Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

曽我部恵一"まぶしい"と私

前作"超越的漫画"から僅か4ヶ月でリリースされた本作"まぶしい"。ノーコンセプトであることがコンセプトであると言えるだろう。僕は一聴して息を飲んでしまった。
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ファンク、ギターポップ、フォーク、シューゲイズ、パンク、ヒップホップ、ポエトリーリーディング、アカペラ、ノイズ、テクノ、無数の音像が整理されないまま入り乱れる、混沌のポップアルバムと化しているからだ。
故に、本作は23曲入りであるが大作感は全くない。アレンジやメロディは煮詰める事を放棄され、曽我部が最初に思いたったままの姿で納められている。未完成のまま収録されたものもあるだろう。曲によっては曽我部のアカペラのみだ。
サニーデイサービスのファンなら拒否反応を示すかもしれない、ここでの曽我部はあまりに乱雑で、正直だ。
No ageを思わせるシューゲイズロックチューン"悲しい歌"で曽我部は歌う。
"終わった恋を歌うくらいなら 明日のこととか歌えばいいじゃない 明日晴れたらいいねとか 晩ごはんのおかずのこととか"
これは過去の曽我部自身を間違いなく否定している。彼が築いてきたサニーデイサービスや曽我部恵一バンドでの華々しいキャリアとプロップスに唾を吐きかけている。
何故かと言われれば、それが今の曽我部の気分なのだろう、としか言えない。彼はとにかく彼と彼の表現に正直だ。過去のキャリアに縛られることを一切放棄し、嫌われることも恐れず自分の表現を作品にする。内からでるものをそのまま歌い、すぐに録音し、音源にする。
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アルバムを締めるタイトルチューン"まぶしい"の一節はこうだ。
"何かやろうと思ったことが、それだけが本当なんだと思います。例えばうまく歌えなくても しっかり完成していなくても 歌おう、て思ったことが歌なんだと思います"
今の曽我部を端的に表した一節だ。どこまでも正直な音楽家、曽我部恵一。いよいよ生活そのものが歌になってきたらしい。目が離せない。
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ちなみに、筆者は 曽我部さんに似てるとよく言われており、複雑な気持ちになっていました…。