Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

Gale boetticher橋本くんインタビュー

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自己嫌太郎ライジング。over head kick girlをキミは覚えているか。綻びさえ美しさに変える激情のソングライティングと歌唱でライブハウスの隅から世界に放たれたそれは奴らへのカウンターパンチにはギリギリ至らなかったものの、心に茨を持つ全てのパンクスに届き、確かな熱情を生んだ。
バンドのフロントマンであった橋本は人混みに流されて変わっていくそれを遠くで叱りつつ、東京の喧騒を離れ出身地である札幌へと帰った。仕事を辞め、作曲も辞め、自堕落な生活の中で見付けた新たなる希望こそ、彼のニューバンドとなるGale boetticher(ゲイルベティカー)だ。
札幌を中心としたライブの好評ぶりは遠く離れた東京にも聞こえてくる。曲もやはり抜群に良いらしい。1日も早い音源のリリースが待たれる中、満を持してimakinn recordsからファースト7インチが発売となる。
over head kick girlで聴く事のできた超サッドなメロディックパンク一辺倒では勿論なく、歪な雑食性とルサンチマンの爆発はパンクファン以外の心もアプローチするに違いない。
永遠に思える自粛の最中、全人類が部屋で膝を抱える今こそ彼の歌はよりリアルに響くことだろう。
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橋本くんが東京から札幌に帰ったのは確か2016年ですよね。

橋本:東京から札幌に帰ったのは2016年の秋頃です。理由としては、メンタル面での不調が大きくて。ほぼ強制送還みたいな形で札幌に帰りました。

札幌に帰ってからはどんな生活を送っていたんですか?

橋本:帰ってから半年間は毎日ボーっとゲームだけしていました笑 本当に無でしたね。
たまに友達に会ったりしてましたけど、自分の目がバキバキ過ぎたらしく恐れられてましたね。久しぶりにお会いした安孫子さん(KiliKiliVilla)にも目がヤバイって爆笑されてました笑

狂人慣れしてる安孫子さんでもビビるって凄いですね笑 メンタルがきついと、他者とのコミュニケーションもかなりしんどくなります。バンドをやりたい、続けたいという気持ちは橋本くんの中にあったんですか?
橋本:またバンドやるべきかは悩んでましたけど、昔に比べると音楽への熱がそれほど無くなっていたのかもしれません。

そこからどう奮起してGale boetticherの結成に至るのでしょうか?

橋本:帰省してから約1年後の2017年冬前くらいから、ちょっとずつ自分が活発になっていきました。
札幌の友達とか先輩とかと呑むようになって、そういう時にバンドやれって結構言われてて。
それで亀山さん(DEAD FISH BOYS)とアキトチ(the sleeping aides and razorblades)と呑んだ時、ふたりと色々話して新しくバンドを組む決心をしました。その場でアキトチにベースもお願いして。

over head kick girlの方をガンガンやるって選択肢はなかったんですか?

橋本:その選択肢も最初はあったんですけど、メンバーのみんなが今組んでるバンドがうまくいってるし、邪魔もしたくなかったんですよね。

なるほど。Gale boetticherをやる上での青写真はあったのでしょうか?

橋本:いえ、なかったです笑 自分自身好みとかやりたいことが切り替わるスパンがめちゃ早いので、曲を作ってても統一感がまったくないのが悩みどころではあります。

Gale boetticherサウンドの中心はやはりサッドメロディックパンクだと思うんですよ。そこに様々なサウンドの要素が注入され、突き当たり多い山道的な展開が施され、橋本くん節としかいえないパンクロックに仕上がっているんですよね。
曲は原型を橋本くんが決めて、スタジオで煮詰めるスタイルですか?

橋本:マジでサッドにしようと言う意識は皆無なんですけど、なんか最終的に変な感じになっちゃうんですよね笑 理路整然としない感じが性格出てるなーと思います。作曲は、自分がめちゃめちゃ難産型になってしまったので、自分で作ってパッと出来た原型をみんなとスタジオで合わせて、それを持ち帰ってまた考えてスタジオで合わせるの繰り返しみたいな感じですね。

最近over head kick girlのアルバムを聴き直してるんですが、超やられてるんです。展開の面白さとかメロディの良さとか全部初期衝動でぶっ潰して疾走しちゃう感じ。あれは歳を重ねるとなかなか出せないかもですよね。

橋本:自分でも今聴くと、よくこんなの思いつくなと思ったりする時あります笑 今はあの頃みたいには曲が出来なくて、歳とってからはどんな風に曲作ってくべきなんだろうって結構考えます。

なるほど。どんなバンドや音楽からインスピレーションを受けてるんですか?

橋本:今の好みはLa Vida Es Un Musというレーベル界隈の現行のハードコアバンドですね。あといまだにちゃんとdead broke records 、drunken sailorあたりは追ってます。バンドへの影響という面ではこの辺のレーベルは結構あると思います。

Gale boetticherという風変わりなバンド名の由来についても教えてください。

橋本:バンド名については、アキトチと二人で話し合って決めました。本当はXoて書いて糞って呼ばせるバンド名が良かったんですけど、アキトチが全拒否したので笑 2人の共通項的なの探していたら、Breaking badっていう海外ドラマがお互い好きなことに気付いて。Gale boetticherはそこに出てくる科学者の名前なんですよ。で、拝借しました。なので、エゴサすると博士の方ばかりヒットして全然僕らの情報に当たらなくて。バンド名変えたいっていつも思ってます笑

アキトチさん以外のメンバーについても教えてください。

橋本:当初は3ピースでやってて、ドラムはのぶお(Nobody Celebrates My Birthday)にやってもらっていました。今は佐藤くん(The Roofdogs)がドラム叩いてくれてます。ギターはハットリ(The Roofdogs)という奴に弾いてもらってます。そもそも自分がギター下手過ぎて、曲作っても全然良い感じにならなくて。アキトチ経由でギターのハットリを勧誘した感じです。

imakinn recordsからリリースに至る経緯はいかがでしょう?

橋本:imakinn recordsから出しているcontrolが札幌に来た時に、レーベルオーナーのイマキンさんも一緒に札幌に来ていまして。ちょうどそのタイミングで自分たちも自主から出す予定で音源を録っていて、打ち上げでイマキンさんにその話をしたんです。それがきっかけになり、imakinn recordsからリリースする運びになりました。まあ、僕がだらしなくて録音に半年くらいかかりましたが‥泣

録音については当初から3曲入りを目指していたんでしょうか?

橋本:レコーディング時点では7曲くらいあって、選定基準については単純に自分が好きな順で決めました。

特にA面は曲の繋がり含めて最高だと思います。今回のリリースは何気に橋本くんにとって初の7インチですよね。

橋本:やっと7インチ童貞喪失できました笑 仕上がりも自分自身の反省点とかは結構あるのですが、次への宿題という感じです。せっかくのレコードなので、デザインもこだわりました。

アートワークについても教えてください。

橋本:アートワークに関しては、knapsackというバンドのアルバムみたいな雰囲気を目指していたんです。そしたらイマキンさんがOffice Voidsのゆうまさんに依頼をかけてくれて。ジャケのイメージも「物塗れの部屋」とだけ伝えたら、めちゃくちゃ最高な感じで仕上げていただけました。
ラベルも我々に似つかわしくないほどポップで最高です。

早く現物欲しいです。3枚くらい買います。アルバムの構想は既にあったりするんですか?

橋本:バチバチに曲が出来たらアルバム出してみたいなと言う気持ちはあります。
それよりも、まだまだ自分のダサい曲をどんどん淘汰していかないとダメですね。いかんせん難産タイプなので悩ましいところではあります。追い詰められてからやっといい感じに思いついたりするタイプなので、アルバムのリリース予定を先に立てちゃった方が曲は出来ていく気はするんですけど笑

バチバチのアルバム超楽しみにしてます。最後に、Gale boetticherは橋本くん自身の生活やマインドにどんな影響を与えていると思いますか?

橋本:そうですね、生活自体は変化はそこまでなくて、またレコードを結構買うようになったくらいなんですけど、気持ちの面ではバンドをやっていることで自尊心を保てている部分はあります。
まだまだ性格は陰湿で嫌な感じなので、明るい中年おじさんになれるまではバンド続けようと思います!
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