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Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

スカート”ニュー グッド タイム ミュージック”と私

先日リリースされました、スカート.a.k.a.澤部渡のニューアルバム”ニュー グッド タイム ミュージック”です!
本作は恒例のCOMITIA出品作品であり、一部レコ屋限定流通のアルバム。また、プレス盤ではなくCD‐Rであることからも、ナンバリングされた正式なオリジナルアルバムではありません(多分)。スカート初の弾き語りアルバムであり、大のスカートファンである僕待望の1枚ですな。
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なにから記そう、えっと、今更説明不要ではあるんだが、近年のジャパニーズ インディー ポップ シーンというカテゴリーがあるとして、そこにはceroやらミツメやらトリプルファイヤーやら昆虫キッズやらalfred beach sandalやらカメラ=万年筆やら柴田聡子やら倉内太やら失敗しない生き方やらなつやすみバンドやらayUtokiOやら森は生きているやら、ざっと思い付くだけでとんでもない才能がゴロゴロいるとして。
スカートは、間違いなくこのカテゴリーをレペゼンする存在であるし、これから何年も何十年もマイペースに音楽を作っては多くのリスナーの人生を少しだけ豊かなものにしていくんだと思う。彼には才能がある。これから記すのはそういう話だ。それだけでは済まない話だ。
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世の中には、騒音というものが存在する。
パチンコ屋の真ん中、通過列車を待つ踏切、銀杏BOYZのライブ盤、なかなか通りすぎないバイクの集団。
日常のあらゆる場面で僕らは騒音に出会い、決して聞き流すことのできないそれらと対峙しなくてはならない。
スカートの音楽はその逆だ。騒音の逆。聞き流すことができてしまうのだ。いたって容易に。それは決してネガティブなことではない。実に気持ちよく耳に入り込み、ゆっくりと脳に染み込んでいく。BGMとしての機能性は、音楽に課せられた重要な役割のひとつだ。
この異常な耳障りの良さ、聞きやすさはスカートの言葉によるものが大きいと感じる。
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彼の言葉は特定のイメージに縛られることなく、具体的な景色を思い起こさせるものではない。また、時代を特定するようなトピックや単語のチョイスもない。少なくとも僕は”おばけのピアノ”や”夜のめじるし”から特定のイメージを得ることはできない。意味のありそうで意味のない、使いなれた単語を繋げ言葉に重みを加えない妙味。彼は天然でそいつを出している。
そんな歌詞を空気とブレンドする彼の声、歌。鈴木慶一直系と例えていいだろう、巻き舌で粘りのある艶っぽい声。彼の言葉に妙な説得力や引っ掛かりを持たせることなく、曲に軽やかさをプラスする。
新しいことはなにひとつやっていないし、やろうともしていない。フォーマットもそうだ。ギター、ベース、ドラムス、キーボード、歌。実にシンプル極まりなく、特にテクニカルなフレーズが使われたり、ギターがオーバーダビングされたり、練り上げられたリズムパターンが組まれることもない。過去の先人達が何度も使い古し、履き潰し、しゃぶりつくしたポップスに再び命を吹き込んでいる。
なにひとつ奇をてらわないスカートの音楽が、どうしてこうも胸を打つのか。それはそう、澤部渡のソングライティング最大の謎である。
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