Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

And Summer Club チャーケンくんインタビュー

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大学時代とは魔法のような季節である。あらゆる社会的責任から解放され、365日24時間全てが自分のものになる。目の前にある膨大な時間を自由に貪る事を許されたモラトリアム製造期だ。つまりは自分次第で4年間は金色にも鈍色にもなる。若者は皆そこで思い思いの時間を過ごすが、その殆どは若気の至りという言葉のもとで許される。大学生とはそういうものなのだ。
そこで得た沢山の経験や思い出を引きずりながら僕らは大人へと変わっていく。社会に出て、現実に打ちひしがれ、苦悩し、あの甘美な時間の事など少しずつ忘れていき、いつしか思い出は陽炎の向こう側で曖昧に形を変えていく。夏はただの季節に成り下がり、それ以上の意義を持たない気温が高いだけの数ヵ月になる。
社会人8年目の夏、僕は仕事を辞めた。理由の数なら両手の指で収まらないが、とにかく僕は自分の意思で所属を捨てた。
急に毎日が暇になってしまった、こんなのは大学時代以来のことだ。
折角の時間だ、働いていた8年の間に度々顔を出しては僕を嘲笑った大学時代の思い出に頭から飛び込んでみよう。小田急線を乗り継いで母校へと向かう。まるで古い友達に会いに行くかのように、不安と興奮が体を包む。
そこは記憶のそれと全く同じ姿形で目の前に現れた。やる気のない守衛と誰だか分からない緑色の銅像。水圧の弱い噴水に芝生で寝転びじゃれ合う数人の男子学生。
夏休み中で人気のない校舎に忍び込んでみる。セミがミンミン泣いていて、紫外線が皮膚をジリジリ焦がす午後の時間帯。普段は学生で溢れ喧騒を極める1号棟は静まり帰り、夏だというのにどこかひんやりした風が吹いている。僕は思い出を巡らせながらゆっくりと歩く。
遠くでかすかに音がする。吹奏楽部の練習だろうか。僕は引き寄せられるかのように音の鳴る方へ向かう。2号棟近くの部室棟、その一角にある一際小さな窓のある部屋。ドアにはカラフルなシールが無造作に貼られていて、更にその上からスプレーのようなもので「Heavy Hawaii Punk」と書かれている。音はここから聴こえているようだ。ドアの向こうからは信じられない音圧のノイズと、微かに聴こえる男女の話し声のような歌。メロディは美しく、人懐っこい。まるで仲の良い先輩ととりとめのない話をして過ごした夜のように、永遠を感じさせるポップソングであった。
どんな人間がこの音を鳴らしているのだろう。
意を決してドアを開けた瞬間、ピタリと音が止んだ。部室の中には誰もおらず、そこには楽器はおろかスピーカーさえ見当たらない。乱雑に置かれたいくつかのソファーとテーブルだけが僕を見て笑っていた。夢か幻かも分からない、確かなのは今日が暑い夏の日だってこと。

And Summer Club「Heavy Hawaii Punk」を聴いて、僕は自らの大学時代を思い出してしまった。
パンク、インディー、ガレージ、サーフ、彼らを巡る借り物の肩書きはこの際どうだっていい。
照れ隠しのように施された深いリヴァーブと、瑞々しくもラウドに鳴らされるバンドアンサンブルの隙間から聴こえる若き叫び声。And Summer Clubに宿る青春のあとさき。

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宜しくお願いします!
チャーケン:この度はありがとうございます!よろしくお願いします!
そもそもチャーケンという呼び名の由来は一体何なのでしょうか?
チャーケン:僕の本名はケンタロウっていうんですけど、友人からはけんちゃんって呼ばれてたのですが、次第にちゃんけん→ちゃーけん、になっていきました。アニメの「チャージマン研」が好きなの?ってよく聞かれるんですけど、僕はお茶犬の方が好きですね。
茶犬(チャーケン)という解釈をいたします!
チャーケン:そうですね!お茶犬のロボ人形を昔持っていて、そいつのベロから緑茶の匂いがしたのが今でも忘れられないですね。
チャーケンくんがAnd Summer Clubを結成した経緯を教えてください。
チャーケン:And Summer Clubは大学のサークルで結成しました。初めてそのサークルに行った時、ボカロのオタクみたいな人にシンセの弾き方を教わったのですが、あまりにもつまらなかったので高速で帰宅しました。それからサークルに行かなくなってしまったのですが、学年が1つ上だったvo.gtの角田くんと知り合ってからまたサークルに行くようになったんです。「前のボカロの人より音楽の話めっちゃできる!ワーイ!」って思いました。角田くんはAnd Summer Clubでギターを弾いてる斗紀世ちゃんと、既にAnd Summer Clubの前身バンドをやっていました。しばらくして、学祭か何かの時のライブでメンバーが抜ける事になり、僕がその後バンドに加入してAnd Summer Clubになりました。当時、斗紀世ちゃんがベース担当だったのですが、僕が加入したことによってギターにメタモルフォーゼしてもらいました。
なるほど、結果的にベスト采配ですね笑
チャーケン:当時、斗紀世ちゃんはギターをあまり弾いた事がなかったみたいなんですけど、いざ弾いてみると爆裂エレキングダムプレイで痺れました。個人的には田渕ひさ子とジョンフルシアンテがフュージョンしたかのようなギターをこれからも弾いてほしいですね~!
チャーケンくんは自分達の音楽に対しどのように自己評価していますか?
チャーケン:音的には自分の好みのものに変わっていってるかな、と思っております。前作(1st ep SuperDash)を作った時くらいから、高校生の時に聞いてたThe Hivesの「Barely Legal」やThe Viewの「Hats Off To The Buskers」等を思い出したかのように聴き直して、「自分がやるならコレだよなー!!」って感覚になっていました。曲はほとんど角田くんが作っていて、他の3人はそれをなぞってアレンジしていくことが多いのですが、角田くんが作ってきてくれる曲に自分の「コレコレー!」っていう感覚が不思議と一致する瞬間があって、大満足みかんでした。あと、まーくんがドラムで加入してくれたのもデカいです。フロアタムをボコボコにしばいたり、アホフィルを入れまくったりするドラマーが好きなので、まーくんのオフェンシブドラムもめちゃくちゃアガります。今回のアルバムのタイトルが「HEAVY HAWAII PUNK」っていうんですが、音楽的に僕らはヘビーでもハワイでもパンクでもないな、と思いました笑。だけどなんだかHEAVY HAWAII PUNKって言葉はしっくりくるというか、そこに向かっていきてえなあ、という気持ちです。
ガレージ感みたいなものがどんどん出てきてる印象です。最初のデモは所謂インディーっぽい音という認識でしたけど、どんどんガレージ感だったりパンク感がついてきて、良い感じにおかしくなっていったと思います笑
チャーケン:ジャンル問わずどんどんおかしくなっていきたいですね!笑
今回のアルバムを作るに当たり、ベーシストとしてチャーケンくんが特に意識したポイントはどんなところでしょうか?
チャーケン:今回は前回のSuperDash制作に比べると、かなり入念に準備しました。前回はオリャっと勢いに任せた1発録りだったので、今回はプリプロから音だったりギターリフだったりの確認がしっかりできました。メンバーそれぞれで出したい音のビジョンみたいなんがあったような気がしたので、試行錯誤みたいなのものはあまり無かったとおもいます。たぶん。僕はベース担当として、FIDLARのベーシストであるブランドンの右腕とThe Stone Rosesのマニの左腕が欲しい、とかしか考えてなかったですけど笑。レコーディングの時は少しファットな音にしたつもりです。好きな音はブリンブリンなベースの音なのですか、やり過ぎるとやはりバンドに合わないので。。。本当はFUZZが踏みたくて踏みたくてしょうがないのですが、角田くんに全拒否されています笑。
やはり角田くんの持つ全体のイメージがあって、みんながそこに近付ける形なのですね。
チャーケン:そうですね、それがベストだと思っております!
アルバムタイトルの由来について教えてください。

チャーケン:HEAVY HAWAII PUNKという言葉はTHE FULL TEENZの伊藤が考えたワードで、その語感をみんな気に入っていたんです。さっきも言ったのですがヘビーでもハワイでもパンクでもない僕らですがHEAVY HAWAII PUNKはしっくりきたんですね。僕自身も「HEAVY HAWAII PUNKってなに?笑」みたいな感じだったんですが、アルバムの曲が出揃って聴いてみたら、「こりゃあHEAVY HAWAII PUNKやないか?!」って気分になって笑 ハワイは行ったことないのでElvis PresleyのBlue HawaiiのサントラだったりALOHA GOT SOULのオムニバスやKONISHIKIの歌を聴いて想いを馳せています。
ありがとうございます。KONISHIKIからは質量的な意味でもヘビーハワイを感じます。今回、こんがりおんがくからリリースという情報を聞いて驚きました。こんがりおんがくからのリリースに至った経緯を教えてください。
チャーケン:こんがりおんがくの事はメンバーみんな勿論知っていて、僕は高校の時付き合ってたガールフレンドからneco眠るを教えてもらって、よく近くのモールで山盛りのポテトを食いながら聴いてました。 経緯をざっくりと言うと、森さん(こんがりおんがく/neco眠る)が僕らのことを知ってくれてて、ライブを観に来てもらったことが最初の出会いでした。その後、角田くんが働いてるバーで飲んだりライブも誘ってもらったりしてよく遊ばしてもらうようになって。僕は大阪の面白いレーベルから出せたらええなーと思うようになってて、打ち上げか打ち合わせかで森さんと飲んでる時に「アルバムリリースさせてください!」とお願いしたこと覚えてます。森さんも「相思相愛っしょ!」と引き受けていただけたので、本当に感無量でした。neco眠るを教えてくれた当時のガールフレンドは看護師になっていました。感謝。
看護師っていいですよね。エロいです。そもそもチャーケンくんが音楽にはまるきっかけになった、原体験はどんなものだったのですか?
チャーケン:ラジオがずっとかかってる家で育ちまして、FM802やFM COCOROなど関西のラジオをよく聴いてました。その延長でスペースシャワーTVやMTVを観始めて、BEAT CRUSADERSのヒダカさんやYSIGのサイトウさんに憧れるようになってました笑。それとは別に、中3か高1くらいの時に東京のthattaというバンドを観に行って、とてつもないデカい音でライブをしていて度肝を抜かれました。そのバンドがハシエンダとかファクトリーレコードとかマッドチェスターのことを教えてくれて、The Stone RosesやHappy Mondays、Primal Screamなどその辺りの音楽を聴いていました。そこからガレージロックリバイバルを聴き出してズブズブっと音楽にハマっていきました。音はデカければデカいほどいいと思っていました。大学に入ってから角田くんに教えてもらったり、そこから掘り出した音楽も自分にとって影響が大きいです。
チャーケンくんは友達のバンドも多いと思うのですが、特にシンパシーを感じるバンドはいらっしゃいますか?
チャーケン:やはり同世代でよく一緒にいるTHE FULL TEENZやSeussとかは感覚が近いですね。そろそろ帰りたない?とか、お腹空かへん?とかそういう感覚が笑。あとnever young beachの安倍くんですね。彼は普段はすごいお調子者というか、僕の実家の受話器に生ケツをこすりつけるような男ですが、そんなオチャメな一面もありつつ自分たちが音楽を楽しみずっと続けていくための努力は惜しまないというはっきりした一面も持ってる所がとても共感できます。
なるほど。それでは、And Summer Clubのチャーケンくんとして、理想のモデルケースとなるべきバンドはいますか?
チャーケン:ライブはこうでなくっちゃ!と毎回ハッとさせられるバンドはmanchester school≡1択です。あんなにもメンバーみなさんがかっこよくて、絵になるバンドはいないかなと!曲も本当に最高です。僕たちも精進あるのみです。あと、こんがりおんがくや難波ベアーズ周辺のバンドは昔からよく知っていたわけではないのですが、かっこよく面白い人たちがたくさんいて、すごく惹かれるものがあります。自分たちもそういうふうになれたらなあと思っている所存です。 あとシャムキャッツやHomecomingsのような、PAさんやレーベルの人たちと一緒に作品やライブを作り上げていくのもチーム感があっていいなあと思います。]
9月には東京でレコ発も開催されますが、メンツを選んだ基準について教えてください。
チャーケン:あまり基準みたいなものはなくて、「この人たちと一緒にやりたい!やらないかんでしょ!」という気持ちが結実しました。バイキングで餃子、カレー、ピザ、寿司を立て続けに食ってるみたいなイベントになればいいなと思ってます。
個人的には、王舟さんの登場に驚きましたね。car10も王舟さんも繋げる感じが、And Summer Clubの立ち位置を象徴してますね。さて、最近はアジカン後藤さんがフックアップする等、確実に注目が高まっているAnd Summer Clubです。今後の活動の展望を教えてください!
チャーケン:とにかく長く続けれていけたらいいなと思います。メンバーの結婚式とかでライブしたいですね!僕のチョップでウエディングケーキ真っ二つにしたいです!音楽的には今の感じも楽しみつつ、最近自分のルーツではなかった音楽にときめきまくってるので、そういうものもこれからバンドに活かしていければいいなと思います。最後にお世話になってる人たちが山ほどいるのでその人たちに「ええやん?」って言ってもらえるような活動をブリバリしていきます!

 

アルバム出てるよ~

And Summer Club
1st full ALBUM 「HEAVY HAWAII PUNK」

2016.07.06 Release
価格 : ¥1852+税
品番 : DQC-1528/KONG-013
レーベル : こんがりおんがく

[収録曲]
01. God Beach
02. Into the White
03. Spring Flowers
04. Weekend
05. Candy Talking
06. Goodbye Witches
07. Surfer Girl
08. Forever Ghost
09. Wasted Time
10. Go Go
11. Always
12. Out of Blue

Cover Art by 2yang
Recording/Mix by 森雄大(neco眠る)

 

レコ発あるよ~

■2016年8月27日@大阪,SOCORE FACTORY
「And Summer Club “HEAVY HAWAII PUNK” RELEASE PARTY in OSAKA」
OPEN18:00/START18:30
¥2000+1DRINK
▼LIVE
THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADES
manchester school≡
neco眠る
And Summer Club
▼DJ
石井モタコ(オシリペンペンズ)
and more…
▼プレイガイド 7/2(土)一般発売
チケットぴあ(P :302-810 )
ローソンチケット(L :52472 )
e+(先着先行 6/28 12:00-6/30 )
■2016年9月4日@東京,下北沢THREE
「And Summer Club “HEAVY HAWAII PUNK” RELEASE PARTY in TOKYO」
OPEN18:30/START19:00
¥2000+1DRINK
▼LIVE
王舟
car10
seuss
And Summer Club
and more…