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Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

山田稔明(gomes the hitman)と私~前編

過剰な愛を添えて熱量のみでお送りする、gomes the hitman特集。今回は前編、山田稔明さんがソロ活動を始める以前、gomes the hitmanディスコグラフィーをレビューします。wikipediaのコピペみたいな毒にも薬にもならないような記事にはしたくないし、評論じみたこともできないので、100%僕の主観で書きます。一部妄想あり。ゴメスと私です。僕は裸を見せるくらいの気持ちで書きますんで、数少ない読者の方も全裸で読んでいただければ幸いです。
http://ja.m.wikipedia.org/wiki/GOMES_THE_HITMAN
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あ、gomes the hitman山田稔明さんの基本事項についてはこちらを読んでいただき、頭に叩きこんでいただければと思います。wikipediaが全て正しいとは全く思いませんが、少なくともこちらに書いてあることは正しいです。

1.gomes the hitman"gomes the hitman in arpeggio"
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ゴメスのインディーデビュー作。や、ギターポップネオアコが好きならど真ん中、水もしたたる灼熱の1枚。1曲目"僕はネオアコで人生を語る"から甘酸っぱく幕を開け、2曲目"朝の幸せ"で甘酸っぱさに拍車をかける、若さ故の勢いで迫る。デビュー作ゆえの荒さは勿論見受ける事ができるが、借り物じゃない言葉、何にも似てないメロディが既に確立されており、決して聴き逃せない1枚。

2.gomes the hitman"down the river to the sea"
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ゴメスのインディーセカンド。引き続きネオアコ路線をひた進む彼らであるが、"会えないかな"や"寒い夜だよ"等フォーキーな味わいのある歌ものがとりわけ素晴らしく、ネオアコギターポップという括りから大きくはみ出していく過程が見える。恐らく山田さんは、デビュー前から特定のジャンルに縛られない普遍的なポップソングをたくさん書いていたんじゃないだろうか。そんで、インディー時代の2枚はわざとネオアコ直系の曲を中心にセレクトしたんじゃないかな。推測だけど。当時はまだ渋谷系の残り火がポップシーンに残っていた。

3.gomes the hitman"neon strobo and flashlight"
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大胆な事をひとつ言います。こいつはメジャーデビューミニなんですが、既にfor you期の山下達郎さんレベルの曲をチラホラ書いてます。後のアルバムにも収録される灼熱のサマーポップチューン"ストロボ"、郊外の地方シティポップ"夕暮れ田舎町"、ピアノがリードする美しいメロディ"新しい季節"、ゴメス流ネオアコの決定版"tsubomi"等、とにかく凄まじいポップチューンの数々。本作は全体的に洗練されたコード感が気持ち良く、他作より"シティポップ"を感じたりする。僕は山下達郎さんより山田稔明さんのほうが良い曲書くしギターのカッティングも上手いと思ってます。

4.gomes the hitman"雨の夜と月の光"
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ゴメス初となるepですな。ここに納められた三編の楽曲は、山田稔明さんのソングライティングが比類ないレベルに高められてることを予感させるものです。注目すべきはやはりタイトルチューン。ゴメス流アーバンソウルであり、稀代の名曲であります。雨の街並み、ネオンライトが照らす人々の孤独とロマン。雨も踊り出す路地裏のブギーバック。カップリングの2曲"スティーブン・ダフィー的スクラップブック"はタイトルのセンスからして僕はくらっちゃうし、”down the river to the sea”はインディー時代の曲のリメイクながらタイトルチューン食いかねない程の甘酸っぱいサマーチューン。”魔法瓶”という言葉で始まる曲を初めて聴きました。ゴメスはシングルのカップリングも良い曲だらけ。

5.gomes the hitman”weekend”
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メジャーファーストフルアルバム。名盤。軽々しく言わないよ、本当の名盤。大学生の夏休みってあるじゃないですか?多分人生で一番幸福で無責任な季節なんですけれども。膨大な退屈のなか、クーラーの効いた部屋で映画を見て劇的な恋を夢想したり、影響を受けて少し遠出して逗子辺りまで来てみたり、久しぶりに会う地元の友人と夜中まで公園で話し込んだり。他愛無いし、実際暇で暇で仕方が無かった。みんなで海へ行って夕日に照らされるあの子にドキドキする みたいな劇的な夏じゃなくて、他愛ない日常の延長に少しだけ夏のスパイスがかかる程度の時間の方が思い出に残ったりする。夏休み中における、通いなれた校舎の静寂とかね。本作は、そんな人生で一番幸福な夏を余さず音楽に仕立てています。本当に本当に大切なアルバム。一生聴くと思います。

6.gomes the hitman”new atlas ep”
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ここからはゴメス第2章。街づくり三部作と呼ばれるコンセプト作品群のはじまりがこちら。本三部作のテーマとして、”架空の街に住む市井の人々のささやかな暮らしを歌う”というものが挙げられます。要するに、僕たちの歌です。ただ繰り返すだけの毎日でも、目をこらせばたくさんの新しい発見があり、美しい風景がある。青春映画のオープニングのような”始まっていく予感”に満ちた瑞々しいシングル。初っぱなの”僕たちのニューアトラス”からしてイントロから青く疾走するキラーチューン。”街をゆく”は今でも人気の高い、大きな気持ちのある楽曲。

7.gomes the hitman”cobblestone”
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街づくり第2作にしてセカンドアルバム。
従来のギターポップは勿論 今までのゴメスには無かったストレートなロックチューン、ボッサ風味のアコースティック曲、随所に配置されたエレクトロ風スキット、ブラスロック、牧歌的なフォークナンバー等多彩な曲群で大変な聞き応えがあります。曲毎に、街の住人たちの暮らしの機敏が描かれていますが、注目すべきは”思うことはいつも”。新しい街に引っ越してきたばかり、所在無さげな若者の新生活に対する期待や思い出への愛情を丁寧に歌にしています。”new atlas ep”の欄にも書きましたが、山田さんの歌詞はいつだって青春映画のオープニングのようで、彼の歌に没頭する僕の毎日さえも青春映画のように思えてくるのです。

8.gomes the hitman”maybe someday ep”
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街づくり最終作。ラストに相応しく、ポップスとしての間口が広い豊潤な音楽性を持った3曲。”緑の車”ではスカ+パーフリ的なアレンジまで披露しております。”僕らの暮らし”はマイベストソングのひとつであり、地方都市に生きる若い恋人たちの幸せを優しく歌いあげる名曲。ビニールプールで満足する幸せとする価値観こそ、僕の考える”ニューユタカ”であります。優しく穏やかに歳を重ねて、何かあっても無くても僕は山田さんの歌をずっと聴いていくんだろうな。

9.gomes the hitman"饒舌スタッカート"
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出ました、清々しいまでのキラーシングル。ポップなPVも作ってジャケットに山田さんの顔も載せていよいよブレイクを明確に狙いにいったであろう作品。事実、ゴメスのシングルでは一番売れたみたいです。タイトル曲はブラスの賑やかさも楽しい疾走するポップソング。山田さんらしい文学的な詩情はあまり感じ取れないけどね。スピッツにおける"チェリー"みたいなイメージです。カップリングの"拍子手拍子""ねじを巻く"も、いつになくテンションの高いポップソングで、あの頃のオザケンの血を感じます。

10.gomes the hitman"mono"
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貧乏でもお金持ちでもない中流家庭に生まれて、それなりの楽しいこと それなりの嫌なことを経験しながら大人になった。友達がいて、恋人もいて、憂鬱な日曜の夜があって、好きなレコードを買うお金くらいはある。そんな普通の青年の日々、不幸な事なんて無いはずなのに、何だかたまに心が空っぽになるような感覚に襲われるときがある。まるで自分だけが世界から仲間外れにされてるような気になる夜がある。夜明け前の一番暗い時間帯、断絶された夜にmonoは優しく響き渡る。何にも解決していないが、不思議と朝の光が窓を叩く。口笛と共に夜が明け、僕はまた電車に乗って会社へ向かう。そうやって何年も、monoは一晩中僕の横で僕の話を聞いてくれていた。優しい友達みたいだって思う。山田さんは本作を悩みぬいた時期に作り上げたらしい。いつか全ては優しさの中へ消えてゆく。

11.gomes the hitman"omni"
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"mono"に続く、本作はメジャーデビュー後4枚目のアルバム。"mono"はインディーでリリースされたアルバムだった。"饒舌スタッカート"を最後に1度メジャーを離れ、本作で再びメジャーリリース。前作で心の深淵を見せた山田さんであるが、ここで再び煌めくポップスを作り上げようと躍起になる姿が見えます。圧倒的なメロディの美しさを誇る"愛すべき日々"はピアノとストリングスによる華やかなアレンジも手伝い、日本語によるポップスの完成形とも言える驚愕のクオリティ。もはやギターポップネオアコという言葉では到底追い付けないところへリスナーを連れていきます。どんな気分の時に聴いてもじんわり胸が高まる1枚。

12.gomes the hitman”夜明けまで”
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Monoが廃盤の憂き目にあったため、mono収録曲の一部に新曲を加えメジャーで再リリースされたep。タイトル曲はPVが作られたこともあり人気が高く、山田さんがギタリストとしても確かな才があることを伺わせるギターチューンになっております。楽曲のサビをギターソロが担うという面白い構成。僕が学生時代に祖師ヶ谷大蔵に住んでいた頃、この音源を聴きながら夜中の街を徘徊していたんです。たまたま彷徨いてた警察官に職質を受け、問答の果てに本作を聴かせたところ「いい曲だなあオイ!君、音楽の才能あるよ。さ、早く荷物見せて」と何故か僕が山田さんのかわりに褒められたという思い出があります。国家権力お墨付きの1枚です。



13.gomes the hitman"明日は今日と同じ未来"
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アニメの主題歌に起用されたタイトル曲、現時点でのゴメス最新シングル。フォーキーで穏やかな佳曲に仕上がっており、"答えがない"という一見ネガティブな言葉を捉え直すべく作られた1曲です。語るべきはカップリング曲"Golden8"です。タイトルはそう、金八先生。ポップスのテーマとして常套である出会いと別れを山田さん流に歌い上げた"贈る言葉"であり、その素朴なアレンジも相成って非常に春らしい曲になっています。山田さん自身もお気に入りである様子。彼は英語教諭の資格を持っています(!)

14.gomes the hitman"ripple"
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人は必ず大人になります。例外は無しです。僕らの体は徐々に丸まっていき、子猫は老猫になります。はじめての恋は思い出の一部になり、何人目かの恋人がやがて妻となり家庭が生まれます。きっと昔みたいに熱心に音楽を聴いて、行ったことのない異国の街に想いを馳せることも無くなるのでしょう。"そんな時もあったね"とても美しい言葉だと思います。自分以外に大切な存在ができ、その大切な存在と共に穏やかに歳を重ねていく。今が過去になる。大人になるということは大変に美しい所業であり、僕らに唯一平等に与えられた営みであります。僕はrippleを聴くと、いつだってあの青い時代を思い出します。膨大な退屈と雑念に支配された学生時代、お金は無かったけど楽しかった時代。大人と子供の狭間で、願いを込めて音楽を聴いていた日々。もうあの頃には戻れないけれど、僕には今とこれからがある。見つめる桜は何度も花を咲かせるのです。


後編にあたります"山田稔明ソロの時代"も気長にお待ちください。