読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

the promise ring"wood/water"と私

Cap'n jazzという大樹があった。もちろん木の話ではない、音楽の話だ。
Cap'n jazzは1989年にアメリカのシカゴで結成されたパンクバンドであり、メンバーは全員十代のガキだった。
f:id:ongakushitz:20140104225839j:plain
彼らは初期衝動のままに楽器を持ち、未熟故にずれたままのリズムでテンションの高い曲をやっていた。下手くそだったが捻れながら青く疾走する彼らの曲は猛烈にかっこよく、世界中の好事家たちの興味を集めた。
なし崩し的に解散後、メンバーは様々なバンドに枝分かれする。joan of arc、owen、make believe、owls、american football…。様々な方向に枝分かれした先のひとつが、the promise ringである。cap'n jazzではギターだったdavey von bohlenが結成した。
f:id:ongakushitz:20140104231014j:plain
the promise ring

今回紹介するのは彼らの4thアルバム、"wood/water"だ。
このアルバムを発表するまで、彼らは所謂emoと呼ばれるシーンにカテゴライズされていた(発表した後もか)。定義は極めて曖昧だが、the get up kids
f:id:ongakushitz:20140104231615j:plain

Jimmy eat world
f:id:ongakushitz:20140104231650j:plain

Mineral
f:id:ongakushitz:20140104231711j:plain
等本当にたくさんのバンドがemoと呼ばれていた。僕も学生時代一時期熱に浮かされたようにemoばかり聴いていた(elliott最高。texas is the reason愛してる!braidヤバい。Starmarket神!get up kids世界で一番好き!)
おそらく、80年代のDISCHORD周辺のポストHCバンドをルーツに持つバンドをemoとカテゴライズしたが徐々に範囲が拡張し曖昧になっていたのかな。
まあpromise ringもそんな渦中にいたわけだが、彼らの音楽は周囲と一線を画すわけだ。とにかくね、ヘロヘロ。何がって歌が。デイビーの歌が。
疾走するビートに荒々しいギターワーク、パンクマナーに沿った造りではあるんだけど、そこにデイビーの歌が乗ることで一変。音程を外しそうになりながら、時に外しながら叫びながらもメロディラインは大変に美しく、懸命な歌唱も相成りどうしようもなく泣ける。
個人的には、the pastelsやthe vaselines等、グラスゴーギターポップ/アノラックにもやんわり通じていたと感じる。
f:id:ongakushitz:20140104225048j:plain
the pastels

f:id:ongakushitz:20140104225328j:plain
the vaselines

彼らはもっとヘロヘロか。下手くそな歌大好き。

そんなpromise ringだが、3rdアルバムリリース後、デイビーに脳腫瘍が発覚、生死の境をさ迷い、4回の大手術を終えた後製作されたのが本作"wood/water"。2002年のこと。
f:id:ongakushitz:20140105100409j:plain

ここに納められた楽曲は、所謂emoのイメージ等余裕で飛び越える素晴らしい内容であった。
歌声は優しく、エフェクトで美しく歪むが、メロディのとてつもない美しさは寸分の狂いなく空気に混じる。
緩やかにグルーヴを刻むリズムの上にシンセ、ムーグ、アコースティックギター、ストリングス、コーラスが有機的に絡むトラック。
何から何まで従来の彼らとは別物であったが、聴いた事のない音楽が確かに鳴っていた。

僕はこのアルバムを福島県の小さなレコード屋で手に入れた。高校3年生の秋で、祖父の通夜の日だった。
地元である栃木県に帰る車の中、僕は買ったばかりの本作をイヤホンで聴いた。
東北自動車道から覗く山々が夕焼けに照らされ、真っ赤に燃えているようだった。
トンネルは長く、この瞬間が永遠に続くのかもしれない と心底思った。
"Say goodbye good"という曲が終盤に配置されている。the beatlesの"hey jude"を思わせる大曲なのだ。弾き語りで始まり、後半へ進むにつれ音色は増え、遂にゴスペル風の分厚いコーラスで曲は核心へと走る。メロディの素晴らしさも相成り、大変に感動的な曲になっている。
まるでいなくなってしまった祖父へ捧げられたように感じてしまい、涙が出た。
f:id:ongakushitz:20140105104118j:plain
f:id:ongakushitz:20140105104134j:plain
あの日から僕は本作へ並々ならぬ愛を注ぐようになり、友人へ進めるも ColdplayRADIOHEADに間違えられ一時期叙情的なUKロック嫌いに走ることになるのであった…。