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Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

pale/みずいろの時代 山田稔明インタビュー

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「pale/みずいろの時代」全編を包む心地よい内省のフィーリング。それは近年の山田稔明の楽曲に感じることの無かったトーンだ。
甘美なメロディに加え、生音と打ち込みが整頓され配列する有機的なアレンジが施されたポップソングの数々は日曜夜の絶望を優しく包みこむ。それは日々の中で緩やかに失い硬質していく心の感受を、肯定も否定もせずただそこにある事実として受け入れさせてくれる。緩やかに喪失し、何となく何かが終わっていく。僕はこの感覚を過去にも体験した事がある。
そう、GOMES THE HITMANの2002年作「mono」だ。あれは終わってしまった青春と真っ白な現実の狭間で疲弊しながらも、その生々しい心情の吐露がポップスの持つ本質的な美しさを増幅させた作品であった。一抹の光さえ見えない未来と怠惰な日々。それでも見上げた夕焼けは美しく、明日も生きると静かに決意する。終わらない夏の1日や、恋人の部屋へと急ぐ青年の足どりだけがポップスの標題ではないことを僕は「mono」で実感できた気がする。
今思えば、「mono」には作詞における山田稔明の主観がストーリーテラーから自分自身に切り替わった瞬間が納められていたのだろう。それほどまでに独白的であったし、ポップスとして消費するには個人的過ぎた。だからこそ、強烈な磁力を放っていたのだろう。
2016年の新作である「pale/みずいろの時代」は、甘美な喪失のドキュメントに終止する作品ではないし、ましてや前述した「mono」の焼き直しでは全くない。「mono」に欠落していた感情のピース、眩いまでの希望の光がアルバム終盤に散りばめられているのだ。幻想的なタイトルトラックに始まり、美しくも内省的なトーンを持つ楽曲が続く序盤、「スミス」「幸せの風が吹くさ」といった名曲が続く中盤から徐々に明かりが灯りはじめ、ラストの「Qui la laの夏物語」で一気に視界が晴れ真っ青な夏空と広大な海が目の前に広がる。
それは色を無くした現実に再び色が宿る様子を捉えたようであるし、白が鮮やかな青に変わっていく美しいグラデーションを描いているようだ。
人生色々あるけれど、時には落ち込む時もあるし苦しい時期も何度もある。それでも、生きていれば、続けてさえいれば視界は開けていくものだ。「pale/みずいろの時代」は人生の全てを賛美する珠玉のコンセプトアルバムであり、「mono」の明るい後日談なのだ。
雨に濡れぼやけた窓の向こうで、「人生はそんなに悪くないよ」と山田稔明が微笑んでいる。


7/7に発売される山田稔明のニューアルバム『pale/みずいろの時代』発売を記念して、メールインタビューを敢行させていただきました。
言わずもがな、当ブログでもラブレター的な記事を送り続けてきた音楽家であり、現行最高峰のソングライターである事は紛れもありません。もしも当ブログの読者で彼の音楽を聴いた事がないという方は、直ぐにレコードショップに駆け込んでみてください。

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膨大なアルバム未収録曲があるかと存じますが、『pale/みずいろの時代』に選ばれた曲達の基準を教えてください。
山田稔明:収録候補曲は倍くらいありましたが、再演する価値がある曲というのを結構真剣に審議しました(過去の自分と現在の自分とで)。「経年劣化していないもの」というのが基準だった気がします。
近年は、以前に比べ若いアーティストとの交流が活発であるように思えます。それらが山田さんの創作にどんな影響を与えていますか?
山田稔明:交流というのはあんまり増えてないんですよ、実際は。ただ気になるアーティストが増えて、その音源等をちゃんと聴いてみる余裕ができたのかもしれません。やっぱり新しい人たちの言語感覚というのはすごく刺激になりますし、逆説的に「自分はこういうふうに言葉を切り取るほうが好きだ」みたいな感じで世代感の違いをポジティブに受け止めています。
近年の山田さんの作品には「色」という概念が色濃く、また、作品のコンセプトとして取り入れられてるように感じます。なぜ「色」に拘った作品を多く作られているのでしょうか。
山田稔明:やはり2013年の『新しい青の時代』というアルバムのが自分のなかでの新しい基準、NEW STANDARDになったからでしょうか。90年代と2000年代はGOMES THE HITMANで「街づくり」三部作というのが自分のなかが大きくてその「街」で展開される物語の続きを模索していたのが、10年代になって『新しい青の時代』からは具体的な事象ではなく「色」という漠然としたイメージのもとで音楽を作るようになった、と分析しています。
山田さんは基本的にワンマンライブを多く組まれていますが、個人的にはもっと他のバンドとの化学反応を観たいと思っています。今気になるバンドはいらっしゃいますか?
山田稔明:再始動のb-flowerとはいつかご一緒したいと思っています。同世代では高橋徹也、最近CDを聴いて気になっているのはHomecomings、好きなバンドはシャムキャッツとかかな。
『緑の時代』〜『loved one』と比較的快活な作風のアルバムが続きましたが、何故『pale/みずいろの時代』を『mono』時代を思わせる内省的な作品に仕立てたのでしょうか?
山田稔明:『mono』のあとGOMES THE HITMANはメジャーレーベルに戻ることになるので自分のなかでは『mono』の内省的なモードは一旦棚上げにして、『omni』『ripple』というまた違うベクトルのアルバムを作りました。
もし『mono』の続編があったら、と考えたら確かに『pale/みずいろの時代』は同じ系譜かもしれませんね。「ナイトライフ」という曲は明らかに『mono』収録の「目に見えないもの」と地続きだし、作曲した期間が『mono』と共通するものが多いのも要因だと思われます。
山田さんといえば吉祥寺ですが、吉祥寺という環境が自身の音楽作りにどんな影響を与えていますか?
山田稔明:この街以外に住んでいる自分が想像できないのですよね。吉祥寺はとてもバランスのいい場所で、東京の都会的な場所へいけばちゃんと「おお、TOKYO!」と興奮できるくらいにレイドバックしている。客観的にTOKYOを眺められる場所という意味で、自分の楽曲のムードに大きな影響を与えていると思います。
『pale/みずいろの時代』において、「スミス」等の学生時代に書かれた曲や「calendar song」のような新しい曲等様々な時期に書かれた曲が見事に違和感なく混在しています。これはかなり凄い事だと思うのですが、山田さん自身自らのソングライティングについてどのように評価していますか?
山田稔明:頑張って曲を書いていたな、と若いころの自分に対して賛辞を送りたいです。
『pale/みずいろの時代』は非常に曲順の妙味が活きており、終盤に得られるカタルシスは格別です。曲順はどのような意図で決められたのでしょうか?
山田稔明:2曲目にポップな曲を配置するとか、聴き手が退屈しないように緩急をつけるとか、試聴機対応みたいなそういう類のことを一切考えないで曲順を作りました。春の終わり、雨の季節になって、梅雨明けして夏が来た!みたいな流れになっていて完璧な曲順だなあと感じます。
山田さんオススメのレコード屋さんを教えてください。
山田稔明:一番よく行くのは吉祥寺のディスクユニオンですが、もちろんココナッツディスク吉祥寺も良いレコード屋ですし、お薦めは吉祥寺からひと駅行った三鷹のパレードっていうお店です。
『pale/みずいろの時代』を製作するに当たり影響を受けたアルバムを3枚教えてください。
山田稔明:Toad the Wet Sprocket『pale』
     フィッシュマンズ『ORANGE』
     V.A.『GEOGRAPHIC COMPILATION / new geographic music』 かなー。

山田稔明さんありがとうございました。
最新作『pale/みずいろの時代』は7/7リリースです!!

<GOMES THE HITMAN山田稔明待望のソロ新作は自身の「音楽的青春期=みずいろの時代」を綴った群像劇!>

山田稔明『pale/みずいろの時代』
GTHC-0008 GOMES THE HITMAN.COM(2016年7月7日発売 税別 2500円)

収録曲:1.pale blue/2.気分/3.ナイトライフ/4.モノクローム/5.セレナーデ/6.スミス/7.幸せの風が吹くさ/8.my valentine/9.calendar song/10.Qui La Laの夏物語

ゲストミュージシャン:近藤研二、高橋徹也、佐々木真里、安宅浩司、立花綾香、上野洋、MADOKA(たんこぶちん)、伊藤健太(HARCO)、高橋結子

◯紙ジャケ仕様
◯全作詞・作曲・プロデュース:山田稔明
◯ミックス:手塚雅夫(freewheel)

愛猫との蜜月から生まれた『the loved one』(2015年7月発売)、さらには初めて上梓した私小説『猫と五つ目の季節』(ミルブックス)もロングセラーを続けるなか、この春からはNHK Eテレの人気番組「0655」おはようソング「第2の人生」の歌唱を担当した山田稔明、待望の新作は自身の「音楽的青春期=みずいろの時代」を綴った群像劇(サウンドトラック)になりました。『the loved one』同様にエンジニア手塚雅夫氏と鍵盤奏者佐々木真里さんと設計図を作りプロジェクトは進み、今年2月から4ヶ月をかけて、様々なゲストを迎えて完成、今作も『新しい青の時代』『緑の時代』『the loved one』に続き4年連続で七夕の日のCD発売となります。

たくさんのミュージシャンの力をお借りしました。近藤研二氏には前作収録の「ポチの子守唄」同様に編曲を託し演奏もすべてお任せした(「モノクローム」)。同世代の友人であり尊敬するシンガーソングライター高橋徹也氏にはコーラスを重ねてもらいました(「幸せの風が吹くさ」)。ソロのバンドで長年に渡って僕を支えてくれる安宅浩司くんと愛弟子である立花綾香は「セレナーデ」にそれぞれ力強いギターとコーラスを、上野洋くんは「my valentine」に軽やかなフルートを織り込んでくれた。同郷の後輩たんこぶちんのMADOKAが「Qui La Laの夏物語」に吹き込んだハーモニーボーカルは彼女が18歳のときの声、HARCOバンドの伊藤健太は自転車でうちにやってきてグルーヴィーなボトムを支えてくれた。GOMES THE HITMANから高橋結子がパーカッションで参加してくれたのも嬉しい出来事でした。

当初2014年の『緑の時代』に続くアーカイブス集として企画されたこのアルバムは、僕の予想を遥かに越える充実した内容になりました。音楽はまるでタイムマシンのように自由に時空を行き来する乗り物になります。1993年から2016年まで、時間と季節を超えた“新曲”が詰まった“ニューアルバム”にどうぞご期待ください。


<アルバム全曲解説>

1.pale blue(2008 / 2016)
2008年に作られたトラックと2016年に書いた歌詞とメロディの融合。
もともと「夜の庭師」という意味で呼ばれたインスト曲は真夜中に掘り進められた彫刻作品のようで本作の導入曲として最適だと感じ、新しい歌を重ねました。

2.気分(2003)
GOMES THE HITMAN『mono』と同時期に作られた超個人的な楽曲。
旅の途中で揺れ動く心境を歌う。当時からソロ弾き語りで演奏することが多かった。
初期デモ音源が新潟キューピッドバレイスキー場のCMに使用されたこともある。


3.ナイトライフ(2003)
僕のキャリアのなかでも数少ないマイナーキー、「気分」と同時期に書かれた楽曲。
この頃深夜のコンビニでアルバイトをしていた僕は完全に昼夜逆転の生活を送っていた。白昼夢のなかを漂って描き綴ったスケッチです。

4.モノクローム(2003)
近藤研二さんにすべてのアレンジを委ねた。もともとは何層にもハーモニーを塗り重ねた油絵のような歌だったが2016年に水彩画のような透明なサウンドに生まれ変わった。この歌も2003年に書かれた。ずっと鬱々としていた季節、苦悩は創作の源か。

5.セレナーデ(2007)
ソロでライブを始めた頃の定番曲。この曲を書いたとき、僕は人生の底辺にいるような気分だった。なんとか浮かび上がりたくてひたすら言葉を探した。
一人っ子として育った子供時代を思い描き振り返りながら書いた歌。

6.スミス(1993)
19歳のとき、初めて自分で歌うために書いた英語詞のオリジナル曲。
当時夢中になって聴いていたThe Smiths、The Sundaysへのオマージュ。
僕のシンガーソングライター人生のスタート地点、原点がここにある。

7.幸せの風が吹くさ(1995)
大学時代に書いた楽曲。フィッシュマンズ『ORANGE』から多大な影響を受けたライトファンクチューン。僕同様に『ORANGE』に強い思い入れを持つ同世代の尊敬する音楽家高橋徹也にハーモニーボーカルをお願いした。

8.my valentine(2012)
お菓子作家の友人のために作った、ドリーミーで牧歌的なフォークソング。
たくさんのスイーツが散りばめられていて、個人的にとても気に入っていたので当時の録音にいくつかのダビングを重ねて収録した。“愛に不可能はない”という宣言。

9.calendar song(2016)
2016年1月に開催した「山田稔明カレンダー展」のテーマソングに、と書き下ろした
“ノベルティ・ソング”は薄雲を吹き飛ばすようなスーパーポップチューンとなり、そのことに僕自身が一番驚いた。カレンダーのように人生は続く。もう一度そのことを宣誓する。

10.Qui La Laの夏物語(2014)
イラストレーター中村佑介氏のイラストからイメージした言葉には最初からメロディがついていて、僕はそれをしかるべき音で録音すればよかった。
同郷のMADOKA(このとき18歳)がはち切れるような若さを加味してくれた。
太宰と桜桃忌、織姫と彦星、また今年も終わらない青春みたいな夏がやってくる。

*オフィシャル通販STOREにてプレオーダー受付中(送料無料/特典付)

 

<先行レコ発ライブ決定!>

2016年7月2日(土)@ 恵比寿 天窓 switch
“夜の科学 vol.49ーpale blue days”

18:30開場 19:00開演/前売4000円 当日4500円(ドリンク代別途)
出演:山田稔明 with 夜の科学オーケストラ(バンド編成)
*どこよりも早くCD『pale/みずいろの時代』を販売します
*6月5日21時よりオフィシャル通販STOREチケットセクションにて入場受付開始[

恵比寿 天窓 switch
〒150-0013渋谷区恵比寿3-28-4 B1F
TEL 03-5795-1887