Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

SEVENTEEN AGAiNヤブソン ロングインタビュー

普段はうだつのあがらない日々や音楽に対する雑感をボチボチ綴るだけの当ブログですが、今回はなんと特別企画!今僕が一番話を聴きたい方にインタビューをすることができました!

SEVENTEEN AGAiNというバンドをご存知でしょうか。
近年ライブハウスを賑わせる気鋭の4ピースパンクバンド、東京を中心に活動しております。
筆者は2005年くらいから彼らの動向を追っており、ライブにもたまに顔を出してはグッときておりました。
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下段左が今回お話を聞かせていただいたヤブソン

ここで彼らの主要ディスコグラフィーを紹介します。

メンバーチェンジやコンピレーションへの参加等を経て、満を辞して2009年にリリースされたファーストアルバム"Never Wanna be Seventeen Again"。ソングライターヤブソンの個人史と雑食な音楽の嗜好、熱いソウルが結実したアルバム。
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SEVENTEEN AGAiN「NOBODY KNOWS MY SONG ...
リードトラック『nobody knows my song』


2012年にリリースされたセカンドアルバム"FUCK FOREVER"は震災/原発事故以降の時代を生きる青年の未来への咆哮と生活への慈しみが入り乱れ、音楽性は更に混沌を極める「ライフカミンバック」な傑作。
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SEVENTEEN AGAiN 「スイートマスメディア」 MV - YouTube
わたくしおススメのトラック『スイートマスメディア』


そして2014年、新作。SEVENTEEN AGAiN初のシングルをリリース!フォーマットはカセットテープ!!タイトル"恋人はアナキスト"!!!
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SEVENTEEN AGAiN / tokyo olympic [BOOTLEG MV ...
ブートビデオ『tokyo olympic


こちらがまた素晴らしい内容になっておりまして。従来の楽曲以上に新旧様々なロックミュージックからの影響と引用が確かな審美眼のもとで練り込まれております。ソングライターであるヤブソンの雑多な音楽的嗜好が発揮されていることは言うまでもありませんね。

ということで本題に入ります。今回はヤブソンの音楽ファンとしてのリスナー体験及び個人史の独白から、SEVENTEEN AGAiNの音楽を紐解いていこうという試みであります。熱心な音楽リスナーでもある彼の口から明かされる、バンド結成前夜から現在までの音楽史、レコードへのラブレター、これからの話。大事な事もそうじゃない事も全てを同列に、幾ばくかの願いを込めて。ヤブソン一万字超インタビュー、どうぞごらん下さい。



イチロー(以下、宅):おはようございます!Anorak citylights宅です。インタビューをはじめさせていただきます。今回はSEVENTEEN AGAiNのソングライターであるヤブソンのリスナーサイドにスポットを当てたお話を聞かせていただければ、と思っています。

ヤブソン(以下、藪):おはようございます!こちらこそどうぞ宜しくお願い致しますです。
宅:まず、ヤブソンが能動的に音楽を聴くようになったきっかけ及び原体験を教えてください。入口となったバンドはいたのでしょうか?

藪:とても大雑把な括りなのですが、"うるさい音楽"を意識して聴き始めたきっかけは中学2年生の頃に出会ったミッシェル・ガン・エレファントでした。自転車に乗り旅気分で片道3時間かけて渋谷のタワーレコードに行きまして、そこで『out of blues』のMVが流れていて、直感的にこれは超イケてるんじゃないかと判断し、手ぶらで帰るのもなんだったので買いました。そしたら超イケてたので、それ以降爆音で音楽を聴く習慣が形成されたのだと思います。それ以前、受動的には小学5,6年生の時に聞いてた『ドリアン助川ジャンベルジャン』というラジオ番組の冒頭に毎回セックスピストルズが流れておりまして。良いとも悪いとも思ってなかったわけですが、サブリミナル的に効いてたのかもしれませんね。あと、尾崎豊は中学生の頃から今まで一貫して好きです。

宅:片道3時間かけて渋谷って凄い話ですね。ミッシェルがキッカケとは何だか意外な感じもします。ローティーンの頃から今でも影響の一端を受けている音楽に触れていたわけですか。

藪:特別ミッシェルに思い入れがあるかと言われると大して無いんですが、一発目としての出会いは大きかったです。というか、全然分からないけど、"なんかコレ、ヤバいんじゃないかな?同級生は誰も知らないだろうし"っと無理して買ったり聴いたりした節も大いにあったのですが、そこで無理して本当に良かったです。そういう自分の中や周囲に既存しているモノ以外を無理して聴かなくなったらそこで死ぬんだろうな、とも思ったりするので。中学生の俺は良くそこで無理してくれたな、と思います。

宅:背伸びして理解できないものを聴く、という行為は音楽ファンなら誰もが通る道ですね。しかし結果的にその行為が今のリスニング環境を形成する雛型であったと。ヤブソンがバンド活動をスタートさせたのは十代の後半頃だと伺っておりますが、ご自分で音楽を始められて音楽の嗜好等はどのように変わっていきましたか?

藪:そうですね、高校2年生の時に五十嵐サブローという同級生に、"ヤブはなんかそこそこ尾崎豊とか歌えるらしい"という理由でバンドのボーカルとして誘われて始めました。彼は今回リリースしたテープでもレコーディングエンジニアとして一緒に制作をしています。当時、僕はHIPHOPばかり聴いており所謂インディーズのバンドを聴いていなかったので、全くバンドをやりたいとは思っていませんでした。"うーん、誘ってくれたしせっかくだからやろうかな"と情熱や熱意を微塵にも持たない形でスタートしたことを覚えています。始めてみましたら、凝り性なのか誰かが聴いてるのを自分が聴いても面白くないなぁと思ったのか、ひたすら様々なバンドを掘り出したのを覚えています。

宅:ちょくちょくお名前をお見かけします五十嵐サブローさんがここで出てくるんですね。なるほど、ロックやパンクに対し自覚的にならないうちにバンドを始めた、と。そこからどういった経緯で所謂パンクやインディーにのめり込み、SEVENTEEN AGAiNという自身のバンドを結成するに至ったのでしょうか?デモ音源やイニシャルインパルスでも確認できますが、初期SEVENTEEN AGAiNは音楽性が定まっていなかったとも聞いております。

藪:音楽性が定まらないのは今もずっとな気もします…笑 サブローとバンドを始めてから、なんでしょう、常に劣等感みたいなものを当時は抱いてたと記憶しています。先ほども述べたように、右も左もわからないままバンドを始めたので、例えば高校の同級生やその後出会うバンドの友達よりも遥かに経験も知識も無かったんです。だから、とにかく分からない、知らない状態。その時目に映ったりヤバそうだなと思う音源をひたすらに買っていました。何も持たないど素人の自分は人の何倍も詰め込まなければならないと思い、当時は無我夢中でした。その後、大澤君(現SEVENTEEN AGAiNベース・THE SENSATIONS・I HATE SMOKE RECORDS)が当時ボーカルをやっていたバンドと頻繁に対バンするようになり、一緒にライブを観に行くようになりました。その中で西荻wattsのシーンに出会い、カルチャーショックを受け、すごく大雑把に"こういう事がやりたいね!"と2人でバンドを組んだのがSEVENTEEN AGAiN結成の経緯でした。その当時は本質的な事は全然把握してなかったと思いますが。そんな頭スッカラカンの衝動のみで作った曲が、先ほど宅さんが仰ったデモやVAの曲ですね。


宅:『Nobody knows my song』の世界観とも繋がってくるお話ですね。個人的な話になって恐縮ですが、ファーストのライナーノーツに載っていたこの曲の解説に感銘を受けたんです。「わ、同じこと考えてる人がいる。しかもその気持ちをすげーカッコいい曲に仕立てあげてる」って。所謂一般人、市井の人々の生活や人生を願いを込めてカッコ良く歌う事がパンクだと思ったりしてます。要するに先ほどのお話が聞けただけでもインタビューできて良かったなーと笑 月並みな表現ではありますが、フラストレーションと劣等感と凝り性が大爆発、あらゆる音楽を聴き漁り、そこか表現の軸となるパンクと出会うわけですね。

藪:そうですね。特に西荻wattsではa page of punkとfour tomorrowに出会ったことが大きな転機になったと思います。パンクという事に対して、本質的な部分で向き合い、自分もパンクがやりたいと思えるきっかけになった出会いでした。

宅:なるほど。個人的には牛山くんが入ってから、一本筋の通った音になったのではないかと感じるんですが。

藪:仰る通り、牛君の加入を境にSEVENTEEN AGAiNはバンドとして筋が通ったと思います。ちょうどその頃にファーストアルバムに収録されてる曲を作り始めたこともあり、曲も歌詞もライブも以前より明らかに熱量が増したと感じました。それ以前はとにかくふざけてやろう、という事にのみ全精力を費やしていたので。それは今も大いにあるかもしれないですが…。

宅:牛山君の加入は当時驚きました。NUMBER TWOの名物兄弟として強烈に認識していたもので。

藪:当時、大澤君がギターを弾いていたのですが、バンドに牛君が入ったら絶対面白くなるよなーっと大澤君と話していて、彼が自ら「俺ベース弾くから牛君誘ってみよっか」と今考えると、彼の超泣ける気遣いもあり、なんとか上手いこと加入してもらえました。

宅:ヤブソンは一時期a page of punkのギタリストとしても活動されていました。アペイジ時代の経験はヤブソンの今の音楽活動にどんな形で還元されてるのでしょうか?

藪:アペイジに加入したことはそれ以降の創作に多大な影響を与えたと思います。まずツトムさん(アペイジのリーダー)に膨大な量のレコード知識をそれ以前の知識に上乗せする形で教えてもらったと思います。今でも加入する直前に交換したMIXTAPEを聴き直します。また、今でもその時々の最新のヤバいものを見つけだす嗅覚は凄まじいなーと思います。そして、歌詞に対しての向き合い方がここで大きく形成されたと思います。それから、知り合いと友達がたくさん出来た事と、イギリスツアーに行けた事は一生のモノだな、と思います。

宅:五十嵐さんとのバンド、西荻との邂逅、アペイジでの活動、牛山くん加入、振り返るとヤブソンの音楽史はキレイに段階が踏まれているように思います。

藪:本当に!仰って頂けた様に、何かの転機や音楽的な自身の歴史でもそうなのですが、ありがたい事にその都度大きな出会いがあったんだと常々思うんです。多分どれかひとつでも無ければ続けていられなかったんじゃないか、始まってすらなかったんじゃないか、といつも思います。なのでそういうひとつひとつの積み重ねで今だに精進させて頂けてるのだな、と痛感します。

宅:ここで、少しお話のベクトルを変えていこうと思います。ヤブソンの個人史及びリスナー体験を掘り下げることが今回のテーマであります。おそらくヤブソンは相当なレコード中毒者であり、日常的にディグをされている方です。よく行くレコード屋さんについて教えてください!!


藪:実店舗のレコード屋さんですと、近年はBIG LOVEで買う機会が多いですね。現行インディーはこちらが多いです。今は無くなってしまったのですが、ワルシャワレコードにもよく行っていました。あとは、近所にある蒲田のエトセトラレコードというレコード屋さんがあるのですが、ここが穴場で60年代~80年代の和モノに特化して品揃え良いです。たまにレコード全品70%オフセールとかやってます。PUNKで思い出深いレコード屋さんは代田と笹塚の中間地点の環七沿いにあるD.I.Yレコードにもよく行っていました。ここ程帰る頃に手が真っ黒になるレコード屋さんは無いと思います笑 DISK UNION、JET SETも勿論頻繁に行きます。通販ですと、近年はレーベル直販やバンド自身のbandcampやbig cartleで買う機会が増えました。国内ですとwaterslideさんやsp recordさん、eager beaverさん、hyper enoughさん、stone recordsさんの通販をよく使いますね。それと、最近大澤くんが始めたsoulmineというネットショップはこれからとても面白くなると思います。あとはebayを巡回して、新品では手に入らなそうな欲しい物をピンポイントで探す事も日課になってます。それと、dream on recordsさんも頻繁に買い物させてもらってました。また活発に入荷等して頂けたら嬉しいのですが。最近tape schoolという日本のweb shopが開店したのですが、ここはtapeオンリーの品揃えで他では見たことない音源ばかりで面白いです

宅:わ、僕もオンラインですけどbig loveさんとかstoneさんとかwaterslideさんはよく利用します。現行インディー物の品揃え抜群ですよね。soulmineももう5回くらい使ってますよー笑 hyper enoughさんはyour choiceさんと並んで、10代の頃お世話になったレビューサイトです!

藪:僕もハイパーイナフ大学、your choiceで勉強させて頂き、10代後半から20代前半をレコードに狂わされた口でした。こういったレビューサイト、レコード屋さんのレビューがどのお店も充実したおかげが最近見かけないのでまた出てくると面白いですよね。

宅:僕、高校時代your choiceやハイパーイナフ大学のウェブページを印刷して持ち歩いてました。書き手の主観や思いが混入しつつ情報サイトとしても読み物としても優れた現行のレビューサイトってなかなか無いですよね。特にpunk界隈は少ない気がします。


藪:その話、他人事とは思えないです。僕はsnuffy smilesの栄森さんが執筆してたコラムやレビューをそのページだけコピーしたり貰ったりしてました。やはりそういう熱量のあるレビュー的な総括があったほうが、特に90年代及び00年代以降の細分化された時代においてはあっても良いのでないか、と。そういう話をちょうど最近しました。

宅:質問に戻ります!新作がカセットテープでリリースされることにも象徴されますが、ヤブソンはレコードやカセット等音楽のフォーマット自体への深い愛情や拘りを持っているように感じますがどうでしょうか?

藪:アナログフォーマットへの愛着はとてもあります。これはもう10年近くレコード特有の魅力って何なのかな?みたいな議論を様々な方と度々してきているのですが、もうなんなんでしょう、一言で言うと意地とかになってしまう気がします。もちろんレコードやtapeを経由しなければ出ない独特の音質は大好きなのです。でも、ただ聴くだけならCDでもCDRでも良いと思うんですよ。mp3の320kbps以上の音質であれば、余程の音響マニアや、解像度が超高いモニタリングヘッドホンやスピーカーで聴かない限り、ほとんどの人が原音に遜色無いと感じるレベルで聴取することが可能だと思うのです。
このご時世、インターネットを経由して聴けない音楽の方が少ないですよね。新しい音楽が聴きたいだけなら、レコード屋に行ったり、実際にレコードを買って聴くよりも、家でsoundcloudやbandcampやyoutubeを掘ってた方がきっと効率良いし合理的なんです。つまり今はタワーレコードの全在庫以上の音源が聴ける試聴機が手元にある状況なんですね。それは普通の感覚の人ならやたらめったら音源を買わなくなりますよね。タワーレコードの店舗内で生活しているのと試聴可能環境は変わらないんですから。じゃあ何でフィジカルで買うのかというと、ヤバい物は目に見える様に手の届く所に持っていたいという所有欲でしか無いんです。全曲bandcampやyoutubeでいつでもどこでも聴けるとしても、自分がヤバい!と思った物は絶対に手に入れないと気が済まないじゃないですか。あと、これは個人的な感覚が過ぎると思うのですが、アナログフォーマットじゃないと所有してる実感が湧かないんです。逆説的な話だと、最近green dayの『dookie』のカセットテープを頂いたんです。勿論CDでは持ってるんです。僕は特別green dayが好きなわけじゃなかったんですが、テープを頂いて以降凄く好きになりました笑 そういう感覚が10年代以降、スマートフォンとインターネットが更に加速して発達していくのと逆行してドンドン増してます。アルバムで聴けるけどMGMTの『KIDS』は12インチ45回転のシングル盤で持っておきたい!とか、La'sの『there she goes』はitunesに入ってるけどシングルのジャケット最高だから持っておきたい!とかです。あとは何でしょう、レコードは限りなく有限だと感じるのです。有限な事に人間は本能的に惹かれるのだと思います。人にしても物にしても出来事にしても。有限ってとても儚い事です。人間は儚い事にも本能的に惹かれるのだと思います。つまりデータは抱きしめられないけど、レコードなら抱きしめられるんです!しかも全力で抱きしめたら壊れる可能性が超高いんです!全く的を得てない気がしますが、アナログの魅力ってこういう事の気がします。

宅:凄く分かりますよ。僕もCDやレコードの収集癖が昔からありましで、一万枚くらいは所有している、勝手に地域一番を名乗っているんですが笑 CDやレコードは単に音楽の入れ物としてではなく、もはや物体として愛している感じがします。勿論内臓されている音ありきなんですけど。特に中古盤は以前の保管環境の匂いがするわけですし、以前の所有者がどんな気持ちで売ったのか、どんな音楽が好きだったのか、これを聴いてどう感じたのか等勝手に想像して、巡り巡って自分のところに現物がやってきた事実にロマンを感じます。あとは、好きなバンドでもリリースされてる音源はコンプリートしないと真の意味で好きになれなかったり。ホント本質的にはフィギュアとかのコレクターと変わらない気もします。

藪:匂いの話よく分かります!以前、レコードの匂いを嗅いだだけで、それが何処の国から来たレコードか分かる人がいるという話を聞いた事があります。

宅:非常にロマンチックな話であります。さてさて、先程からのフォーマット論の延長の話にはなるんですが、新作『恋人はアナキスト』がカセットテープでリリースされる経緯に至ったのは、どんな思いからなんでしょうか?海外のインディーポップ等では新作をカセットでリリースする事はそんなに珍しい事では無くなりましたが、まだまだ日本ではカセットをリリースするバンドは少ないように思います。

藪:僕個人が最近最も購入するフォーマットがカセットだったので、自然とカセットで出してみたいと思うようになりました。あとは今迄CD、LP,7吋、10吋と出したいフォーマットでリリースするなり参加するなりする機会を頂けたので、あとはテープで出せれば良いなあと常々思っていました。小学生の頃から好きな曲ばかり詰め込んだMIX TAPEを作っていたり、人並みだと思うのですがカセットテープに愛着もあります。CDRが普及する以前はデモといえばカセットテープで、CDRが普及してからもカセットテープの方が断然思い入れが強いです。好みの音もテープの方が多かったですし。あ、もしかしたらテープ=デモテープという認識を持たれてる方もいるかもしれませんが、今回のテープは勿論デモテープでは無いです。
それと、今アルバムを作っている途中なのですが、その過程でシングルを作るには瞬発力が必要でした。日本ですとLPも7吋もレコードを作るのは納期も費用もほかの国と比べてとてもハードルが高いのが現状です。だからこそ日本でレコードをリリースしている方々は本当に正しいなと思うのですが。レコードに比べてカセットテープはほかの国とほぼ同じ条件で国内プレスができ、納期も短く、とても瞬発力のあるフォーマットでした。なので今の状況下においてアナログフォーマットでリリースすのはカセットテープが条件的にも気分的にも最適だと思いました。あとは今回のリリースからI HATE SMOKE RECORDS内でテープのみリリースする、テープ部的な位置付けのI HATE SMOKE TAPESというレーベルを始めたのですが、そういうアナログで出したい人やアナログで聴きたいと思う人達を瞬発力を持ってリリースさせてもらうには、日本だとテープが今一番適していると感じています。もし7吋やLPがテープと同じ環境下で出せるようになれば、それは素晴らしい事なのですが。
そしてですね、今回のテープはテープが自宅で聴ける環境が無いとか、外でも聴きたいという人がたくさんいると思うのでMP3でもダウンロードできるようにしました。でも、普通にダウンロードコードが同封されていて、そこにアクセスすれば自動的にテータが取得できるシステムでは味気無いと思ったんです。なので、どういう仕組みかはテープを買ってもらえれば分かるんですが、全部僕がパスワードを送ってくれた方に一人ずつデータを送ることにしました。データ下さい!データあげます!だけのやり取りでも勿論良いのですが、何かそのやり取りをきっかけに、もし話が出来るのなら、それはとても楽しいことかもしれないと思ったのです。このテープや以前のアルバムを聴いて思った事なり、歌詞の事なり、批判でも質問でも日々の愚痴でも。これは実験的に思いつきでやろうと思ったのですが、どんなリアクションがあるか楽しみです。

宅:めちゃめちゃ興味深い話ばかりで言葉が出ません笑 軽々しく「あの曲7吋で切ればいいのに」とか抜かしてた自分が恥ずかしいですね笑 

藪:はは、でも僕もリスナー視点のみでの感覚は勿論そんな感じで、むしろそんな軽々しい要望とかがバンドにとって励みになったりするんじゃないかと思いますです。このインタビューというか、お話出来た事も僕はとても嬉しかったです。

宅:それと、個人的には新作の『tokyo olympic』超アガりました。あの歌詞をビーチポップに乗せて歌うのはめちゃめちゃ痛快であります。

藪:音源聴いて頂いてありがとうございます。『tokyo olympic』はこの歌詞だからこそ、このサウンドでやる意味が僕らにはあるのかなと思いながら作りました。所謂、現行の流行っているサウンドのテイストをそのままカッコ良くやるなら、現行のバンドのレコード5枚持ってれば誰にでも出来ると思うのです。勿論、その'誰にでもできる感'はインディーやパンクには必要ですし、そういった枠組みで楽しむのも勿論全然ありなんですけど、SEVENTEEN AGAiNとしてそれをそのままアウトプットしてもしょうがないなあ、と。それはファースト作り終わってから常々考えて作ってます。多分僕らは第三者がカテゴライズするなら『青春パンク』だと思うんです。でも青くて、春はよく分かんないですけど…、本当にそれがPUNKならば、それは最高だなと思います。なので、多分そういう各ジャンルのサウンドに特化した専門家みたいな人には評価されないと思ってますし、評価される気もあまり無かったりします。ですので、歌詞の内容は手にとってもらえば分かると思うのですが、その不均等なバランスを痛快だと思ってもらえてとても光栄です。

宅:最後に、先程のお話にありました『I HATE SMOKE TAPES』、今後の動きは何か決まっていますか?

藪:『I HATE SMOKE TAPES』はこれからテンポよくどんどんリリース出来ていければ、と思っています!次のリリースも決まっております。その音源のデータも先日届いたのですが、とても素晴らしい出来になっております。多分6月中にはお知らせできると思います。(※この記事の公開直前に発表されました!)

宅:お忙しいなか、ありがとうございました。

藪:ありがとうございました。

《最後に、テーマ別に5枚ずつ、計15枚のレコードを選んでいただきました!》

①ヤブソンの『棺桶に持っていきたい5枚のレコード』

尾崎豊/十七歳の地図
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藪:尾崎豊に出会ってなければ自分でバンドをやることもなかったかもしれないので。今になってやっと身に染みて痛感する歌詞多数です。サウンドも然り。


THE BLUE HEARTS/ST
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藪:ブルーハーツは学生時代、あまり興味無かったのですが、これも歳をとる毎に共感が増している1枚です。


RC SUCCESION/カバーズ
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藪:パンクにとって、真摯であることと同じくらいにユーモアの同居が必要だと教えてくれた一枚。


WOMBELS/FAST&BOUNCY
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宅:75枚しかプレスされなかった驚愕の一枚ですね。
藪:これを手に入れた時、レコード収集人生の第一頁が完結したな、と思いました。


DOLLY MIXTURE/demonstration tapes
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藪:これも死ぬほど探した記憶があります。上記と同じく収集活動の節目となった一枚です。



墓場に入っても絶対に5枚だけでは退屈で死にそうになってると思うので、花よりレコードをお供えに来てもらえると嬉しいです。


②ヤブソンの『グッとくるジャケットを持つ5枚のレコード』

a page of punk/反対方向(fool's punk line)
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藪:絵を見ていてこんなに内容を的確に表していて、しかも泣けるジャケット他にないと思います。千秋くん凄い!


フジロッ久(仮)/ニューユタカ
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藪:このジャケットも、タイトルとこの作品に込められた意味合いをニューでユタカに表しているジャケットです。5枚中2枚が友達のバンドのジャケット!凄い!



jonathan richman/Rock 'n' roll with the Modern Lovers
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藪:表が写真そっくりな水彩画で、裏がその原画になった写真のジャケットです。セカンドアルバムのインナーで千秋君に同じアイディアを具現化してもらいました。千秋君やっぱり凄い!


washed out/life of leisure
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藪:当時ジャケットを見ただけで漠然と新しい時代が始まったと感じた1枚。よく分からないけど凄い!



尾崎豊/十七歳の地図
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藪:再度登場の尾崎豊のファースト二冠達成。こもジャケット見てるだけで泣けます。尾崎超凄い!


ということで、墓場は何かと殺風景だと思うので、お参りに来ていただく際は花よりレコードで墓石を彩りに来て欲しいです。


③ヤブソンの『恋人はアナキスト製作に影響を与えた5枚のレコード』

きゃりーぱみゅぱみゅ/ぱみゅぱみゅレボリューション
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宅:(!)
藪:現行の人気アイドルよりも音がデカくなきゃ話にならないな、と思い、よくMIX中に聴いてました。しかし、中田ヤスタカさんのサウンドワークは聴けば聴くほど唸りますし、それよりも音をデカくする作業はとても至難でした。


RADWIMPS/×と○と罪と
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藪:これも現行の日本の人気バンドより音がデカくなきゃ話にならないな、と思いながらよくMIX中に聴いてました。


THE MEN/LEAVE HOME
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藪:これも、現行の欧米のバンドより音がデカくなきゃ話にならないな、と思いながらよくMIX中に聴いてました。


銀杏BOYZ/BEACH
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藪:そして『こんなに音デカくなくてもいいっす!』と戦う前から不戦敗した唯一の音源です。このアルバムの全MIXを担当した安孫子さんに、今回のテープ制作に携わって頂けた事で本当に沢山の事を教えて貰いましたし、また心底楽しめる糧を沢山頂いたと感謝してもしきれない恩人です。アルバムも精進します。


尾崎豊/十七歳の地図
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藪:まさかの三冠。生まれ変われるなら今度の苗字は尾崎がいいです。



以上、SEVENTEEN AGAiNヤブソンの一万字インタビューになります。非常にムチャなスケジュールでのインタビューを快諾、真摯に話してくださったヤブソンさん、本当にありがとうございました!次はライブハウスで!!