Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

【swim! swim!epリリース!】THE FULL TEENZ伊藤くんインタビュー

京都が生んだ新世代気鋭インディポップバンド、THE FULL TEENZ(フルティーンズ)が、なんと2014年12月24日にニューカセットテープをリリースします!

リリースはI HATE SMOKE TAPES。新しい時代の空気を的確に掴み取り、この国の新しいインディポップミュージックの密やかな楽しみ方を提示する同レーベルより、今年リリースした1stアルバム『魔法はとけた』で全く新しいパンクサウンドを手に入れたTHE FULL TEENZが音源をリリースするということは最早必然であるように思います。
今回はTHE FULL TEENZのメインソングライターである伊藤くんに話を聞くことに成功しました。
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(写真真ん中が伊藤くん)
本題に移る前に、まずは今年リリースされ著者も大いに感銘を受けた彼らの1stアルバムをレコメンドさせてください。

THE FULL TEENZ『魔法はとけた』
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THE FULL TEENZ 「Sea Breeze」MV - YouTube

”美しさ on baby ポケットの中で魔法をかけて”呟くように歌ったのは小沢健二であった。人生の美しさについて彼は願いを込めて歌にしたためて、うたかたの日々をおくる若者たちの生活を少しだけ豊かなものにした。優れたポップソングとは、決してリスナーの人生を大きく揺り動かすことをせず、日々を少しだけ豊かで美しいものに変えることのみを果たすのだ。THE FULL TEENZという奇妙な名前を持つ京都の若者たちが試行錯誤の上作り上げた1枚のアルバムは、そうしたポップソングの持つ役割と責任を正しく引き受ける、素晴らしいポップソングで構成されたアルバムである。シティポップとメロディックパンクを同列に配合させながら、そこからはみ出す雑多な音楽的要素、びっしりと敷かれたリヴァーヴの海。まるで海辺の喫茶店で頼んだサイダー瓶のしずくのように、甘いノスタルジーの波が僕らを日々の向こうへ押し流す。それは窓から射す光の屈折が音楽によって歪む瞬間である。現行USインディーとの同時代性を帯びながら、アルバムは後半になるにつれそのふり幅を広げていき、あっという間に終わる。今の彼らにしか作ることのできない8のポップソング、音楽の魔法がとけることはないのだ。

ということで、音楽の魔法をさらに加速させるブランニューカセットテープが遂にリリース。
特設サイトはこちら(新曲聴けます!ジャケかわいい!)
http://thefullteenz-swim-swim.tumblr.com/

購入はこちらから!(soulmineさん いつもお世話になってます!)
http://soulmine.jp/?pid=84223858

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『THE FULL TEENZの音楽に影響を与えた5枚のレコード』『伊藤くんの人生を変えた5枚のレコード』合計10枚のレコードの逸話を主軸に置いたインタビュー、若干21歳ながら、その豊かな感受性と鋭い審美眼で選ばれた10枚のレコードとそれに纏わるいくつかの話。それではどうぞ。


宅イチロー(以下:宅):それではインタビューをはじめます!宜しくお願いします!

伊藤くん(以下:伊):宜しくお願いします!

宅:今回は、『THE FULL TEENZの音楽に影響を与えた5枚のレコード』と『伊藤くんの人生を変えた5枚のレコード』合計10枚のレコードについてのお話を聞いていきながら、THE FULL TEENZの音楽を紐解いていけたら、と思います。

伊:ありがとうございます。じゃあ、まずは『THE FULL TEENZの音楽に影響を与えた5枚のレコード』を順番にお話します。まずは、こちらです。

かせきさいだぁΞ『VERY BEST OF かせきさいだぁ』
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伊:直接的に手法を真似た事は全く無いのですが、ポップであることの理想形というか、音源自体の持つ雰囲気にうっとりしてしまいます。作曲の時等、いつもこちらを聴いては背筋をピンとさせてもらっております。ここ数年で一番聴いてるかもしれません。彼のアルバム全て良いのですが、一枚選ぶとなると、美味しいトコ取りしているベスト盤を選んでしまいますね。

宅:彼の1stとか、はっぴいえんどからの文脈も感じ取ることができて最高ですよね。個人的な思いなのですが、THE FULL TEENZの音楽からはシティポップと現行USインディをパンクでアウトプットしたような風合いを感じていたんです。なので、かせきさんの持つ人懐っこくて洗練され過ぎてないシティポップ感はTHE FULL TEENZに直結するように感じます。

伊:ありがとうございます。歌詞も文学からの引用をしていたり、かせきさんの知的な側面にも憧れますね。

literature『Arab spring』
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宅:おー、THE FULL TEENZの持つ絶妙なハイブリット感は、確かにliteratureに通じますね。

伊:僕は今21歳なのですが、高校生の頃に背伸びして現行の海外のインディーものを色々聴いていた時期がありまして、その頃にWashed outやteen dazeにハマるんですけど、その後自分の中であまりピンとくるインディーバンドが見つからなくなってしまったんです。しばらく経ってから、菅沼くん(full teenzベース)の家でliteratureを聴かせてもらって衝撃を受けました。あまりパンクとかインディーとかカテゴライズはよく分からないんですが、あえて使うならば、パンクと現行インディーの理想的な融合だと思ったんです。特定のシーンやカテゴライズに拘った活動の格好良さも勿論分かるのですが、full teenzは色々な環境で活動したいと思っていて、まさにliteratureはどんな環境でも受け入れられる音楽だと思います。僕らもそうありたいです。

宅:THE FULL TEENZの『魔法はとけた』は、色んなタイプのリスナーから歓迎を受けてましたよ。


car10『S/T』

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伊:snuffy smilesから出たcar10の7インチです。

宅:同世代ですよね?少し意外なチョイスです。これから足利にライブ観に行きますよ。

伊:car10は昔のデモの頃のイメージが強かったので、これを聴いた時、僕の知っているcar10とは違うcar10がいる…と思ってしまいましたね笑 短い曲の中にカッコ良すぎるポイントが詰まりまくってて、本当に勘弁してほしかったですね笑

宅:サウンドフェクトの懲り具合が明らかに狂ってます笑 car10とは昔から交流があるんですか?

伊:car10は2年半くらい前に初めて対バンしてから、ちょくちょく一緒にやったりしてましたね。

宅:僕はcar10にもfull teenzにも、種違いの兄弟感というか、絶妙な同時代性をビンビン感じてるんです。

伊:ありがとうございます。確かに、car10もそうなのですが、北海道のnot wonkやthe sleeping aides and razorblades等ほぼ同世代で物凄くカッコいい音楽を作っている友達が周りにたくさんいるという事は、恐怖でもあり、大変恵まれているということでもあります。いつも良い刺激を受けていますね。

宅:あらゆるポップミュージックの交配を繰り返しながら、サウンドエフェクトや空気感で海外のインディとも繋がる文脈を作っていたり、本当に日本の若いインディバンドは面白いです。近年は東京よりも地方や郊外のバンドの方が気になりますね。

manchester schoolΞ『demo』
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宅:THE FULL TEENZは同時代の若いバンドからの影響が多大なんですね。

伊:そうですね、後で詳しくお話しますが、僕らは対バンになったり、直接会って友達になったバンドに刺激を受けることの方が多いかもしれません。僕は高校生まで大阪に住んでいたのですが、たまにmanchester schoolΞを観に行ってたんです。彼らはいつ観ても狂ったライブをしていました笑 自分の自転車をライブハウスのステージに持ってきてぶち壊したり、マイクを天井にぶつけて拾う謎の行為を繰り返したり、ハチャメチャでしたね。それでいて曲はポップでカッコ良く、僕にとってのヒーローだったんです。ハードコアパンクの速さでこんなにポップな曲ができるのか、と衝撃を受けましたし、バンドの姿勢や人柄も含めて本当に大好きです。

宅:狂ったステージングに反比例する曲の良さ、ですね笑 デモを出してた頃の彼らは伊藤くんの仰る通りハードコアパンクソングが多かったので、full teenzの『夏の思い出』に代表されるファストチューンに彼らからの影響が顕著であるように思います。

伊:先日、SEVENTEEN AGAiNのヤブさんにも同じご指摘を受けました笑

Various artists『生き埋めVA』
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宅:!?

伊:自分と仲間達で運営している生き埋めレコーズのコンピレーションアルバムですね。

宅:自分達でコンパイルした作品に自分達自身が多大な影響を受けたということですか?

伊:そうです!むしろ、影響を受けるような大好きなバンド達だからこそコンパイルしてリリースしたんです。僕はインタビューでしか考えている事や姿勢を知る事のできない昔の人や、直接話せない有名な人よりも、対バンしたりライブハウスで話したりした人達から刺激を受けることが多いんです。特に、このVAに参加してもらったバンドは各々の芯がしっかりとあって、ルーツやそれをアウトプットする活動の仕方も本当に尊敬できます。

宅:なるほど、とても納得できます。自分で見て聴いて話して遊んだ人や音楽からの経験は、音源や文献等の資料からの情報に勝る、と。このお話を聞けただけでも、今日インタビューができて良かったです。では、続きまして『伊藤くんの人生を変えた5枚のレコード』についてお話していきましょう!

銀杏boyz『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』
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宅:これ出た時、伊藤くんまだ小学生とかですよね?

伊:そうです!小学生でしたね。僕が中学生の頃、兄とi-podを共有していたんです。そこで初めて銀杏boyzと出会いました。中学生の頃は、夜更かしや朝まで起きている事もしないような真面目な少年だったんですが、夏休みの夜にi-podをイヤホンで聴きながら眠りにつこうと思っていると、突然バカでかい音で銀杏boyzが流れてきたんです。最初は、こんなうるさい音楽なんてあるのか とビックリしました。一通り聴いてるうちにどんどんのめり込んでいって、その夜だけで何度も何度も繰り返し狂ったように聴いてしまい、気付けば朝になっていました。人生初のオールナイトが、銀杏boyzと出会った夜です。

宅:刺激的な出会い方ですねー笑 そもそも兄のi-podという存在が、伊藤くんの音楽の原体験なのではないでしょうか?中学生で銀杏boyz聴いたら文字通り人生変わってしまいそうですね。

伊:僕の音楽の原体験は、確かに兄の影響が大きかったように思います。ellegardenやhide with spread beaver等も教えてもらいました笑

Fruity『songs:complete discography』
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宅:『魔法はとけた』からもfruityからの影響の一端を感じ取ることができます。

伊:きっかけは忘れてしまいましたが、確か中学生の頃に出会ったんだと思います。SCHOOLJACKETSもYOUR SONG IS GOODもそうですが、JxJXさんのセンスがあり得ないほど最高で、ずっとカッコ良くて。本当に凄いと思ってます。

宅:異ジャンルを租借してパンクに落とし込むセンスとか、マネしたくてもマネできないセンスですよね。また、Fruityにはあらゆる音楽への入り口が用意されている。

伊:そうですね、音楽にめちゃめちゃ精通している人が作ってるって一聴して分かりますもんね。雑多な要素を租借してアウトプットする点においては、それをどうやたらカッコ良く実現できるかをTHE FULL TEENZにおいても常に考えています。

宅:THE FULL TEENZの音楽からも色々な音楽への入り口が見え隠れしていて、そういう意味では非常にFruity的であると思います。

weezer『pinkerton』
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伊:普通のエディションも良いのですが、後々出たシングルのB面等をボーナストラックに加えたデラックスエディションが最高過ぎます。

宅:you gave your love to me softly!!!!

伊:それです!!

宅:伊藤くん絶対好きだと思ってました笑 というか、『sea breeze』の夕焼け疾走感は完全にそれです!笑

伊:この前、フジロッ久(仮)の藤原さんが仰っていたのですが、ただひたすらに良いメロディをどのように聴かせるかという事が重要で、結局僕らのようなバンドはそれに尽きると思っているんです。weezerのpinkertonはそれがパンクのテンションでもって完璧に実現されているように感じます

宅:良い話だな~。

Various artists『Make it alright!』
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宅:i hate smoke recordsが毎年末に出すコンピレーション、こちらは2009年リリースのものですね。

伊:これは初めて購入したi hate smoke recordsのコンピなのです。SEVENTEEN AGAiNくらいしか知ってるバンドがいない状態で買ったのですが、聴いて本当にびっくりしました。良い意味でハチャメチャな演奏をしているバンドしか入っていなくて、しかもみんな曲が短い笑 当時、既にTHE FULL TEENZはコピーバンドとして活動しいたのですが、i hate smoke recordsのコンピに入ってるようなバンドになりたいと思い、オリジナルの曲を作り始めたんです

宅:今回i hate smoke tapesから新譜がリリースされますが、そのお話がきた時いかがでした?

伊:大学の講義中だったのですが、震えましたね笑 今年の6月にSEVENTEEN AGAiNを京都に呼んでライブを企画したんです。正直に言うと、僕らは京都で活動していることもあって、SEVENTEEN AGAiNと対バンする機会も1年に1度あるか無いかくらいだし、大澤さんと話す機会もなかなか無いので、ダメ元で僕らから声をかけたんです。レコーディングするので、i hate smoke recordsからリリースしてもらえませんか?と。その時の話を覚えてくださったみたいで、今回のリリースが決まりました。

宅:なるほど。しかも今最も勢いのあるテープフォーマットでのリリースです。

伊:BURGER RECORDS等のテープを好んで買っているので、すごく嬉しいですね。なぜ今回の新譜を生き埋めレコーズではなくi hate smoke recordsから出したのか?と疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。何故今回どうしてもi hate smoke recordsからリリースしたかったのか、それは自分たちの活動だけでは届かないところまで知ってもらえる可能性を信じたからです。結果として、生き埋めレコーズや僕たちが京都でやっている事を知ってもらえる機会になれば最高ですね。

wienners『cult pop japan』
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伊:wiennersもi hate smoke records関連で名前を知ったのですが、とにかく速くて短い曲の中にこれでもかとポップなメロディと展開が詰め込まれていて衝撃を受けました。特にこの1stアルバムの頃のwiennersは短い曲を矢継ぎ早に連発するスタイルで、本当に刺激的です。ショートチューンバンドは大概ファストコア的なアプローチになると思うのですが、wiennersは1分以内の曲にイントロAメロBメロサビアウトロ全てがありました。僕達も特に意識して曲を短くしているわけではないのですが、初見の方がライブを観ていて飽きない尺を意識すると、どんどん曲が短くなってしまって笑 その短さの中に展開とメロディをいかに上手に組み込むかを考えています。

宅:ある意味、Fruity的方法論を極限まで応用したバンドがwiennersですもんね。THE FULL TEENZのショートチューンもきちっと展開しながらポップで後味が良く、Fruityやwiennersの方法論を更新しているように思いました。

伊:Fruityで培われた感覚を持った方(玉屋2060%)が、でんぱ組.incのような武道館でライブをするようなアイドルと共鳴してる事実、冷静に考えると凄い事です笑

宅:でんぱ組.incもFruityの隔世遺伝ってことになりますからね。伊藤くん、そろそろ時間なので終わりになりますが、最後に何でもいいんで一言ください!

伊:いつも面白い事を考えているので、少しでも気にかけてもらえると嬉しいです。また、今回リリースするテープはダウンロードコードもついていますので、テープを聴けない方も是非!ありがとうございました!

宅:最後に、レコ発イベントの告知です。伊藤くん、ありがとうございました。


2014年12月27日(土)@下北沢SHELTER
『I HATE SMOKE RECORDS×生き埋めレコーズ presents.』

2015年3月7日(土)@二条nano
『THE FULLTEENZ presents.』

※詳細は追って特設ページで!皆さんで行きましょう!!!