近代ギターポップの素晴らしい世界
ギターポップというポップスのカテゴリがあります。
定義をwikipediaで調べてみると、
『ギターポップ(日本名)とは音楽ジャンルのひとつ。アコースティックギターもしくは歪みの少ないエレキギターを中心に奏でられる洗練されたロックという意味合いが強い。日本国外ではIndie pop(インディー・ポップ)として知られ、アメリカではtwee pop(トゥイー・ポップ)又はtwee music(トゥイー・ミュージック)として知られる。』
という具合。要するに、割と曖昧なジャンルであると見受けられますね。よくギターポップとネオアコを同義のように使われる事がありますが、個人的には大きな間違いであるように思います。ネオアコはギターポップのサブカテゴリのひとつであり、ソウル・ジャズ・ボサノバ・映画音楽やバート・バカラック等の非ロック的な音楽を崩し、本家には及ばないような演奏力でもって、ポップスとして再現したものがネオアコだと解釈しております。あとはまあ、パンクのメンタリティを感じるかどうか。
そういった私個人の主張からも、今回紹介する10枚のレコードはネオアコではなくギターポップと称し紹介させていただきます。ギターポップの中にも無数のサブカテゴリが存在するわけですが、先程引用したwikipediaのギターポップ定義にピタッと収まるものばかりですね。全てが2010年以降にリリースされた、近代ギターポップの賜物となっております。『魔法を信じ続けるかい?』と歌ったのは中村一義でありましたが、音楽の魔法にかけられっ放しの全ての子猫ちゃんに捧げます。
①dream boys″dream boys″(2013 US)
DREAM BOYS : BORN YESTERDAY - YouTube
12弦ギターの音色が眩しすぎるヤング ギターポップバンドの新鋭。初期primal screamやhit paradeに通じる激甘な世界観です。優男風のルックスはインディー的に0点だけど、曲の良さでチャラ。シャムキャッツの近作にヤられた方なんかもバッチリだと思います。
②tony molina″dissed and dismissed″(2013 US)
Tony Molina - Dissed & Dismissed LP (full) - YouTube
ギター歪みまくりやん!ギタポじゃないやん!と朝から凄い剣幕で捲し立てられたらグウの音くらいしか出ないわけです。Pinkerton期のweezerにグレッグギンが加入、レコーディング代が足りず2時間で録音したら初期teenage fanclubになった。ホント、こんな感じ。短くて 汚くて ポップな音 と聞くだけで元西荻キッズの血が騒ぎます。や、いわゆる西荻の音とは全く違うけれどね。当初テープのみでリリースされたが即完売、slumberlandからCDとして再リリースされた というエピソードも最高。
③the proctors″Everlasting Light″(2013 UK)
The Proctors - Fun Sunday (2013) (Audio) - YouTube
近代ギターポップ史上最高のアルバムだと言い切ってしまいたい。何ひとつ新しい事をしない、だからこそソングライティングの妙味が求められるこの界隈で ここまで素晴らしい曲ばかりを書くバンドは他にいないでしょう。全曲シングルカットできるクオリティとはこの事!homecomingsとかsloppy joeのファンも絶対マスト。なぜギターポップはいつの時代も青春と並列に語られるのか?この言葉にできない感情に何と名前を付ければいいのか?いつまでもウジウジ、何歳になってもメソメソ、全ての女々しい男達に捧げます。
④sea lions″EVERYTHING YOU ALWAYS WANTED TO KNOW ABOUT SEA LIONS BUT WERE AFRAID TO ASK″(2011 US)
Sea Lions - Look - YouTube
布団の中で初めて聴いた時、あまりの素晴らしさに2時間トイレを我慢した。ずっと聴いていたくて、毛布の中に隠したスピーカーから離れるのが嫌で、日付が変わっても僕は繰り返し繰り返しsea lionsを聴いた。pastelsとwedding presentの素敵な出会いだぜ!なんてつまらない例えでお茶を濁す気は毛頭ない。僕がsea lionsを見つけた夜、17歳の時の自分が10年ぶりに現れて「お前まだそういうの聴いてるの?バッカじゃね」って吐き捨てた。素晴らしい音楽は時間軸を曲げる、理屈じゃないっしょ。そして私は大バカである。
⑤gold bears″Are You Falling In Love?″(2011 US)
Gold-Bears "Record Store" - YouTube
slamberland出身ということもあって、やたらpains of being pure at heartと比べられる事の多い金色の熊ちゃん。俺は熊ちゃんの方が全然好き。ペインズがマイブラならこっちはブラックタンバリンだよな。轟音のノイズギターとundertonesポールマックローニばりのハスキーボイスがとことんイカしてるし、なんならパワーポップやモッドな香りまで漂ってきやがる。恐らくソングライターは相当なレコードオタク。そう思えるだけで全幅の信頼を置けます。
⑥silver screen″When You and I Were Very Young″(2013 US)
Silver Screen - Really No Wonder - YouTube
雨上がりの凄く綺麗な青空とか 夕方から夜に変わる時間帯の空気だとか 日常に潜む美しい瞬間を感じた時、僕はたまに死にたくなる。死にたくなるというか、消えたくなる。今自分が体験している名も無き現象を永遠に感じていたい、だから、その瞬間のまま消えたくなるんだろうね。音楽でもそういう瞬間は確実に存在していて、僕はこのレコードを1曲目から再生した瞬間、消えたくなってしまった。本当に消えればいいのに、とかそういう暴言は無しで!!
⑦golden grrrls″golden grrrls″
GOLDEN GRRRLS - 'New Pop' - YouTube
浦和のディスクユニオンで偶然にも遭遇、当時リリースされたばかりのはずなのに700円のお値打ち価格。sea lionsとのスプリット7インチで全アノラックファンの心をがっつり掴んだヤング・アノラック・バンドのはじめの一歩。気だるい男女ボーカルに美しいメロディ、よろめきながらの全力疾走。しかし全然速くない。これこそアノラックの神髄でしょう。僕は小さな頃から運動神経がとても悪く、どんなに懸命に走ってもマラソンでいつも下位だった。走るフォームとかすげー笑われたりしたけど、手を抜いた事なかったぞ。何故だかそんな幼少時代を思い出した。そういう音なんだと思う。
⑧french films″imaginary future″
French Films - Take You With Me - YouTube
drumsだとかbeach fossilsだとか、所謂ビーチポップというサブカテゴリがありまして。非常に大好きな分野ではあるのですが、このfrench films、王道のビーチポップバンドでもあります……と紹介したいところですが、ただのフォロワーじゃないです。the drumsが映画ウォーターボーイズの主題歌に新曲を提供してみた という形容が正しいかどうかはわかりませんが、ビーチポップが根っこにありながらも時にパンキッシュだったりジャングリーだったりエモかったりと、いい意味で節操のない音になってます。でもでも、めちゃめちゃ良い曲ばかりですよ。
⑨garlands″garlands″(2012 SWE)
The Garlands - Forevermore (2012) (Audio) - YouTube
現代のTalulah Goshか、はたまたheavenlyか、どちらにせよAmelia FletcherのDNAを引き継いだ可憐な乙女ボイスにジャングリーなギターサウンド、まさに王道のギターポップでしょう。全てがこなれ過ぎていて、心を入れ込む隙間が無いなーとは個人的に思ったりします。やっぱり歌は下手くそなほうが好きだし、リズムはもうちょっともたついてていいし音はローファイな方がいいなあ。まさかのダメ出しで締めてみます。
⑩alpaca sports″sealed with a kiss″(2014 SWE)
Alpaca Sports - Just for fun (official video) - YouTube
ここ日本で絶大な人気を誇るスウェーデンのピュアギターポップバンド、アルパカスポーツ。佇まいがハイハワっぽかったりする。7インチでリリースされたシングル群をコンパイルしたファーストアルバムでありベストアルバムでもある本作、ギターポップの入門盤としても最適であります。
vaselinesの新譜も9月に出るぜ!!ってことで、ひとつ夏休みのお供にギターポップ、いかがでしょうか。