らの気持ちに応えたかったところもありましたので、新曲を詰め込んだ京都epを作ったんです。結果的に僕達の名刺代わりとなるような音源になりました。
THE SATISFACTIONとしては初の京都でのライブ?
松:初めてでした。伊藤くんが誘ってくれた経緯なんですが、僕達の4人時代の音源をSHORT STORYの超さんがディストロしてくれたんです。その音源を大阪のコータさんって方が聞いてくれて、僕達を大阪での企画に呼んでくれたんです。その企画で対バンで出てたのがTHE FULL TEENZで。当時は今の彼らとメンバーが違うし、曲も違うし、伊藤くん、長髪でチャラ男風でした笑 そんな縁があって、THE FULL TEENZと友達になれたんです。
京都epの反響はいかがでしたか?
松:自分達でも驚くぐらい誉められました笑 SEVENTEEN AGAiNのヤブさんやA PAGE OF PUNKのツトムさんやTHE NOWHERES'のハギオさんも誉めてくれて、完全にミラクルだと思ってます。本当に妙な下心抜きで作ったんですよ。録音やミックスもグチャグチャでしたし、製作にも1ヶ月くらいしかかかってないんです。それで初期衝動感が出たのかもしれませんね。
松澤くんはTHE SATISFACTIONの他にdoodlesでもギターを弾いています。両者の住み分けや及ぼす影響はありますか?
松:住み分けはありますね。THE SATISFACTIONは僕が昔から聴いてきた音楽をアウトプットするバンド。僕、70's PUNKとかPOWER POPも大好きなんですけど、doodlesはそこをアウトプットするバンドですね。70's PUNK等は大学に入ってレコードを熱心に掘るようになってから好きになりました。doodlesはTHE SATISFACTIONが解散する2013年の夏に始めました。最初は4人いたのが今は3人になっていますが、僕らなりに一生懸命活動をしています。もしかしたら「ヒマニー」みたいな速い曲はdoodlesでの活動からの影響かもしれませんね。以前は絶対作らないタイプの曲ですから。
根本的に松澤くんの作る曲は歌ものなんですね。
松:そうなんです。速い曲を作るのは苦手かもしれません。
話は変わるのですが、今回リリースされる「はす ep」はI HATE SMOKE TAPESからのリリースになります。これはどのような経緯で決まったのでしょうか?
松:先ほどお話しました、THE FULL TEENZに呼ばれた京都でのライブにSEVENTEEN AGAiNが出てたんですね。京都epは当日発売したので、音源も何もないまっさらな状態でヤブさんにライブを観ていただいた直後、ヤブさんが「カセットテープ作ろうよ」と笑
実に1年以上前からのお話だったんですね。
松:そうなんですよ。何せ僕たちは当時のストックを全て京都epに収めた直後だったので、カセットリリースのために1から作曲しないといけなかった。京都epをカセット化する案もあったんですが、光栄ながらいただいたお話でしたし、全て新曲でカセットを作ることに決めました。そこからなんだかんだで曲が出揃ったのが今年の7月で。I HATE SMOKE TAPESのラインナップはめちゃめちゃ凄いですし、そこに自分達が加われるのは本当に嬉しいです。単純にSEVENTEEN AGAiNのファンでもありましたし。
I HATE SMOKE TAPESのラインナップは松澤くんと近い年代のバンドが多く集められています。
松:この前も代々木でsleeping aides and razorbladesとも対バンさせていただきましたけど、僕は単純に今の日本の若いパンクバンドが大好きで。KiliKiliVillaも生き埋めレコーズも大好きですし、自分達がその中に入っていけるのは本当に嬉しいです。解散前の僕たちはどこにも入れなかったんです。僕達、青春パンクってよく呼ばれるんですけど、青春パンクそのものでは無いと思うんです。事実、それ系のイベントに出ても馴染めなかった。ポップスにもなれないし、青春パンクにもなれない。だから今の状況は本当に嬉しいです。
今の日本の若いパンクバンドは、共通する空気を含んでいても音楽性は様々ですからね。
松:そうなんですよ。だから僕達もその端っこにいれるんです!笑
今の日本のパンクのある側面を象徴するレーベルのひとつとしてKiliKiliVillaがあると思うんですが、4月に新代田FEVERで開催されたKiliKiliVillaのコンピレーションアルバムのレコ発イベントにも出演されてましたね。
松:僕達コンピには入っていないのに、安孫子さんからオファーがきて驚きました笑 僕も未だによく理解できていないかもしれません笑 安孫子さんとは面識があったんです。Anorak citylightsでのインタビューやコンピのファンジンにも書かれている、安孫子さんがレーベルを起こすきっかけになったSEVENTEEN AGAiNのツアー。あのツアーの1箇所に先ほど述べた京都のライブが含まれていたんです。僕も安孫子さんに京都epを渡して、少しだけライブも観てていただけました。
なるほど。今思えば、あのFEVERでのライブも新作カセットへの伏線となるような内容だったかとも感じています。「はすep」の製作はどのように進められたのでしょうか?
松:はい。今まで僕達の音源は自分達で録音してミックスまでやってたんです。今回もそうしようと思っていたんです。演奏技術とレコーディング技術は比例して高めていきたいという思いがありまして。ところが、レコーディング当日にMTRが壊れている事に気付いたんです。急いでMTRを用意しなくてはならない状況だったので、THE NOWHERES'のハギオさんにMTRを借りたら、なんと録音まで手掛けてくれたんですよ。しかもレコーディングの全日程に来てくれて、ミックスまでやってくれたんです!
ハギオさんプロデュースになったと笑
松:そうなんですよ笑 他人に録音やミックスをお任せしてみたら、自分達は演奏に集中できる事に気付きまして笑 非常に納得いくものが録れました。THE NOWHERES'は大好きでしたしハギオさんも信頼できる先輩なので大満足ですね。収録曲については最初からカセットテープを作るために書きためたものばかりです。「アゲイン」を作品の頭に持っていったり、「優男」を中盤のおいしい位置に挟んだりと、曲を書きながら曲順も並行して考えていきました。
ところで「はすep」ってどんな意味なんですか?
松:そこを聞いていただいて嬉しいです笑 僕の友達に面来(オモライ)っていう奴がいるんですよ。THE SATISFACTIONの過去の音源は彼の名前が由来のオモライズムというレーベルから出ております。その面来がコーラスの録音に来てくれたんですが、実際録音する時に全然指示と違う、「はす」という単語を発したんです笑
「はす」ですね。
松:はい。特に意味は無かったみたいなんですけど、一応辞書で調べてみたんです。そうしたら、「はす」には斜という読み方があって。パンクって斜めから物事を見る側面もあるじゃないですか?そんな意味もあるし、「はす」は「破す」、強引に解釈すれば破壊するともとれる。妙に「はす」という言葉が気に入ってしまいまして、「はすep」と名付けたんです。
思わぬ言葉が自分達のキーワードになってしまった。
松:そうなんですよ笑 あとは、英語のタイトルがあまり自分達に馴染まない気もしていたので。
今回、I HATE SMOKE TAPESからリリースされるに当たって、新たにTHE SATISFACTIONを知るリスナーも現れることは間違いないと思います。
松:そうですね。僕達みたいなバンドがいるって事をもっと知ってもらいたいと素直に思います。僕達が今まで好きで聴いてきたような、例えば銀杏BOYZやエレファントカシマシ、theピーズを好んでいるような方々にも届いたら最高ですね。反響が楽しみです。宜しくお願いします!


続いては松澤くんのルーツ探訪編、2部です。
「THE SATISFACTION松澤くんの人生を変えた5枚(+1枚)のレコード」
①BUMP OF CHICKEN「ユグドラシル」
いきなり意外なセレクトです。BUMP OF CHICKENの代表作ですね。
松:これは僕が音楽を聴き始めるきっかけになったレコードです。それまでは音楽を聴く習慣が無かったんですが、友達に本作を借りて聴いてみて衝撃を受けました。「歌詞がストーリーになってるし凄い!」と笑 メロディも良いし速い曲もあるしで、バンプを出発点に色んなバンドを掘るようになりました。
②ELLEGARDEN「ELEVEN FIRE CRACKERS」
松:これは高校1年生の時にリアルタイムで聴いてハマりました。ELLEGARDENをパンクで括るかはさておき、初めてそれらしいライブを観れたのもELLEGARDENが最初でした。幕張の3万人くらい入るホールで、初めてダイブとかモッシュというものを体験して。この時、バンドをやる事を決意しました。バンプは難しかったけど、エルレならできた。そんな感じです。
③吉田拓郎「今はまだ人生を語らず」
吉田拓郎の作品でもコアなとこ突きましたね~笑 普通は「元気です」ですよ。
松:これはCDが廃盤になってて買うと凄く高いんです。「ペニーレインでバーボン」という曲に放送禁止用語が含まれていて再発できないんですね。吉田拓郎は僕がフォークや昔の音楽を新鮮に聴けるようになったきっかけになったんです。シンプルに吉田拓郎かっこいいと思えて。初めて自分で吉田拓郎のレコードを買ったのも本作でした。親父がファンだから家にレコードは全部揃ってるんですけど、どうしても自分で欲しくて。ちなみに本作に入ってる「シンシア」は銀杏BOYZの峯田さんが敏感少年隊でもカバーしていて、凄く自分の中で繋がった感があります。
④銀杏BOYZ「DOOR」
松:本作をTSUTAYAで借りて初めて聴いて衝撃を受けました。もうイントロからすごいじゃないですか。
ジャーン!あいつらが簡単にやっちまう30回のセックスより~!
松:ジャーン!グミチョコレートパインを1回読むって事の方が!って笑 しばらくDOORばかり聴いてました。僕は銀杏BOYZの曲でもロマンチックなやつが好きなんですけど、本作は特にその要素が強いように思ったんです。今はアルバムとして好きなのは「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」かもしれませんが、自分の人生に強く影響を与えたのは間違いなく「DOOR」です。日本語で歌いたいと思ったのも銀杏BOYZがきっかけです。あとは当時高校生で僕も童貞だったので、淋しい男の心を優しく受け止めてもらっていました笑
松澤くん的に2014年に出た「光のなかに立っていてね」「BEACH」はいかがでした?
松:とにかく聴いた事がない音を投げ込まれた気持ちでしたね。本作をライブで聴きたかったと強く思います。
⑤ffeeco woman「CLASSIC DESTROYER EP」
⑥SEVENTEEN AGAiN「NEVER WANNA BE SEVENTEEN AGAiN」
松:ある日広内がffeeco womanとSEVENTEEN AGAiNの音源を買ってきたんですよ。もう聴いた瞬間ヤバい!って思いました。ライブハウスに通うキッカケになりました。週末ライブハウスに行って出演者に話しかけたりして、そこから色々繋がることができましたね。ffeeco womanもSEVENTEEN AGAiNもメンバーに音源を渡してお近づきになれたり。あ、ffeeco womanとは10月に吉田将之さんの企画で、SEVENTEEN AGAiNとは彼らのレコ発ツアー名古屋編で対バンさせていただきますので是非!
僕が最後に観たffeeco womanは、まだメンバーに女性がいました。
松:今は男性のみになっちゃいましたね。ffeeco manですよ笑

「はすep製作に影響を与えた5枚のレコード」
①エレファントカシマシ「明日に向かって走れ-月夜の歌-」
ちょうど今日大宮に来るまで聴いてました!
松:エレファントカシマシ自体リリースしてるアルバムが多すぎて、全部を聴いてるわけじゃないんです。でも、このアルバムは大好きです。ストレートに自分に入ってくるんですよ。だってアルバムが始まっていきなり「突っ走るぜ明日も~!」ですよ笑 「そうだよな、走るしかないよな!」って気持ちになりますね。あとは、「昔の侍」という曲。これは名曲ですよ。むちゃくちゃメロディが良い。「風に吹かれて」も入ってますし、マスターピースですね。エレファントカシマシは特にメロウな曲が好きです。そんな感じで、「はすep」のメロディ作りにおいてエレファントカシマシからの影響を意識しました。「マッチ」という曲は特にそれが顕著だと思います。
②SPARTA LOCALS「セコンドファンファーレ」
松:ふと昔聴いてた音源を聞き直す時ってあるじゃないですか。SPARTA LOCALS、凄く引っ掛かったんですよ。ギターもドラムもとにかく狂気的で、キてる。THE SATISFACTIONに何か新しい要素を注入するとしたら、初期のSPARTA LOCALSですね。このヒリヒリした感じは凄く欲しい。僕達、ヘラヘラしがちなので、、笑
③DERANGEMENTS×FOUR TOMORROW「SPLIT」
これ、聴き倒したな~笑
松:FOUR TOMORROWは勿論めちゃめちゃカッコ良いんですけど、特に僕はDERANGEMENTSの日本語の使い方に影響を受けました。メロディックでドタバタしたパンクサウンドに日本語を乗せるバンドってあんまり見付からなくて。本作を見付けた時、「ひとつの正解出ちゃってる、やりたい事やられてる」感ありました。音も凄く大きいし、加速度が凄い。自転車ぶっ飛ばしたくなります。
本作以前のアルバムでは英語でしたね。
松:そうなんですよ、それはそれでカッコ良いんですよね。DERANGEMENTSはあんまりYouTubeにもライブ動画とか上がってないし、謎の立ち位置感もあります。
④THE NOWHERES'「But The City Turnning」
松:メンバーのハギオさんが今回の音源製作を手伝ってくれてます。僕、このアルバム凄く好きなんですよ。とにかく音が凄い。
めちゃめちゃラウドですよね。
松:めちゃめちゃうるさいのに曲が美しいんです。彼らの曲は凄く生活感があって、世界平和ならぬ四畳半平和を歌ってる。もうカッコ良いです。
THE NOWHERES'しかり、吉田拓郎しかり、THE SATISFACTIONは四畳半サウンドの正統な後継者であります。
松:色々な狭さが音に出てます笑
⑤theピーズ「とどめをハデにくれ」
松:僕は曲を作ってますけど、「日が暮れても彼女と歩いてた」を越える曲を作れたら死んでもいいです。とにかく曲を作るときにこのアルバムを意識していますね。そしてこのアルバム、9曲入りなのに53分もあるんです。
theピーズの作品の中でも異様なオーラを放ってるというか。とにかく重いし暗いし遅い。ズブズブ落ちる感じがある。
松:凄い9曲ですよね。こんなアルバム作ってみたい。とにかく憧れてやまないアルバムです。
ありがとうございます。以上でインタビューは終了です。お疲れさまでした。じゃ、ユニオン行きますか。
松:ありがとうございました。楽しかったです!ユニオン行きましょー!

Miles Apart Recordsインタビュー

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今やカセットテープというフォーマットは完全に息を吹き替えし、インディー界隈のみならずトップアイドルグループまでもが新譜をカセットテープでリリースする、そんな状況にまで至っている。
AWAやLINE MUSIC等、もはや消費している事実さえ忘れかねない程の利便性を持つフォーマットの登場等何処吹く風、スマートフォンやタブレット端末では聴くことすら叶わない、究極のアナログフォーマットと言えるカセットテープが我々音楽リスナーに与える豊かさは、音楽を消費し続てしまうことへの反発を思い出させてくれる。
近年のアナログフォーマット復権については大いに支持するところであるし、これからも続いてもらいたい。しかしながら、インディーやパンクの文化におけるアナログフォーマットはブーム以前から、翻って文化が誕生した瞬間からずっと絶えることなくリリースフォーマットの主流であり続けたわけなので、近年のアナログフォーマット復権とはまた一味違った文脈を持っていることが言えるだろう。
さて、話は逸れたが、ここ日本にもカセットテープをメインに扱うレーベルやディストロが控えめに現れ続けている。今回紹介するMiles Apart Recordsは2013年に活動を開始した新進気鋭のインディーレーベルだ。そして、カセットテープによるリリースを中心に行っている。
しかしながら前述の通り、Miles Apart Recordsも近年のアナログブームとは関係なく、純粋なるアナログフォーマットへの愛情のみでリリースを行っている。それはこれから公開するインタビューにおいても明らかだ。
JIVやKUNG-FU GIRL、Pictured Resort等素晴らしいタイトルばかりを矢継ぎ早に連発するスタイルは好事家達から絶大な支持を得ており、リリースタイトルは発売直後に即完という状況が続けている。今最もエキサイティングなレーベルのひとつと見て間違いはない。

BURGERにもGNARにも無いけれど、Miles Apartだけが持っているファンタスティック・サムシング。
今回はMiles Apart Recordsを主宰する村上さんのインタビューをお送りします。

Anorak citylightsの宅と申します。インタビューよろしくお願いします。
Miles Apart Recordsの村上と申します。よろしくお願いします。
まずは村上さんがレーベルを設立された経緯を教えてください。
結構長くなってしまうので簡単に言うと、友人のバンドのファンジンを作るために設立をしました。その時点では音源の媒体を出すとは思ってもいなかったので、レーベル名もMiles Apart Booksとなっています笑
従来から音楽に携わる活動をされていたのでしょうか?
20代前半は赤と黄が印象的な某小売店で働いておりました笑 ジャンルは洋楽全般を担当しておりました。現在は音楽とは離れた仕事をしております。
なるほど。レーベル設立に伴う青写真や理念はあったのでしょうか?
"90年代に2,3作品リリースして消えてしまったオブスキュアインディーポップレーベル"をコンセプトにしております。カタログナンバーがまさか20番までいくとは思っていなかったので、そのコンセプトも今では曖昧なラインになってしまいましたが..笑
Miles Apart Recordsというレーベル名の由来についても教えてください。
とにかく距離を感じさせる名前にしたかったという理由で、好きなバンドの楽曲から選びました。バンド名は言わなくとも、Anorak citylightsを読んでいる皆さまならきっと分かってくれるかと!
当初は長期的なスキームで活動を行う予定が無かったという事ですが、何故ここまでハイペースなリリースを行うレーベルになったのでしょうか?
昨年Cassette Tapes Clubシリーズを始めた時期からリリースのペースが早くなりました。恐らく、リリース作業に慣れてこなせる仕事量が増えたことによるためだと思います。あとはリリースしたい作品が多かったというタイミング的なこともあります。
リリースするバンドについて、明確な審美眼のもとに選ばれている気がします。バンドはどのように見付け、選んでいるのでしょうか?
Miles Apartリリースに関しては、自分が気に入ったバンドのみをリリースしております。基本的にはライブで観たりBandcampやSoundcloud等を聴いてバンドを探します。
先ほど名前が挙がりましたCasette tape clubシリーズについて聞いていきます。やはりカセットテープというフォーマットに拘りがあるのでしょうか?
Casette tape clubを始める以前から海外のバンドやレーベルから買っていたり、割と身近にあったフォーマットということでカセットテープを選びました。海外のカーステレオ事情が~諸々というよりも、単純にカセットが好きだからという理由が強いです。チェックしていたら知らないバンドにも出会える楽しさを知ってもらいたい、というのもシリーズ化した理由です。さらに集める楽しさを見出してくれたら最高です。
統一感のあるアートワーク、ナンバリング等非常に集めたくなるフォーマットでありますが、何か参考にされたシリーズだったりレーベルだったりはありますか?
Casette tape clubのジャケットを作る際に参考にしたものは特にないです。ただ海外のレーベルではシングルシリーズのようなものは当たり前のようにリリースされていて、そういうものを目にしたり購入したりして少なからず影響を受けていると思います。その中でも学生の時に出会ったArt of the undergroundのシリーズはとても印象的でした。余談ですが、Casette tape clubのジャケットが"りぼん"や"花とゆめ"等の少女マンガのコミックスの装丁の雰囲気があると言われたことがあり、”少女漫画 単行本 表紙"で検索してなるほどと思いました笑
確かに言われてみれば..笑 思わぬところとシンクロしています!ちなみに何故限定生産にこだわるのでしょうか?(KUNG-FU GIRLのテープの確保には苦労しました、、笑)
その節はすみません!笑 言ってしまえば、当初のレーベル・コンセプトの名残みたいなものです。非常に申し訳ないと思いつつも、限定生産で今後もいきます!笑
海外のレーベル等意識はされていないという事ですが、特にシンパシーを感じていたり、動向をチェックしている国内のレーベルはありますか?
なかなか同じようなシンパシーを感じるところは今のところありません。リスナーとしてはSecond Royal, Rallye, Fastcut, KiliKiliVilla, I Hate Smoke Records, 生き埋めレコーズ等をチェックしています。好きなレーベルやバンドはとても多いです。あと、東京だとsanm繋がりで知ったCONDOMINIMUMの活動はとても素晴らしくてカッコイイです。彼らの動向はチェックするべきです。
カセットテープというフォーマットの魅力や利点にはどんな物があると感じますか?
デザインやカセットテープの独特な音質も魅力かと思います。聴くのに手間がかかるしかさばるし..と感じる方も多いと思いますが、個人的にはそれすらも愛おしく感じます笑
凄く共感できます笑 村上さんが気に入ったバンドをセレクトしてリリースしているという事ですが、リリースバンドの多くはまだ活動経歴が浅かったり、リリース経験が無かったりとフレッシュなニュアンスを持っているように感じますが、意図されているところなのでしょうか?
Casette tape clubシリーズについてはそのことを意図してやっております。バンドを発掘し紹介するというのもテーマの一つです。リリースしたバンドが少しでも話題になって次に繋がっていったり、きっかけになって活動を続ける力になればそれだけで嬉しいです。
幾多のリリースをされた中で特に印象深いリリースやエピソードはありますか?
WallflowerのNYC Popfest用に作ったカセットは、好きなバンドと好きな漫画家コマツシンヤさんのコラボということもあってリリースの中では特に気に入っています。リーダーの土屋くんもコマツさんの作品が大好きなので、ジャケットを描いていただけるとなった時は2人で大興奮でした笑Pictued ResortのVo/Gtのコージさんとも2作目からの繋がりでレーベルでの付き合いが長いのですが、彼のバンドがリリースして話題になっていく様は見ていてとても感慨深いものがありました。9月にリリースするデビューEPも楽しみにしています。
少し意地悪な質問です。日本のインディーポップやパンクに対して、Miles Apart Recordsさんが思うことはどんなものでしょう?また、シーンに対して提示したいものや価値観はありますか?
押しつけがましいのは嫌なので、何か感じ取ってもらえることがあればそれはそれでOKです。あとは純粋にレコードやカセットテープの作品が好きなので、バンドやレーベルの皆さまに是非ともこれからたくさんリリースして欲しいという願望は常にあります。
今回、Miles Apart Recordsさんの主宰としては初となるツアーが開催されます。これはショーケース的な意味をもつツアーなのでしょうか?

出演する全バンドは何かしらの形で今までのリリースに関わっていますので、ショーケースというよりもレコ発的な感覚の方が強いです。
ありがとうございます!村上さんの思う、インディーレーベルを運営する醍醐味とは何でしょう?
やりたいことを自分の考えている形に出来るので、やりがいや達成感がとてもあります。ただ全て1人で運営しているので、嬉しいときや辛いときに誰かとすぐに共有できないという点もあるのでたまにチームやグループを羨ましくも思います笑
今後、単発のカセットリリースだけでなく、例えばレーベルとしてオリジナルアルバムのリリースを考えていたりしますか?
8月以降も2本カセットのリリースがあるのですが、全てEPですね。オリジナルアルバムはいつか作りたいと考えております!まずはアルバムを出したいと思えるバンドと出会うところからですね..笑
近年のアナログブーム、ひいてはカセットブームについてどう感じていますか?
新譜だけではなく、再発、初アナログ化などのリリースが多くとても嬉しい状況ですが、プレスや価格の問題はもう少しなんとかならないのかなとは思います。一過性のものとは言わずに、このアナログ/カセットブームが永く続いていって欲しいです。
僕も同感です。最後に、Miles Apart Recordsの今後の動きについて教えてください。また、読者へのメッセージをお願いいたします!
今後の予定としては、TOURSというイベントを8/9(大阪)、22と23(東京)で開催します!詳しくはこちらをご覧ください。(http://www.milesapartrec.tumblr.com/tours)
直近のリリースは、上記のイベントで販売するカバーコンピCDとPictured Resortの7インチです。8/25にはUSのFuneral Advantageのアルバムの日本盤カセットテープ。9月にはオランダの18歳の青年のソロプロジェクト"Goodnight Moonlight"のEP、大阪のバンドのEPの2タイトルをカセットテープで発売予定です。これからも、ほんの少し気にかけていただけたら嬉しいです!ありがとうございました!

ありがとうございました!最後に、Miles Apart Records村上さんのオールタイム・ベストレコードを選んでいただきました!!コメント付きです。村上さん、ありがとうございました!

(アルファベット順)
Beach Fossils - Clash The Truth
2010年代のリリースの中で一番聴いているアルバム。"ぼくの/わたしの clash the truth。"(※最高な一文を某レコード店の店主からお借りしました。)全てが好み過ぎて、リリース以降こういう音しか聴けない時期があり今でも再発し悩まされています。

The Durutti Column - The Return Of Durutti Column
アルバムの内容は言うまでもなく、もちろん最高なのですが..。眠る前によく聴くので、今では快眠へのスイッチとして機能しています。

Mega City Four - Who Cares Wins
始めて聴いた2ndに一番愛着があります。中古盤でも値が張るMC4ですが、聴く価値はとてもあるので見つけ次第確保して欲しいです。メロディックパンクにカテゴライズされていますが、インディー好きにもオススメです。

Modest Mouse - The Lonesome Crowded West
なんとなく高校生の時に買って聴いたら、USインディーとかいう曖昧な定義のジャンルにハマるきっかけになってしまった1枚。いつ聴いても1曲目からテンションが上がります。

Supercar - Futurama
青春的な1枚なので、スーパーカーは聴くだけでエモい気持ちになります。
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over head kick girlをキミは知っているか

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インターネットは音楽とローカリズムの密接な関係を変質させてしまった。
それは地方の片田舎にいながら、画面を通し一瞬で東京や世界とコネクトする事を可能にした。YouTubeやUSTREAMを通し、遠く離れた場所で起きている現象を直ぐに追体験する事ができる。僅か100枚も作られていない音源を翌日手にする事ができる。最早日本のポップシーンにおいて、産地に問わず作品のクオリティはある程度平準化されているのかもしれない。しかしながら、作者の生まれ育った地域環境がそのパーソナリティに与える影響は当然ながら不変であり、そういった意味でのローカリズムは薄まることなく残っているだろう。
ことパンクカルチャーにおいては、その傾向は強い。
元々、80年代に発生したハードコアパンクシーンにおいては、国や地域により明確なサウンドやスタンスの差違が存在した。それはパンクというマイノリティなカルチャー故の情報網の脆弱さに起因するものであったのだが(そして、その事実こそがパンクにおけるジンやDistroの存在に直結する気がしてならない)、ある程度流通が整備されたそれ以降の時代においてもパンクとローカリズムは切っても切り離す事ができなかったのだ。それはパンクカルチャーの鍵となる''レーベル''という存在が大きいように思う。良いレーベルというものは拠点となる地に根を張り、独自の価値観に基づいた活動を続けていくものだ。そして、パンクにおいて最も重要なのは人間同士の繋がりであり、ネットワークだ。特定の地域で特定の価値観を共有する者達が独自のシーンを自分達の住む街で作り上げる事は必然であった。
すなわち、インターネットの普及により少し薄まった印象もあるローカリズムだが、パンクカルチャーにおいてはローカリズムが存在する合理的な理由があり、その強さこそ魅力のひとつでもあるだろう。この仮説を念頭に話を進めていきたい。
北海道という地方がある。
そこから出現した幾つかのバンドには、彼らにしか持ち得ない音を鳴らすことに成功していた。eastern youthやbloodthirsty butchers、cowpersやkiwirollもそうであった。
各々がバラバラの音楽を鳴らしながら、どこか共通するものを音の奥に秘めていた。それはコードやルーツ、サウンドエフェクトというもので形容できるものではなく、演者の生まれ育った環境に起因するものとしか思えない圧倒的な叙情性と価値観、熱い魂を抑え込みながら音を鳴らすが否応なしに洩れてしまう熱気のようなものを無意識のうちに共有していたのである。その凄みはあまりに独自性が高く、他の地域から現れたバンドからは決して聴くことのできない類いのものであった。
近年の北海道パンクシーンにおいても新たなサウンド及び価値観の指針が生まれつつある。
over head kick girlというバンドがこの渦の中心だ。彼らは北海道にて現れた現役のパンクバンドである。2007年に結成し極めて局地的な支持を集めていたが、2010年に一時解散。その模様は後ほど紹介する目撃者たちの証言に詳しい。
彼らのパンクロックは時期により様々な色を見せるが、美しくも激しく歪んだメロディと目眩く展開力は共通しており、そのサウンドの裏側には激情と冷静の合間で苦悩する若者の気持ちが透けてみえる。それは演者の体から勝手に漏れだし、サウンドのニュアンスを支配するのだ。
奇しくも同じ北海道で出現し、彼らからの影響を公言するthe sleeping aides and razorbladesやNOT WONKにも同じニュアンスを感じ取ることができる。脈々と受け継がれている、非常に言語化し難いサウンドに宿る魂(それは色で表すならば、青だ)。愛憎入り雑じり美しくも繊細に歌われるメロディ、怠惰を叩いてうち鳴らす激しいバンドサウンド。北海道というローカルが生み出した新たなパンクサウンドの源流こそover head kick girlである気がしてならない。先人達の残り香を吸い込み振り払いながらも、彼らから始まった新たな時代があるのだ。
ここで、彼らの軌跡を振り返ってみよう。

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2007年、北海道釧路にてover head kick girl結成。2008年に初のデモCDを作成、発表する。初期のメンバーは以下だ。
ボーカル ギター/橋本
ベース                /宮崎
ドラム                /松館
2009年の春には、活動拠点を釧路から札幌に移す。合わせて橋本くん以外のメンバーチェンジを実施。
ボーカル ギター/橋本
ギター                /大塩
ベース                /栗山
ドラム                /紫竹
現ラインナップとなる。
ここから精力的な活動を実施。デモCDやスプリットを発表するも、2010年10月解散。最後の音源は I Hate Smoke Recordsのサンプラーであった。
しかしながら2012年10月、ライブイベント「MATSURI」にて突然の復活。以降、マイペースにライブ活動を続ける。

リリースしている音源は2枚のデモCD、1枚のスプリット、1枚のコンピレーションのみと非常に少ない。しかしながら、特にセカンドデモにおいては彼等のサウンドスタイルが一時の完成を迎え、強烈な完成度を誇る代表曲ばかりの名作となっている。ここに、その全貌を記しておく。

1st demo(2008)
1.intro
2.Groupie(Blender Cover)
3.Keep
4.love
5.made in night
6.everyday
7.RIDE
9.fcukin girl

demo 1.5(未発表)(2008)
1.STAY DOWN
2.Groupie(Blender cover)
3.love
4.made in night
5.under wear
6.dont believe me

ANGRY(Split w/BASE BALL KNUCKLE)(2010)
1.STAY DOWN
3.stalking boy

2nd demo(2010)
1.the sunrises for me
2.my word,your brain
3.MIND CONTROL
4.vertical fall
5.LUCKY

Make It Alright!(I HATE SMOKE RECORDS VA)(2010)
16.WANT

そして2015年6月、コンピレーションアルバム「While We're Dead.:The First Year」への参加を経て、新録を含めたディスコグラフィー「over head kick girl wants to kill you」をKiliKiliVillaよりリリース。

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over head kick girl wants to kill you

2015年6月10日発売
品番:KKV-016 1,800円(税抜)

1.NEW DAY RISING
2.DECEIVE ME
3.Bored
4.the sunrises for me
5.my word,your brain
6.MIND CONTROL
7.vertical fall
8.LUCKY
9.WANT
10.stalking boy
11.STAY DOWN
12.love
13.猿人類
14.under wear
15.made in night
16.everyday
17.RIDE
18.fuckin' girl
19.the sunrise for me
20.outro

如何にして彼らのサウンドは生まれたのか。

ここで、over head kick girlのメンバーであり、首謀者である橋本くんにその血肉となった10枚のレコードを選んでいただいた。ここにohkgサウンドのヒントがあることは明白だろう。

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The Bananas/Nautical Rock N Roll
橋本(以下 橋):2007年に今とは全く異なるメンバーでover head kick girlを結成したのですが、その当時影響を受けていたバンドの一つがbananasです。
ハートウォーミング、でもヘロヘロだしショボい。そういうバンドがやりたいなーと思っていました。The Bananasのアルバムはそれぞれ名曲と捨て曲がバランス良く入っているので、一番を選ぶのが難しいのですが、このアルバムに収録されている「Billy Rueben」はお葬式で流して欲しい曲です。

 THE GRUMPIES/WHO ATE  STINKY?
橋:こちらも、初期over head kick girlにおいてかなり影響を受けていたバンドです。常識というか、エチケットというか、倫理というか、僕が持っているそういう物のを全部無視した感じで、「あ、やっていいのね?こんな汚い音で」と、凄く衝撃を受けました。(もちろんメロディーや不協和音全開のギターにも)

このバンドの所為で、暫くは汚い音のバンド以外聴けませんでした。我々の1st demoも完全にこれに影響を受け、自分でMIXをしていたのですが(MTRで)ただひたすら音が汚くなる様に。とMIXしていたら、GRUMPIES以上に音が汚くなって「やったー!」と男泣きをしたのが思い出されます。
また、FYPとのスプリットに収録されているLita Fordの「Kiss Me Deadly」のカバーが最高すぎて泣けます。(Lita Fordの顔と動きは生理的に無理)

Smoking Popes/Destination Failure
橋:シカゴのSmoking Popesの3枚目のアルバム。
初めて聴いた時、サッド且つメロウなメロディーにやられてしまい、ベッドにうつ伏せになり腰をひたすら動かしていたかと思います。
当時は、ガチャガチャしているB級パンク的な事をやっていた訳ですが、Smoking Popesを聴いて、「フザケすぎたら周りの人に迷惑かけるし、もうちょっと真面目にバンドやろう」と思いました。
ちなみに、他のアルバムですが、我々の「STAY DOWN」という曲名はSmoking Popesからパクりました。
Weakerthans、GOOD LUCK、Radiator Hospitalやビリー睾丸もそうですが、日本人の僕にはこの類いのヘロヘロな歌い方が出来ないのが悲しいです。

Bent Outta Shape/Bent Outta Shape
橋:最初に聴いたのがRecessからリリースされている「Stray Dog Town」で、勿論そちらも凄く好きなのですが(1曲目から2曲目への流れが、死ぬほどカッコいい)
バンドに影響を与えているという点ではこっちになるかと思います。
叫んでいるけど輪郭のあるメロディや、興奮のあまり「ぎぃぇゃぉー!」と叫ばざるを得ないタイミングでやって来るシンガロングパート、何よりも「Starin` at the walls」を聴けば分かる通り、ギターリフの全てが最高で何度も鳥肌を立たせてしまってましたが、当時僕はKFCでバイトしていたので、鳥肌をそのまま揚げて客に出していました。
Recess経由でベントを知り(Recessの無料配布のサンプルに入ってた事から)、そこからRADONやBilly Reese Peters、Dan Padilla等のNO IDEA、ADD周辺のバンドを漁っていました。

Jesse/Jesse
橋:LEATHERFACEのフランキーがPOPE解散後にやっていたバンド。(多分)
こちらは、7インチの曲も収録している唯一のアルバムになると思います。(多分)
学生時分、LEATHERFACEには多大な影響を与えられていますし、バンドとしてはJesseよりLEATHERFACEの方が断然思い入れがある訳ですが、「フランキーの作品」という枠で考えると正直このアルバムが僕的には一番聴き安くて好きかもしれません。
「HANDFUL OF EARTH」を何度もパクってはボツになり、一度もちゃんとした曲になったことはありませんでした。

MEGA CITY FOUR/Shattered
橋:メロディックバンドの評価の中で、引き合いに出されやすいメガス。
多くの人が「神だ、天使だ」と崇めるメガス。
僕も愛して止まなく、停学覚悟で鼻にピアスを開ける一歩手前でした。
あと、wizが着ていた「Y」というダサいワッペンが胸に貼ってあるジャケットを古着屋で探していました。
我々の音楽の中にメガスの影響というのは正直あまり感じ取る事は出来ないかとは思いますが、僕がメロディックパンクを飛び火して色々聴く様になったきっかけでもあるバンドだし、僕自身も影響は凄く受けていて、僕も音楽を聴く時には、メガスを引き合いに出して考えてしまう事が多々あります。
アルバムとしては「SEBASTOPOL RD」が一番なのですが、(高校生の頃、修学旅行前日に近所のGEOでジャケ無しの物を280円で買い、修学旅行当日誰にも相手にされず、一人で聴き続けていた思い出もある)初めて聴いたのがこの曲で、当時my spaceにアルバム未収録曲がいくつか上がっていて、超名曲「Things Go Wrong」もその中の一つなのですが、「Shattered」を初めて聴いた時の衝撃が今でも忘れられないので、曲単位で上げさせて頂きました。

SPRAY PAINT/STILL EMPTY ME AND STILL MOVING CITY
橋:多分、メガスと同じレベルで、このバンドが存在していなければ今の様なバンドはやっていなかっただろうなと思います。
1年に一回ギターの耳コピに挑戦しては、出来なくて断念しています。

Doughboys/Home Again
橋:当時通っていた専門学校のすぐ近くに「ドリカム」という昭和歌謡やROCK/POPSみたいなレコードを取り扱っている普通のおじさんとおばさんがやってるレコード屋があって、その店に何故かこのアルバムとBlankの7インチやアルバム、Big Drill Car等の「絶対誰か身近な先輩が売ったやつだ」的な音源がいくつかあって、歓喜していました。全く整合性の取れてないレコード屋で買った、超整合性の取れているアルバム。
しばらくはこれしか聴いていなかったと思いますし、聴いてた時期が丁度2nd demoのレコーディングの時期でエンジニアの人に「Doughboysみたいにして下さい!」って言ったのを覚えています。
ちなみに、「Crush」に収録されている「Shine」と「Fix Me」はWizも作曲に関わってるらしいですね。当時は「めっちゃメガスじゃん!サイコー!」と思って聴いてたんですけど、何とも言えない気持ちになりました。

Challenger/Give The People What They Want In Lethal Doses
橋:Milemarkerのメンバーのサイドプロジェクトで、Milemarker休止時(多分)にJADE TREEからリリースされたアルバム。
正直僕、milemarkerは全く興味ないんですけど、このバンドに関しては耳につくウザいリフと天才的過ぎる展開に衝撃を受けました。専門卒の僕の頭脳じゃこんな曲作れる気がしません。
小さい時からもっと算数ドリルを沢山解いておけば良かった。

PLUG/RESOUND
橋:90年代に札幌で活動していたPLUG。
僕は平成生まれだし高校までは釧路に住んでいたから、このバンドが当時札幌でどういう扱われ方をしていたのかは全く知らないのですが、札幌にもI EXCUSEやINTERNATIONAL JET SETの様な素晴らしいメロディックパンクパンドがいたんだなぁ。と思いました。
勿論本人達はメロディックという意識でやっていた訳では無いと思いますが、
超展開から繰り出されるグッドメロディーや、同じ札幌という地でやっていた。という事もあり、一つの目標みたいな感じになっています。ちなみに、これに収録されている「Rain」という曲が超大名曲です。


以上が、over head kick girl橋本くんのルーツとなったレコード達である。勿論彼の音楽への興味は尽きる事がなく、このリストには膨大な続きがある。どうかライブハウスで、本人の口から聞いていただきたい。
最後に、over head kick girlを歴史の闇に埋めなかった勇敢なる好事家たちの証言をもって結びとしたい。僕の能書きだらけの駄文より、彼らの証言こそがover head kick girlの魅力を最大限に捉えている事だろう。一人目はover head kick girl最良の支持者、ハナマツトシヤくんだ。

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おはようございますこんにちはこんばんは。トシヤと申します。
お前誰だよ、って?札幌在住のお客さんです。たまーに企画もやります。
そんな野郎がでしゃばってこんなところでover head kick girlについて書かせていただけるということで、少しだけお付き合いください。
こういうの書くの初めてで、文才もないしつまんないでしょうけど。
仕事で函館から札幌へ出てきていた僕はパンクと出逢い、ライブハウスへ行くようになっていた。でも友達もいなくて、馴れ合いをしているお客さんに嫌悪感を抱いていた。要はひねくれ者だった。だからライブハウスに行っても常にボッチだった。誰とも目を合わさず、1人で酔って、1人でライブを楽しんで、1人で帰ってた。
ライブハウスに通いはじめて2年くらいだろうか、over head kick girlというバンドに出会った。初めて観たのはまだはっしーが高校生の時。ohkg釧路時代。
この時は正直まだあんまり彼らに興味を持ってなかった。というかちゃんとライブを観れてなかった。
その翌年、はっしーが札幌へ出てきた。するとohkgは四人になってた。
衝撃だった。あぁ、オレこういう音楽が好きなんだ、って思わされたのを覚えている。ほどなくして、はっしーが初めて声をかけてくれた。「よかったら聴いてください。」と、スタジオ一発録りのデモをくれた。まだほとんど知り合いもいなく、人見知りな僕は「ありがとうございます。」と言って貰った。粗い音のそのCD-Rを、僕は擦り切れるほど聴いた。
それからohkgがライブをやる、となったら出来る限り行った。仕事柄、毎度は行けなかったけど、出来る限り行った。はっしーは人見知りの僕にいつも声をかけてくれ、メンバーも紹介してくれた。当時、ドラムのケースケは既に挨拶は交わすほどの面識であったけど、カズキとしょうちゃんは全然。
おそらくこの時点で、メンバー全員と面識を持ったバンドはohkgだけでした。僕を舐めてもらっては困る。生粋の人見知りだから。
気付けば、はっしーとは個人的にも遊ぶようになった。本当に友達らしい友達をライブハウス周りで持ったのははっしーが初めてだ。
その後、僕は長期出張で半年ほど札幌を離れ、茨城へ。
その間にヤツラは解散した。突然。勝手に。
絶望した。なんで僕がいない間に勝手にやめてんだよ、と。翌年の話もしてたじゃねーかよ、と。
悔しかった。僕は一番のファンである自信があったから。でもまともに連絡も出来ず、そのままohkgは消えていった。翌年、はっしーは東京へ移住した。
2012年春。東京に遊びに行って、はっしーと会った。突然耳打ちしてきた。「秋にohkgやれそうっす。」
2012年秋。そして彼らは復活した。僕と同い年のJUNNくん企画。
当然札幌に戻っていた僕だったが、仕事でいけなかった。また悔しい思いをさせられた。
後日、映像で観たohkgのライブは凄かった。何度も観た。Pigstyがあんなになってるのは、僕は観たことがない。愛されているバンドだったのだ。僕だけじゃない、みんなが待っていたんだ。
でもそこに僕はいない。悔しい。
その翌月、待ちに待ったMATSURI。秋葉原で僕はohkgを観た。初めてライブというものを観て泣いた。ライブには数百回行ってるだろうけど、初めて。
そしてまたohkgは眠った。
その約1年後、僕は友人二人と共同で、初めての企画をやることになった。
僕は真っ先にohkgの名前を浮かべた。でも悩んだ。そもそもやる気はあるのか、1年前に復活してやって、またひょこっと復活して。いらんことばかり考えてしまっていたが結論は簡単だった。僕がohkgを観たいから出て貰いたい、だ。
正直に言うと、当日の彼らのライブはめちゃくちゃだった。けど、彼らの愛を感じた。そして周りの愛も感じた。
そして彼らはまた、ゆっくりと活動を再開した。
2014年の年末、レコーディングをすると聞いた。音源を出す、と。しかもKilikilivillaだ。
陰に埋もれていたohkgがついに陽の光を浴びることとなる。僕は単純に嬉しかった。やっと僕の大好きなバンドが世に認知される日がきたのだ、と。
そして先日、久々に彼らのライブを観に行った。KiliKiliVilla企画。楽しみ過ぎた僕は、記憶がほぼない。飲み過ぎて初めて記憶を飛ばしたのだ。
後日聞くと、ずっとダイブしてたと。よっぽど楽しみだったんだな、自分。その場にいたみなさん、ごめんなさい。僕は楽しんでいたみたいです。
でも悔しいよ。覚えてないんだもん。
現在5/31。まもなく彼らの音源が世に出る。
まだ僕は聴いていない。でも確信してる。最高の名盤だ。
次に観れるのは7/4札幌Pigstyレコ発。
あれ?僕の誕生日じゃないか。たまたまだけどブチアガったぜ。三十路突入アニバーサリーバースデイ、自分そっちのけでお祝いしてやるよ。でも記憶をなくさないことにだけは気をつけて、楽しもうと思います。

なーんて何書けばいいかわかんなくて、ただのオバヘと私、みたいな固い文章になっちゃいましたけどね。要はあんたら誰にも負けないくらいアイツらが好きで、誰よりも音源を楽しみに待ってる、ってことですよ。
普段からメンバー各々と遊ぶくらい仲良いのってたぶん未だにオバヘだけだし。でもそんなのはたまたまで関係ないんですよ。僕がover head kick girlの一番のファンですからね。
最後に、オバヘの四人へ。
また勝手に解散とかしたら許さないから!!!
ファン代表より。
ハナマツトシヤ


2011年2月、自分が初めてライブというものをした次の週だったと思うんですが、白浜君とELLCUBE近くにあった満龍(チャーシューめっちゃ冷たい)でラーメンを食べて、近くのミスドでハニーチュロ食べながらLatterman再発の話とかをしていたら、「もう解散しちゃったんだけどover head kick girlってバンドが札幌にいてさー加藤絶対好きだと思うよ!」ってタバコのカートンケースで作ったCDのケースなんて初めて見たので興味津々で話を聞いて、というのが僕とover head kick girlとの出会いです。その時はmyspaceでover head kick girlを再生し、パソコンのスピーカーにiPhoneのマイクを近づけ録音するという狂気じみた行動を自分が取るなんて思ってもいませんでした。
というようにover head kick girlはきっと誰かにとっての特別なバンドなんだなと思います。僕にとっても勿論特別なバンドなのですが、over head kick girlがブイブイ活動してた頃を知っていたり、リアルタイムでライブを観れて影響を受けた人にとっての特別さは計り知れないなと思います。そしてそんなバンドが時を超えて復活を果たし、音源がボイスメモからではなく、ラジカセで聴けて、ライブも観れるなんてマジたまんねーなーと思います。

P.S PIGSTYでオーバーヘッドが復活ライブをしてて、ハッシーさんと初めて二人で一緒にタバコ買いに行く途中急に、「加藤君、君は醜男だなあ。」って言われたのが未だにどういう意味だったのかわからず、端正な顔立ちをした先輩に普通に顔の作りを批判されたと思っているのですが、真意は神のみぞ知るというやつです。
加藤(NOT WONK)


小学一年生のころ、同じ地区のいばりん坊にポケモンカードと買ったばかりのゲームボーイのカセットを盗まれた。
学校休んだ子の家に、届け物を一緒に届けに行った時に盗られた。
今かんがえると、ほんとにひでーよなーって思いつつも、笑えるからまあ良いかなーって思う。
一緒に遊んでボケモンカードをやると、かつての自分の主力が相手の手札から出てくる度になんだかなーって子供ながらに思った。
そういうことばかりの人生って訳ではないけど、比率的にそういうことが多めに起きてる気はする。高校時代野球部に金玉殴られたのは今でも根に持っている。
多分こういう根に持ち、こんにゃろうめー!!って精神が自分やハッシーさんや白浜には人より強くある気がする。
順位的には1位白浜2位ハッシーさん3位自分だと思うけど。
この3人で飲んだ時はお互いにお互いの揚げ足の取り合いになるだけで、本当に開催するだけ無駄な時間を過ごしたなーって気分になることもある。無駄な時間を積み重ね過ぎて、ほとんど何も思い出せないくらいだ。
やっとハッシーさんの新しい音源を聴ける。バンドをやっていて大きく嫉妬することがあるのは、この二人に対してくらいだ。
だから二人のバンドの音源を聴くのは、ほんとうに楽しみ。全然知らない奴が彼らのことをすげー!!って絶賛するたびに、俺のがあいつらのこと知ってるから!!っていつまでも思っていたいなーって今は思う。
川田(CAR10)


私がover head kick girlに出会ったのは高校生の時でした。           
厳しかった部活を途中で辞めて、何をしたら好いかもよくわからずにフラフラしていた時期でした。 
衝撃的でした。
音楽について無知だった自分にとって、あの音はあまりにも新しくて、刺激的で、あの時私はover head kick girlに心を全て持っていかれてしまったかのように思います。
2010年秋、カウンターアクション横のサンクスの前で録り終わったばかりのWantを聴かせてもらったあの時に、かずたそが壁にもたれてしゃがみ込んで「俺たちもうダメかもしれない」と言ってたこと。
それから数日経って161倉庫でのライブが終わり、その直後に突然解散してしまったこと。
2012年、MATSURIでの復活、over head kick girlを待ちわびていた人達で溢れていたあの秋葉原スタジオリボレの熱気、涙、あの光景のこと。
全部覚えています。
  over head kick girlは、すごく近いようで、とても遠い、同じ地に立っているようで、雲の上の、憧れの4人です。
彼等に憧れ続けて、追いかけても追いかけても追い付けないし、ましてや追い越すこともできませんでした。
この時代に生まれて「あのバンドの全盛期だったあの時代に、あの曲が出来たこの時期に生まれたらどんなに良かったことか」 と嫌になるくらい何度も思ってきました。
しかし唯一、心から、over head kick girlの存在するこの時に生まれて本当に良かったと感じます。
そして今後また、大好きな彼等のライブ、新曲、進化する姿をこの目で見られることが本当に幸せです。

札幌ラブメッセンジャーズ!
はっしー、しょーちゃん、かずたそ、ケスケさん
「over head kick girl wants to kill you」
発売おめでとう!
秋栃 美沙(THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADES)

 

over head kick girlは僕にとってのヒーローです。
ヒーローというものは、僕にとっては、というより僕が思うのは永遠の憧れであり、永遠に手の届かない高さの位置にいるものだと思い、と言いつつも親近感が湧くものなんだと思います。
ボーカルのはっしーさんは僕にとっては高校時代からヒーローでした。まだ会ったことないときはCDの中での存在だし、神格化的な物が勝手に進んでいました。
初めて会った時は自分が当時やっていたバンドで初札幌ライブをしたときなのですが(厳密にはもっと前に軽く一回会ってるんですがそれは無かったことにした方が話が上手く進むのでそうします)、知り合いが全くいなかった当時の自分にはっしーさんがずっと付き合って色んな話をしてくれた記憶が未だにあります。
何も自分は間違えなかったんだと。自分がデッドゾーンのラストシーンでのクリストファーウォーケンを演じて、そのシーンを自分自身が第三者目線で見てるような感覚というか。
ぼくがメガシティフォー好きだったのが理由で、はっしーさんもメガシティフォーが好きだから、ずっとそんな話ばっかして、未発表の音源とか聴かせてくれたのとか、今思えばああいうのがあったから自分も未だに譲らずメガシティフォー好きなのかなーと思います。
あと、山ほど映画を教えてくれたのとかも覚えてて、あれがあったから未だに自分は映画が、石井聰互が好きなんだと思います。今でもお互いが観た映画の感想を言い合ったり、知らないものを教えてくれたり、ずっとこういうのが理想だったんだ!って思っていました。
今でもそんな関係が変わらず続いてるのってサイコーだと思います個人的な思い込みじゃなければ良いけども笑
オーバーヘッドの音楽に対する愛は言葉じゃなかなか簡単に言い表せれられないので、あれなのですが、メガシティフォーよりも普通にカッコいいから僕は好きです。
なんというか、本当に支離滅裂で上手く言えないんですが、、兎にも角にも、はっしーさんは僕のヒーローで兄のような存在なので、また音源が出るってなると、もうそれだけで毎日が楽しくてしょうがないです。
白浜(THE SLEEPING AIDES AND RAZORBLADES)

over head kick girlとの出会いは6年前?だったかな?北海道へMODERN GOODDAYSやFREE KICKを観に行った時にハッシーが『僕over head kick girlてバンドやってるんすよ!』て言って1stデモを渡してくれたのが出会いでした。
当時はまだ企画をやり始めたばかりだった自分の企画名を知っていたり、各メンバーの好きなバンドがマニアック過ぎて驚いたのと、チャラい感じの若い子(ハッシーは派手な服装、カズキは頭が緑)ってイメージ、初めてライブを観たのは東京に来た渋谷乙、池袋マンホールで衝撃と同時にほんとに19歳かよ!?音源より全然ライブバンドで凄くかっこいいじゃん!て素直に思って、その日から一気に好きになったのを覚えてます。
その時に初めてライブ観たのに気づいたら最後の曲でヤブ君(SEVENTEEN AGAiN)とダイブしてた記憶があります。
北海道にも数回観に行ったりして、2010年10月に北海道の161倉庫にover head kick girlを観に行った時の次の日に突然の解散発表しててビックリしたのと悔しくなってる(まだ観たかった)自分がいて、数年経ってMATSURI開催するのを決めた時に、あの時の悔しさが凄くあったので1回目のMATSURIにはなんとしてもやってほしくてメンバー全員に1人1人に電話してお願いして、全員がOKしてくれた時は嬉しくて泣きましたね。
ライブの時も泣いてましたけど…。
気づいたら付き合いが経っている分中々うまく言いたい事がまとめられないんですが、ほんと衝撃的でかっこいいバンドなんすよね。
よく『あの頃は』良かったて言うけれど、過去には過去の良いバンドがいるように、今は今で、時代には時代の良いバンドが常にいると思った瞬間でもあり、日本の若手シーンてやっぱり面白いなと、きっかけを作ってくれたバンドの一つがover head kick girlです。
ハッシーから「レコード出してください」と言われたりもしてたけど、レーベルなんてやるつもりもなかったんで、こうやって数年経ってまさかkilikilivillaからover head kick girlの音源が、世に出回る時が来た!と思ったら素直に嬉しいです。
あの頃の青春と今の青春が沢山詰まった最高な音源(アルバム)が完成したね!
ハッシー、カズキ、ケースケ、ショウチャンほんとにおめでとう!
over head kick girlは永遠に青春で大好きです。

HiRO(break a school)

大体において16、17才の青年というのは裸同然で転がっているものである。この多感な時期に我々は裸同然で転がる事によって、その先の人生に起きる様々な苦難や試練に打ちのめされない為のタフネスを体に刻みつけているのかもしれない。つまり、この極めて限られた時期に裸同然で転がり続けた者のみだけが得られるそれが有るはずなのだ。
だから我々はそうしなくてはならないし、その先も延々と転がり続けなくてはならないのであるのであるのだな、、、。
っと初めて札幌でライブをした幾年前の真冬の午前2時、酩酊しながら謎の青春パンク論をストーブの前で暖を取りつつ1人唱えていると、聞き取れない何かを叫びながら彼は突然現れた。
ちょうど上記論述の様な16、17才の青年だった。ただ、彼は超裸だった。
裸同然ではなく裸一貫、極寒の地の真冬の男子便所を一人転げ回っていた。
彼は今日の企画に出ていた、まだ高校1年生にも関わらずBANANASかGRUMPIESだかのカバーをしてた様な、もしくはその様な曲を演奏してたOVER HEAD KICK GIRLのボーカルの彼だった。
その後私は、裸同然の青年と裸一貫の青年の相違点を幾つか考え、彼と私の人生がこの先特別に交わる事はきっとないだろうと思い札幌を発った。
そんな憶測とは関係無しに、我々は当然だったかの様に気がついた時には既にまた何処かで出会っていた。
それから僅かな時間が経った渋谷のライブハウス。たぶん橋本君の事を思い出せる限りに思い出し続けるだろう、今もそのライブは鮮明に覚えている。
首元をビリビリに引き裂いたJawbreakerのTシャツを着た彼の目は明らかにあの時とは全く異なり、研ぎ澄まされた輝きの様な怨念の様な、異様な異彩を放っていた。
最後の曲で私は誰も受け止めてくれないフロアーへ1人ダイブした。
凄まじい変化だった。何が凄まじく変わっていたのかを挙げれば切りが無い程のバンドの躍進であった。
誰の目にも見ても解る大きな変化を敢えて一つだけ挙げるなら、彼が服を着ていた事だった。
だけどその服も今にして思えば、何処かを転がり回ったかの様にズタボロだった様な気もする。
それからまた幾らかの時間がたった今、私と彼は我々が暮らす町で何かを探し求め二人彷徨っていた。
それは彼が求めているまだ絡まった新しい展望を紐解く為の道程の様でもあり、ただひたすらに旨いとんかつ屋を探し求めるただの友人との、ただ何と無く過ぎて行く時間の様でもあった。北海道の裸一貫の青年と私は気がつけば、ただの時間を共有するただの2人になっていた。
やはり人生は捨てたもんじゃない。
誰もが輝きを放ち続けたいと求め続ける限り、誰もがそれを放ち続ける事は願う限り可能であると思う。
しかし人が人々に成り、人々でありながら輝きを放ち続けられる時間は誰にも図れない。
して輝きを放てなかった時間は、暗くて誰の目にも映らなかった分だけ、次に輝きを放つ時、強く光る。
今回発売されたこの音源が、彼等の放つこれからの序章となることを切に願っております。

ヤブソン(SEVENTEEN AGAiN)

大人になる上で誰もが持つ感情をあるがままに叫んだ第一次OHKG。今作の新録曲で感じる第二次OHKGは、大人という通行手形を手に入れて歩き始めた社会で感じる葛藤や矛盾に対する感情をこれでもかと吐き出している。周りのクソみたいな大人達への怒り、自らの評価と周辺の評価の差異、思い通りにならないことへの歯痒さ、自分だけが悲劇のど真ん中に位置し、自分が居なくなったらここは終わるぜという間違った意識。あれだけなりたかった大人なのに、今は大人であることに反発している。この音源を聴き、OHKGは順調に大人の階段を登っているなと感じた。嬉しく、微笑ましく感じた。もはや親戚のおじさん状態である。まだまだ音楽的にも、人間的にも成長していく段階である。その途中過程でここまでのものを作り上げたOHKGは本当に素晴らしいし、今後に秘められた可能性を考えると正直ゾクゾクする。
Yuki SP(SP RECORDS)

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over head kick girlのストーリーは続く!