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Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

銀杏BOYZ"光のなかに立っていてね" "BEACH"と私

"光のなかに立っていてね"
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青春はいつか終わるし、銀杏BOYZだっていつか終わる。そこに永遠は無い。
かつて彼らは、そのあり得ないはずの永遠を鳴らし、盤の中に閉じ込めておくことに成功した。
誰もが彼らの音の中に青臭くて仕方ない頃の自分を見つけることができた。文字にするのもアホらしいほどのグチャグチャとした感情をポップなメロディに添えて仕立てあげた。"桐島、部活やめるってよ"も"ウォールフラワー"も"ももいろクローバーZ"も僕にとって銀杏BOYZだった。白を青に染めたのは彼らだった。
膨大な自意識と、トラウマと退屈と、過剰なまでに汚くて美しくて大きくて小さくて毒とクスリで、あらゆる表裏一体をあべこべにしながら生まれた"君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命""DOOR"という2枚のファーストアルバムはあらゆる若者を若者たらしめた。"君は君らしくいればいいよ"ありふれたメッセージを逆説的に表現してみせた。
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時代も彼らの味方だった。ブルーハーツは全然好きになれないし、Hi-STANDARDには乗り遅れた。くるりは器用すぎる。はじめから何にもないのに何かを失った気でいた2000年代の僕らに、銀杏BOYZの存在はあまりに好都合だった。
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"光のなかに立っていてね"。9年ぶりにリリースされたセカンドアルバム。僕らは皆揃って大人になった。
銀杏BOYZも変わった。かつては捉えることのできた永遠を再び手にしたく、躍起になった彼らは莫大なノイズをあらゆる曲に敷き詰めた。しかし、彼らはそれを手にすることは遂に叶わなかった。仲間は順番にいなくなり、やがて峯田和伸ひとりになった。彼らが再び彼らになるための闘いの結果を本作は生々しく記録している。結論はひとつ。彼らは負けたのだ。全てを埋め尽くすように鳴らされるノイズの波の向こうに、かつての銀杏BOYZが聴こえてくる。銀杏BOYZは荒れ狂うノイズに流されてしまった。
収められた楽曲は本当に本当に素晴らしい。掛け値無しだ。彼らにしか持ち得ない雑食性、高い演奏力とアイディア、美しいメロディが渾然一体となっている。所謂ロック以外の音楽も能動的に聴くリスナーであれば必ず引っ掛かると思う。

"ピンクローター"の流れを汲む歌ものシューゲイザー"金輪際"
シューゲイザーとチルウェイブとオールドスクールヒップホップをごちゃ混ぜにしてテクノポップのスパイスをひとつまみかけたような"愛してるってゆってよね"
中島みゆきが憑依したハードコア哀歌"愛の裂けめ"
小沢健二的多幸感で満たされたギターポップ"ぽあだむ"
等、峯田和伸のソングライティングは紛れもなく発揮されているし、従来以上にメンバーの貢献も多い。今、こんなアルバムを作れるのは彼ら以外にはいない。
だけれど、だけれども、アルバムを最後まで聴き終えて浮かぶのは悩み苦しみぬくメンバーの顔だったりする。先入観が邪魔をしている。聴く前から思い入れあるんだもの。しばらくは、冷静に聴けそうにない。つまりは、まだまだこのアルバムの評価は固まらないってこと。僕は、初めて銀杏BOYZに触れる若きリスナーには本作を薦めたい。本来は、先入観や思い入れ無しで聴くに相応しいアルバムだと思うので。

"BEACH"
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"BEACH"には、あの頃の銀杏BOYZがまだいる。そのままいる。ヨダレをたらしながらマイクを額に叩きつける峯田和伸がいる。轟音が渦を巻き時間軸がぐにゃぐにゃになる。忘れていた過去や、忘れたくない思い出がふと脳裏に浮かび、音と一体化する。轟音はますます熱を放ちライブハウスの天井を揺らす。
ノイズの向こうには、ぎゅうぎゅうの若者たちがいて、腕を振り上げて熱狂している。涙を流している者もいる。壁際の隅には18歳の頃の僕がいる。暴れることも泣くこともせず、茫然としている。今目の前で起きている光景を余すことなく記憶する。

これは僕の勝手な妄想に過ぎないけど、安孫子さんはあの頃の銀杏BOYZとお客さん達を、そのまま盤の中に閉じ込めておきたかったんじゃないかな。まるで秘めたる宝物のように。無菌室のように。だって、僕が知っている銀杏BOYZがそのまま鳴っている。鮮やかなハーシュノイズを纏い、まるで夢の中にいるように。聴く度に、かつて銀杏BOYZを愛していた全ての元・若者はかつての自分に出会うだろう。これを永遠と呼ばずして何と呼ぶか。僕らは音の中に閉じ込められた。"BEACH"には永遠が鳴っている。


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青春は終わるよ。終わってからが長いんだ。