Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

【swim! swim!epリリース!】THE FULL TEENZ伊藤くんインタビュー

京都が生んだ新世代気鋭インディポップバンド、THE FULL TEENZ(フルティーンズ)が、なんと2014年12月24日にニューカセットテープをリリースします!

リリースはI HATE SMOKE TAPES。新しい時代の空気を的確に掴み取り、この国の新しいインディポップミュージックの密やかな楽しみ方を提示する同レーベルより、今年リリースした1stアルバム『魔法はとけた』で全く新しいパンクサウンドを手に入れたTHE FULL TEENZが音源をリリースするということは最早必然であるように思います。
今回はTHE FULL TEENZのメインソングライターである伊藤くんに話を聞くことに成功しました。
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(写真真ん中が伊藤くん)
本題に移る前に、まずは今年リリースされ著者も大いに感銘を受けた彼らの1stアルバムをレコメンドさせてください。

THE FULL TEENZ『魔法はとけた』
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THE FULL TEENZ 「Sea Breeze」MV - YouTube

”美しさ on baby ポケットの中で魔法をかけて”呟くように歌ったのは小沢健二であった。人生の美しさについて彼は願いを込めて歌にしたためて、うたかたの日々をおくる若者たちの生活を少しだけ豊かなものにした。優れたポップソングとは、決してリスナーの人生を大きく揺り動かすことをせず、日々を少しだけ豊かで美しいものに変えることのみを果たすのだ。THE FULL TEENZという奇妙な名前を持つ京都の若者たちが試行錯誤の上作り上げた1枚のアルバムは、そうしたポップソングの持つ役割と責任を正しく引き受ける、素晴らしいポップソングで構成されたアルバムである。シティポップとメロディックパンクを同列に配合させながら、そこからはみ出す雑多な音楽的要素、びっしりと敷かれたリヴァーヴの海。まるで海辺の喫茶店で頼んだサイダー瓶のしずくのように、甘いノスタルジーの波が僕らを日々の向こうへ押し流す。それは窓から射す光の屈折が音楽によって歪む瞬間である。現行USインディーとの同時代性を帯びながら、アルバムは後半になるにつれそのふり幅を広げていき、あっという間に終わる。今の彼らにしか作ることのできない8のポップソング、音楽の魔法がとけることはないのだ。

ということで、音楽の魔法をさらに加速させるブランニューカセットテープが遂にリリース。
特設サイトはこちら(新曲聴けます!ジャケかわいい!)
http://thefullteenz-swim-swim.tumblr.com/

購入はこちらから!(soulmineさん いつもお世話になってます!)
http://soulmine.jp/?pid=84223858

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『THE FULL TEENZの音楽に影響を与えた5枚のレコード』『伊藤くんの人生を変えた5枚のレコード』合計10枚のレコードの逸話を主軸に置いたインタビュー、若干21歳ながら、その豊かな感受性と鋭い審美眼で選ばれた10枚のレコードとそれに纏わるいくつかの話。それではどうぞ。


宅イチロー(以下:宅):それではインタビューをはじめます!宜しくお願いします!

伊藤くん(以下:伊):宜しくお願いします!

宅:今回は、『THE FULL TEENZの音楽に影響を与えた5枚のレコード』と『伊藤くんの人生を変えた5枚のレコード』合計10枚のレコードについてのお話を聞いていきながら、THE FULL TEENZの音楽を紐解いていけたら、と思います。

伊:ありがとうございます。じゃあ、まずは『THE FULL TEENZの音楽に影響を与えた5枚のレコード』を順番にお話します。まずは、こちらです。

かせきさいだぁΞ『VERY BEST OF かせきさいだぁ』
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伊:直接的に手法を真似た事は全く無いのですが、ポップであることの理想形というか、音源自体の持つ雰囲気にうっとりしてしまいます。作曲の時等、いつもこちらを聴いては背筋をピンとさせてもらっております。ここ数年で一番聴いてるかもしれません。彼のアルバム全て良いのですが、一枚選ぶとなると、美味しいトコ取りしているベスト盤を選んでしまいますね。

宅:彼の1stとか、はっぴいえんどからの文脈も感じ取ることができて最高ですよね。個人的な思いなのですが、THE FULL TEENZの音楽からはシティポップと現行USインディをパンクでアウトプットしたような風合いを感じていたんです。なので、かせきさんの持つ人懐っこくて洗練され過ぎてないシティポップ感はTHE FULL TEENZに直結するように感じます。

伊:ありがとうございます。歌詞も文学からの引用をしていたり、かせきさんの知的な側面にも憧れますね。

literature『Arab spring』
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宅:おー、THE FULL TEENZの持つ絶妙なハイブリット感は、確かにliteratureに通じますね。

伊:僕は今21歳なのですが、高校生の頃に背伸びして現行の海外のインディーものを色々聴いていた時期がありまして、その頃にWashed outやteen dazeにハマるんですけど、その後自分の中であまりピンとくるインディーバンドが見つからなくなってしまったんです。しばらく経ってから、菅沼くん(full teenzベース)の家でliteratureを聴かせてもらって衝撃を受けました。あまりパンクとかインディーとかカテゴライズはよく分からないんですが、あえて使うならば、パンクと現行インディーの理想的な融合だと思ったんです。特定のシーンやカテゴライズに拘った活動の格好良さも勿論分かるのですが、full teenzは色々な環境で活動したいと思っていて、まさにliteratureはどんな環境でも受け入れられる音楽だと思います。僕らもそうありたいです。

宅:THE FULL TEENZの『魔法はとけた』は、色んなタイプのリスナーから歓迎を受けてましたよ。


car10『S/T』

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伊:snuffy smilesから出たcar10の7インチです。

宅:同世代ですよね?少し意外なチョイスです。これから足利にライブ観に行きますよ。

伊:car10は昔のデモの頃のイメージが強かったので、これを聴いた時、僕の知っているcar10とは違うcar10がいる…と思ってしまいましたね笑 短い曲の中にカッコ良すぎるポイントが詰まりまくってて、本当に勘弁してほしかったですね笑

宅:サウンドフェクトの懲り具合が明らかに狂ってます笑 car10とは昔から交流があるんですか?

伊:car10は2年半くらい前に初めて対バンしてから、ちょくちょく一緒にやったりしてましたね。

宅:僕はcar10にもfull teenzにも、種違いの兄弟感というか、絶妙な同時代性をビンビン感じてるんです。

伊:ありがとうございます。確かに、car10もそうなのですが、北海道のnot wonkやthe sleeping aides and razorblades等ほぼ同世代で物凄くカッコいい音楽を作っている友達が周りにたくさんいるという事は、恐怖でもあり、大変恵まれているということでもあります。いつも良い刺激を受けていますね。

宅:あらゆるポップミュージックの交配を繰り返しながら、サウンドエフェクトや空気感で海外のインディとも繋がる文脈を作っていたり、本当に日本の若いインディバンドは面白いです。近年は東京よりも地方や郊外のバンドの方が気になりますね。

manchester schoolΞ『demo』
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宅:THE FULL TEENZは同時代の若いバンドからの影響が多大なんですね。

伊:そうですね、後で詳しくお話しますが、僕らは対バンになったり、直接会って友達になったバンドに刺激を受けることの方が多いかもしれません。僕は高校生まで大阪に住んでいたのですが、たまにmanchester schoolΞを観に行ってたんです。彼らはいつ観ても狂ったライブをしていました笑 自分の自転車をライブハウスのステージに持ってきてぶち壊したり、マイクを天井にぶつけて拾う謎の行為を繰り返したり、ハチャメチャでしたね。それでいて曲はポップでカッコ良く、僕にとってのヒーローだったんです。ハードコアパンクの速さでこんなにポップな曲ができるのか、と衝撃を受けましたし、バンドの姿勢や人柄も含めて本当に大好きです。

宅:狂ったステージングに反比例する曲の良さ、ですね笑 デモを出してた頃の彼らは伊藤くんの仰る通りハードコアパンクソングが多かったので、full teenzの『夏の思い出』に代表されるファストチューンに彼らからの影響が顕著であるように思います。

伊:先日、SEVENTEEN AGAiNのヤブさんにも同じご指摘を受けました笑

Various artists『生き埋めVA』
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宅:!?

伊:自分と仲間達で運営している生き埋めレコーズのコンピレーションアルバムですね。

宅:自分達でコンパイルした作品に自分達自身が多大な影響を受けたということですか?

伊:そうです!むしろ、影響を受けるような大好きなバンド達だからこそコンパイルしてリリースしたんです。僕はインタビューでしか考えている事や姿勢を知る事のできない昔の人や、直接話せない有名な人よりも、対バンしたりライブハウスで話したりした人達から刺激を受けることが多いんです。特に、このVAに参加してもらったバンドは各々の芯がしっかりとあって、ルーツやそれをアウトプットする活動の仕方も本当に尊敬できます。

宅:なるほど、とても納得できます。自分で見て聴いて話して遊んだ人や音楽からの経験は、音源や文献等の資料からの情報に勝る、と。このお話を聞けただけでも、今日インタビューができて良かったです。では、続きまして『伊藤くんの人生を変えた5枚のレコード』についてお話していきましょう!

銀杏boyz『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』
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宅:これ出た時、伊藤くんまだ小学生とかですよね?

伊:そうです!小学生でしたね。僕が中学生の頃、兄とi-podを共有していたんです。そこで初めて銀杏boyzと出会いました。中学生の頃は、夜更かしや朝まで起きている事もしないような真面目な少年だったんですが、夏休みの夜にi-podをイヤホンで聴きながら眠りにつこうと思っていると、突然バカでかい音で銀杏boyzが流れてきたんです。最初は、こんなうるさい音楽なんてあるのか とビックリしました。一通り聴いてるうちにどんどんのめり込んでいって、その夜だけで何度も何度も繰り返し狂ったように聴いてしまい、気付けば朝になっていました。人生初のオールナイトが、銀杏boyzと出会った夜です。

宅:刺激的な出会い方ですねー笑 そもそも兄のi-podという存在が、伊藤くんの音楽の原体験なのではないでしょうか?中学生で銀杏boyz聴いたら文字通り人生変わってしまいそうですね。

伊:僕の音楽の原体験は、確かに兄の影響が大きかったように思います。ellegardenやhide with spread beaver等も教えてもらいました笑

Fruity『songs:complete discography』
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宅:『魔法はとけた』からもfruityからの影響の一端を感じ取ることができます。

伊:きっかけは忘れてしまいましたが、確か中学生の頃に出会ったんだと思います。SCHOOLJACKETSもYOUR SONG IS GOODもそうですが、JxJXさんのセンスがあり得ないほど最高で、ずっとカッコ良くて。本当に凄いと思ってます。

宅:異ジャンルを租借してパンクに落とし込むセンスとか、マネしたくてもマネできないセンスですよね。また、Fruityにはあらゆる音楽への入り口が用意されている。

伊:そうですね、音楽にめちゃめちゃ精通している人が作ってるって一聴して分かりますもんね。雑多な要素を租借してアウトプットする点においては、それをどうやたらカッコ良く実現できるかをTHE FULL TEENZにおいても常に考えています。

宅:THE FULL TEENZの音楽からも色々な音楽への入り口が見え隠れしていて、そういう意味では非常にFruity的であると思います。

weezer『pinkerton』
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伊:普通のエディションも良いのですが、後々出たシングルのB面等をボーナストラックに加えたデラックスエディションが最高過ぎます。

宅:you gave your love to me softly!!!!

伊:それです!!

宅:伊藤くん絶対好きだと思ってました笑 というか、『sea breeze』の夕焼け疾走感は完全にそれです!笑

伊:この前、フジロッ久(仮)の藤原さんが仰っていたのですが、ただひたすらに良いメロディをどのように聴かせるかという事が重要で、結局僕らのようなバンドはそれに尽きると思っているんです。weezerのpinkertonはそれがパンクのテンションでもって完璧に実現されているように感じます

宅:良い話だな~。

Various artists『Make it alright!』
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宅:i hate smoke recordsが毎年末に出すコンピレーション、こちらは2009年リリースのものですね。

伊:これは初めて購入したi hate smoke recordsのコンピなのです。SEVENTEEN AGAiNくらいしか知ってるバンドがいない状態で買ったのですが、聴いて本当にびっくりしました。良い意味でハチャメチャな演奏をしているバンドしか入っていなくて、しかもみんな曲が短い笑 当時、既にTHE FULL TEENZはコピーバンドとして活動しいたのですが、i hate smoke recordsのコンピに入ってるようなバンドになりたいと思い、オリジナルの曲を作り始めたんです

宅:今回i hate smoke tapesから新譜がリリースされますが、そのお話がきた時いかがでした?

伊:大学の講義中だったのですが、震えましたね笑 今年の6月にSEVENTEEN AGAiNを京都に呼んでライブを企画したんです。正直に言うと、僕らは京都で活動していることもあって、SEVENTEEN AGAiNと対バンする機会も1年に1度あるか無いかくらいだし、大澤さんと話す機会もなかなか無いので、ダメ元で僕らから声をかけたんです。レコーディングするので、i hate smoke recordsからリリースしてもらえませんか?と。その時の話を覚えてくださったみたいで、今回のリリースが決まりました。

宅:なるほど。しかも今最も勢いのあるテープフォーマットでのリリースです。

伊:BURGER RECORDS等のテープを好んで買っているので、すごく嬉しいですね。なぜ今回の新譜を生き埋めレコーズではなくi hate smoke recordsから出したのか?と疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。何故今回どうしてもi hate smoke recordsからリリースしたかったのか、それは自分たちの活動だけでは届かないところまで知ってもらえる可能性を信じたからです。結果として、生き埋めレコーズや僕たちが京都でやっている事を知ってもらえる機会になれば最高ですね。

wienners『cult pop japan』
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伊:wiennersもi hate smoke records関連で名前を知ったのですが、とにかく速くて短い曲の中にこれでもかとポップなメロディと展開が詰め込まれていて衝撃を受けました。特にこの1stアルバムの頃のwiennersは短い曲を矢継ぎ早に連発するスタイルで、本当に刺激的です。ショートチューンバンドは大概ファストコア的なアプローチになると思うのですが、wiennersは1分以内の曲にイントロAメロBメロサビアウトロ全てがありました。僕達も特に意識して曲を短くしているわけではないのですが、初見の方がライブを観ていて飽きない尺を意識すると、どんどん曲が短くなってしまって笑 その短さの中に展開とメロディをいかに上手に組み込むかを考えています。

宅:ある意味、Fruity的方法論を極限まで応用したバンドがwiennersですもんね。THE FULL TEENZのショートチューンもきちっと展開しながらポップで後味が良く、Fruityやwiennersの方法論を更新しているように思いました。

伊:Fruityで培われた感覚を持った方(玉屋2060%)が、でんぱ組.incのような武道館でライブをするようなアイドルと共鳴してる事実、冷静に考えると凄い事です笑

宅:でんぱ組.incもFruityの隔世遺伝ってことになりますからね。伊藤くん、そろそろ時間なので終わりになりますが、最後に何でもいいんで一言ください!

伊:いつも面白い事を考えているので、少しでも気にかけてもらえると嬉しいです。また、今回リリースするテープはダウンロードコードもついていますので、テープを聴けない方も是非!ありがとうございました!

宅:最後に、レコ発イベントの告知です。伊藤くん、ありがとうございました。


2014年12月27日(土)@下北沢SHELTER
『I HATE SMOKE RECORDS×生き埋めレコーズ presents.』

2015年3月7日(土)@二条nano
『THE FULLTEENZ presents.』

※詳細は追って特設ページで!皆さんで行きましょう!!!

Not wonkとthe sleeping aides and razorbladesの新作に寄せて

10代後半~20代前半の若者によるインディーミュージックに、沢山のエポックが生まれております。
京都のhomecomings、hi how are you?、fullteenz。
名古屋のmilk、栃木のcar10、北海道のnot wonk、the sleeping aides and razorblades等々。
あらゆる文化の中心とされた東京を飛び越え、かといってヒップホップのように過剰なローカリズムを誇示し 東京をパブリックエネミーとすることなく、"生まれ育った場所で 自然体に"オリジナリティ溢れる音楽を鳴らす若いインディーバンド達の登場は、日本の音楽シーンにおける新しい流れの到来を予感させるものです。
あらゆるインフラが整備され、良質な個人ディストロが根付き、都心部に点在するマニアックなレコードショップもほとんどのところがメールオーダーに対応し、3日もあれば聴きたい音源が手元に到着します。YouTubeで新しい音楽を発見した翌日には音源が手元に届くわけです。リスナーとしても非常に恵まれた時代の空気を胸一杯に吸い込みながら、前述したバンドの中でも特に贔屓にして止まないのが北海道のnot wonkとthe sleeping aides and razorbladesです。両者のショートインタビューは当ブログにおいて、ヤブソンインタビューに次ぐヒット記事となりました。ありがたいです。
今秋、そんな両者が同時期に新作をリリース致しました。今回はそれらについて語る言葉を持ちたいと思います。才能溢れる若きインディペンデントミュージシャンに敬意を込めまして。

Not wonk "Fuck it dog, life is too sugarless"
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I hate smoke tapesリリース第3弾。
彼らを指して『青い』だとか『若い』という形容を使われることは多い。実際僕もそうだったし、彼らを青いとも若いとも思ってる。その形容は本作においても有効だろう。うら若き10代の焦燥を鼻歌に乗せたようなメロディ、時に咆哮も辞さない歌唱、どこまでも加速するバンドアンサンブル。若い。だが、それだけじゃないし、若さや青さや到底収まりのつかないような得体の知れぬポップセンスが本作には渦巻いているのだ。1曲目『Die young for the earth』を聴いてもらいたい。前作までの楽曲(本作の②と⑤、そして④)に現れていた複雑な曲の展開を2倍速でプレイしているかのような、イントロから怒涛の勢いで疾走するキラートラックである。僕はこんなポップソング聴いた事がない。彼らの愛聴するバンドの名前を挙げるまでもなく、○○っぽいフレーズや、~~みたいなメロディ等と引用や参照元を大声で語り合う必要もない。Mega city fourもSenseless thingsもbroccoliも関係ないのだ。Not wonkでしか聴くことのできないポップソングが、常軌を逸した瞬発力で生み出されたという事。既にファーストプレス分は完売、レーベル在庫もなくセカンドプレス待ち。納められた楽曲そのままの勢いで駆け上がるNot wonk最初の到達点。lifeはtoo sugarlessだから、このままどこまでも行ってしまって!
http://soulmine.jp/?pid=80943128

The sleeping aides and razorblades"Forget me"
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白浜くんのソングライティングにおける膨大な量のポップソングからの影響と参照、その配分と用法の巧みさについてはもはや種の無い手品であり、魔法のようである。
そのイメージソースは幾多に重ねられたファズの向こう側で炎天下のアイスクリームのように溶け合わさってしまい、音楽への愛情でドロドロになったポップソングが妖しい光を放つだけなのだ。
前作"Dub narcotic fanclub"で獲得した『ポップソング』としての強度及び普遍性は、白浜くんのソングライターとしての成熟を予感させた。成熟という言葉には語弊があるのかもしれないが、彼らは彼らの敬愛するexploding heartsやsmith westernsのフォロワー枠からとっくに逸脱しており、あらゆるソングライターが羨望の目を向けるであろうポップソングを量産する季節に突入しているのだ。前作から半年足らずでの7"リリースというスピードからも明らかである。パワーポップとしてもポップパンクとしてもギターポップとしてもカテゴライズ可能ながら、いずれに括られても大きくはみ出してしまう、魔法のようなポップソング達。その最新型が本作"Forget me"なのだ。誰にも歌うことの叶わなかったメロディが10分の間に何度も登場する。寝苦しい夜にスピーカーからこんなメロディが流れてきたら、それは めくるめく音楽体験の始まり というやつである。
発売日である11/1には既にレーベル在庫残少、ソールドアウトは目前であります。
http://debauchmood.blogspot.jp/2014/09/the-sleeping-aides-razorblades-forget.html?m=1

GOMES THE HITMANは素晴らしい

2014年10月11日。GOMES THE HITMAN7年ぶりとなる復活ライブを吉祥寺スターパインズカフェまで観てきた。正直まだ少しだけ興奮していて、うまく言葉にできないけれども。
17時オープンの会場は既に熱気で包まれていて、キャパシティ限界までチケットを出したのであろう、スペースに余裕が全く無い。整理番号44番で入ったので席は余裕で確保できたが、後ろを見るとスタンディングゾーンは さながら若手人気ロックバンドのライブかのような人口密度。
18時ピッタリで始まった7年ぶりのライブ。客電が落ちた瞬間、一瞬で高揚する感覚は久しぶりである。山田さんは普段あまりライブで着ることのないジャケットを羽織り、少しフォーマルな装いで登場した。メンバーが続々と現れてまず驚いたこと。メンバーのルックスが全然変わっていないのだ。顔や体型はさることながら髪型まで変わっていない。まるで7年前の彼らがそのままタイムスリップしてきたかのような、そんな印象だ。
登場して間髪いれず、ついに1曲目のイントロが鳴らされる。満を持して 7年の時が動き出す瞬間だ。堀越さんがあの曲のイントロを爪弾きだしたその刹那、僕がはじめてGOMES THE HITMANと出会った時から今この時までの、"GOMES THE HITMANの音楽と共に生きた時間"が猛スピードで僕の頭を駆けていき、気付くと涙が止まらなかった。
"楽しいときも悲しいときもイヤホンの奥で鳴ってたあの曲が、CD通りの音階で、しかしながら生きた人間たちの確かな技術と息づかいで 鳴らされている"
満員のフロアも一緒になって横に揺れ、新しい時の始まりを祝福している。おかえりなさいGOMES THE HITMAN
その後もweekendの曲を中心にライブは進行していく。
まるで結成されたばかりの大学生バンドの練習風景を見ているかのような初々しい雰囲気がweekendの瑞々しい曲達の青春性をうまいこと引き出していて、"ベテランバンドが懐古的にファーストアルバムの曲を再現する"という事には全く陥っていなかった。本当に本当に、新人バンドみたいな佇まいで楽しかった。
この日のライブがGOMES THE HITMANの全てを表現してるとは到底思えない。おそらくバンドが一番バンドとしての青春性を帯びた初期からの楽曲を意図的に組んだセットリストだ、再始動のイントロしてはこの上ない響きをもっていた。しかしながら、GOMES THE HITMANというバンドのポテンシャルや懐の深さ、内省的ながら豊潤な音楽性を帯びるmono以降の降り幅はまだまだ体験する余地がある。それはおそらく、11月と12月のライブで実現することだろう。
ごちゃごちゃと書かせていただいたけど、おかえりなさいGOMES THE HITMAN!言いたいことはこれだけっす!
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Number two/Know your rights

パンク この寛厚な言葉に具体性を持たせるとすれば、Number twoの作品ほど適しているものはないだろう。彼らの楽曲に通底したささくれ立つパンクサウンドとポップなメロディセンスは、RamonesやRichard hellから続くパンクの定型を示し、今の時代にアップデートさせたような純度の高い"永遠のティーンエイジソウル"を奏でているからだ。そう、彼らは常に怒っており、問題を提起しており、声をあげている。
パンクとは常に怒れる若者の音楽であり、ひいては怒れる若者のソウルを持った全ての群衆のための音楽であった。
彼らのアティチュードがハッキリと体現された歌詞の一部を抜粋し紹介する。

"みんなキチガイの追いかけっこに夢中なんだ 僕には関係ないけどね みんな自分の利益に狂っちまってる 僕には全く関係ないけどね"(who wants to be young forever)

"僕はアナキストじゃないから 毎日働くし税金だって払うさ 僕はファシストじゃないから 君がどうやったら笑ってくれるのかを考えるんだ 僕は資本主義って苦手だから マクドナルドには行きたくない"(attitude)

"うんざりだ くそ情報社会 たくさんだ 便利は人を馬鹿にする うんざりだ 洗脳薬の流行歌 たくさんだ 戦うときには好きな歌を聴くんだ"(gimmi radical radio)

社会や政治における彼らのポジショニングにおいて僕は語る言葉を持たないが、もしかしたら僕も彼らのエネミーなのかも知れない。僕らは生きていれば社会を切り離すことができず、パンクと社会は切っても切れない腐れ縁である。BPMは加速しギターのノイズが噴煙をあげる。分かることは、彼らの歌に嘘は混じっていないということだ。パンクバンドである。
しかしながら、ハードコアパンクにまで振り切れることなくポップなイメージを決して崩さないソングライティングの巧みさと、ボーカルであるジュニア君の歌の魅力と素晴らしいメロディはその他大勢のパンクバンドには決してたどり着けない境地にあるといっていいと思う。あらゆるパンクのレコードを10000枚聴き漁り、本質だけをピックしたような 古今東西の血が巡ったパンクソングが鳴らされている。
最後にひとつ 個人的な話になり恐縮であるが、2007年頃パンクバンドを組んでいた友人の企画ライブにDJトイレタイムとして出演させていただいた時、同ライブのトリを務めたのが前身バンドを経て結成されたばかりのNumber twoであった。打ち上げで ジュニア君はジャクソン5が大好きだと嬉しそうに話してくれた。ギターの牛君とも西荻やポップパンクについて話したはずだ。僕にとっては貴重な体験であったため よく覚えている。帰り際に出来たばかりだという7曲入りのデモ音源をいただいた。レコード棚の天辺に鎮座しているそいつを久しぶりに聴けば、今回出たアルバムと変わらずピュアなパンクソングで満たされていてとても嬉しくなったのだ。Number twoは最高だよ。

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あの夏 あの海 あのカメラ-aztec camera"high land hard rain"について-

子供の頃、夏休みに福島のおばあちゃん家に出かけることがとても楽しみだった。
おばあちゃんは福島県いわき市に住んでおり、そこは海沿いの街であったことから遊びに行く度に海や川へ連れていってもらえたのだ。
兄弟や従姉とみんなで海へ出かけ、日が暮れるまで遊んだ。あの時の景色や気持ちは今でも鮮明に覚えている。
光が水に溶けて乱反射し水面は輝いた。両手で水をすくってみると、それは指の隙間からすぐに落ちていってしまい、手の中には少しの砂 色や形の無い何かだけが残った。石ころの角が足の裏に少し痛く、僕は足をバタバタさせながら顔を水につけないよう泳ぐ。波が寄せる度に海水が口の中に入り込み、僕はうがいをしながら気の済むまでそこにいて海の中の色や空をずっと見たり、岸の方から聴こえるセミの鳴き声に耳を傾けていたのだ。大したことは微塵も考えていなかった。ただ美しいものを見たり、それに似た気持ちになれるような体験がしたくて、夏の暑い日を選んでは海に連れていってもらったのだ。
十数年が過ぎて、大学生になり東京に住むようになって、福島のおばあちゃん家にも行かなくなって、それより東京で彼女と買い物をしたりセックスをすることばかりにかまけていた頃。幡ヶ谷のブックオフで250円だった本作を僕は見つける。初めて見るのにどこかで見たような気持ちになる不思議な絵画がアルバムジャケットの真ん中に横たわっている。いくら見ても何を表現した絵画なのか分からないし別に分からなくても全く構わないのだが、どこか奇妙な清涼感を放つジャケットに僕は惹かれた。
携帯電話で検索してみると、ネオアコースティックというジャンルの代表的作品として支持されているらしい。レビューに添えられたエバーグリーンという言葉が決定打となり、僕はそいつをレジに持っていったのだ。
それまでの僕はpunkという音楽に心酔しており、70'sから現行のものまで国内外のpunkバンドを聴き漁ってはひとり盛り上がっていたのだ。punkだけでどれだけ聴いただろうか、検討もつかない。幾多のpunkレコードを聴いていくなかで、あることに気が付く。僕はpunkのビートじゃなく、punkのメロディが好きなんだ と。そしてそのメロディはみんなが聴いているようなギターロックやヒップホップじゃ聴く事ができなくて、粗い音質の向こう側で鳴るpunkのレコードでしか聴けなかったのだ。気持ちが入っていて、向こう見ずで、お酒で酔っ払った時みたいに無敵なんだけど、しかしながらひとりぼっちの寂しさや切なさが確かにある。stiff little fingersやasta kaskのメロディはそうだった。このメロディをもっと聴いていたいって思っていたんだ。
Aztec cameraのCDをコンポにセットして再生ボタンを
押した時、僕はとても驚いた。僕の大好きなpunkのメロディだ!って。しかもいつも聴いてるやつみたいにうるさいやつじゃなく、洗練された音の上で鳴っている。多分色々な音楽の要素が入っていて、それらが全てロディの瑞々しい歌の前でキラキラと光り輝くんだ。
聴いてるうちにふと思い出した。幼い頃楽しみだった夏の海のこと。ハッとなった。
Aztec cameraの音の中にはまるで成長をやめ時間が止まってしまったような狂おしいまでの青さがあって、それはポップミュージックとしては致命的に逃避的だ。1度入り込んだら帰ってこれないようなノスタルジーの海が広がっている。
音楽に魔法が備わっているひとつの証明として、初めて聴いた音楽がふいに自分の過去と繋がってしまう瞬間がある。ただの空気の振動でしかない音の連なりが自らの記憶にまで作用するということ。僕はaztec cameraでそいつを体験してしまい、思い出が音楽に変わる瞬間に立ち会った。ロディのギターソロはあの夏の海の中で聴いたセミの鳴き声みたいにいじらしくって、とても美しい。大したことじゃない、ただ美しいものを見たり、それに似た気持ちになれるような体験をaztec cameraがもたらしたというだけの話。たぶん一生聴くんだと思う。
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夕暮れーしょん

iPodを壊してしまった。
一見よくある日常の損失に思えるかもしれないが、僕の心身に与えた被害は甚大だ。
僕は2台のiPodクラシックを容量いっぱいまで使っており、そろそろ3台目の購入を検討していたところであった。
実に10000枚以上に及ぶ僕の所有音源のほとんどが2台のiPodに収められており、こいつがあれば僕はいつでも実家のレコード棚にアクセスできたわけだ。愛していたのだ、間違いなく、2台のiPodを。

それは日曜日のことだった。自宅で夕食を支度している嫁を尻目に、僕はTSUTAYAへ向かうため車を運転していた。無論平日観賞するためのアダルトビデオを調達するためである。スマホではなくテレビの大画面で見るアダルトビデオを目一杯享受するために。車内ではiPodをステレオに繋ぎ、音楽をかけていた。このiPodを1号としよう。確かかけていたのはMan is the bastard!だったと思う。肩を揺らし道を歩く女子高生に目線を送ったり何だりをしながらTSUTAYAを目指していたのだ。
そうしてふぬけた顔した僕を運転席に乗せたN Boxは快楽の根城TSUTAYAにたどり着く。音楽を止めiPodを取り外し画面に目をやった瞬間、僕は凍りついた。
"ミュージックがありません"
確かこんな文言だったと思う。数万曲は入っていたはずだ、1号の音楽データが消えている…。あまりに突然の出来事に僕は声が出なかった。ちょっと待て、僕は車のステレオでiPodを聴き、それを外すという何百回繰り返した動作を行っただけだ。ほんの数秒前まで僕はMan is the bastard!を聴きながら"やっぱノイズコアってシラフじゃ聴けねえや"なんて吹かしてたはずである。思わず崩れ落ちる僕を嘲笑うかのように店内からはきゃりーぱみゅぱみゅが流れてくるのだ。
"もったいない もったいない ほら一緒に もったいないとらんど!"
1号はいつだってそばにいてくれたのだ。楽しい時も 悲しい時も 仕事に行くのが嫌で駅前の広場で時間をつぶしていた時や 好きな子と大洗の海へ行った帰りに真岡のデパートの屋上で花火を見た時や はじめて降神を聴いて志人のフローを真似して歩き通行人に避けられた時や Lolasのカバーアルバムを探して高円寺から祖師ヶ谷大蔵まで歩いた時も知らない女の子から人違いでチョコレートをもらった時も 僕のポケットの中からいかした音楽をチョイスしては日常を彩ってくれたのだ。実に5年以上の長きに渡る付き合いだった。
僕は半年ほど前に実家のパソコンを壊しており、iTunesに保存していた6万曲のデータを消失させていたため、1号に入れていた4万曲近いデータ(うち1万曲分は曲尺1分以内のショートチューンだ)を再生するためには、実家のレコード棚に眠る膨大な音源達を再びiTunesに入れ直さなくてはならない。社会人として家庭を持ち1週間のうち60時間を会社で過ごす身として、それは不可能に近い。
まるで長年連れ添った彼女にフラれた気持ちで、精神と時の部屋から帰ってきたような気持ちで、アダルトビデオを選ぶ気力も失った僕は再び愛車に乗り込み帰路につく。僕に残されたのは2号だけ。3年前の夏のボーナスで買った2号だけ。ここには2万曲弱しか納められておらず、ここ3年で購入した新譜中心のラインナップとなっている。そのため、『今夜は何だか寂しいから大学入りたての時よく聴いてたmineralのファーストかelliottのセカンドが聴きたい』だとか『昔の彼女が好きだったlolasのセカンド聴きながらティムボイキンの真似がしたい』だののニーズに応える事ができないわけである。
激しい失意の中家に帰ると、嫁がミツメのポスターを下敷きに干し芋を作っており、笑うしかなかったわけである。
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the sleeping aides and razorblades 白浜くん ショートインタビュー【無人島に持っていきたい5枚のアルバム】

北海道のthe sleeping aides and razorbladesという若いバンドが大好きです。
バンド名でピンとくるアナタの目には寸分の狂いもありません。新旧パンクスが入り乱れて喝采を送った2000年代の伝説 exploding heartsの曲から引用された名前を持つthe sleeping aides and razorblades、彼らのニュー カセットテープが僕のハートをエクスプロードさせて止まないのであります。今回はメインソングライターであり、歌とギターを担当する白浜くんに、【無人島に持っていきたい5枚のアルバム】についてインタビューしてきました。
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写真中央が白浜くん

本題に入る前に、まずは2013年にリリースされた1stアルバム"space travels in my blood"から紹介していきましょう。
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70年代後半、英米PUNKバンドの中に混じりPOWER POPの雛型とも言えるメロディアスなPUNKを鳴らすバンドが現れ始めた。直ぐに名前が挙がるところならば、buzzcocksをはじめboysの2ndや rich kids"young girls"、real kids、そんでもってベルファストのprotex等がそれです。
要はPUNKとPOWER POPの中間。いいとこ取りとも言う。the sleeping aides~の直接的なルーツはきっとそこにある。そんな一際ポップで熱いPUNKにmega city fourをはじめとするUKメロディックのセンチメンタリズムをグググ~と注入、libertines的なボヘミアニズムまで漂わせながら初期衝動は丸出しで。そんでもって現行インディーポップのスペシャルスパイスを振り撒いたら唯一無二の音像が出来上がった、本作で聴けるthe sleeping~はそんな音です。インディーミュージックの良いとこ取りとも言います。要するに、新旧インディーミュージックのカッコいい部分だけをセレクトして咀嚼、配合したわけです。センスさえあればそこから新しい音楽が生まれてくるわけで、the sleeping~はそいつを成し遂げているわけですね。Literatureと共振しながらも彼ら以上のロマンと衝動を兼ね備えた1stアルバム、apageofpunkのリリースでお馴染みunderground governmentからのリリース。

続いては2014年6月にリリースされたニューカセットテープ"Dub Narcotic Fanclub"について。
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このテープ、ヤバいやつです。フォーマットの妙味も加わり、my bloody valentine"sunny sandae smile"のepとか、fattulipsの4曲入りのやつとか、Seventeenの"don't let go"の7"みたいにインディー史に残るタイプのシングルだと思います。リリースはヤブソン主宰のi hate smoke tapesから!レーベルTシャツ愛用してます♡
先程アルバムのところで、彼らの音楽を"新旧インディーミュージックの良いとこ取り"と表現しました。本作でもそこは不変です。彼らの音楽にはstiff little fingersがいるし、the smithsがいるし、minor threatがいるし、aztec cameraがいるし、smith westernsがいるし、cloudnothingsがいる。もちろんexploding heartsもいるし、Seventeen againもいる。本作はそんな所謂ルーツからの影響をかなぐり捨て笑いながら駆け出していったような痛快さがあります。要するに、本作を聴いてインディーミュージックのウンチク話に終始する必要が無くなったということです。白浜くんの泥酔したピートシェリーみたいな歌も、謎のエフェクトがかかる爆音のギターも、加速していくビートも 彼らの完全なオリジナルであるように思うのです。
その象徴が本作からのリードトラック"L.A.M.F"であります。

THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADES / L.A.M ...

この流れを汲むならば来たるセカンドアルバムはとんでもないものになるのでは。ところで、タイトルはKのDub Narcoticスタジオからでしょうかね?

前置きが長くなりました。the sleeping aides and razorblades 白浜くんの【無人島に持っていきたい5枚のアルバム】談義、スタートです。

イチロー(以下 宅):Anorak citylights宅です!宜しくお願い致します。

白浜くん(以下 白):宜しくお願いします!

宅:今日はthe sleeping aides and razorbladesのメインソングライターであります白浜くんの【無人島に持っていきたい5枚のアルバム】というテーマを主題としてお話させてください!アルバム、めちゃめちゃ聴いてます。すげー好きです。

白:わー、そう言われるととても嬉しいです。ありがとうございます!

宅:I HATE SMOKE TAPESから出たテープ聴いてすぐにアルバム買いました笑 新旧のインディーミュージックの良いトコ取りじゃん!って思ってます。

白:いやー、ありがたいです、本当に。良いとこどりになれてれば良いのですが、そう思っていただけたのならとても嬉しいです。
宅:そろそろ1枚目いきましょう!

1枚目:Mega city four/Terribly Sorry Bob
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白:一枚目はこれです。やってる音楽だけでなく、人生の軸にすらなっている1枚です。
宅:MC4の初期シングル集ですね。ジャケットからして最高の1枚です。どんな思いがあるんですか?

白:高校の時とか毎日ネットで音楽探してて、その中でMC4を知ったんです。三大UKメロディックみたいに言われてるSnuff、Leatherface、MC4の中でMC4が一番聴きやすいな~なんて思いながら、田舎に住んでいたのできっとこれは誰も持ってないな、なんて思いながら再発盤の1stを買ったのが僕の初MC4でした。そうして、自分しか知らないから、みたいな理由と裏腹に単純にカッコ良くてハマっていったんです。他のアルバムは当時3rdも再発してないので高校生の身分では買えない日々が続くんですが。社会人になって東京に遊びに行ったときにユニオンでTerribly sorry bobのLP見つけて速攻買いまして。あまりの嬉しさに泣きそうにもなったのですが、ともかく物を買ってあんなに感動したのは初めてでした!北海道にユニオンは無いので、きっとこれって東京とかじゃ普通なのかな?とも思ったけど、そういうの関係なく最高の気分でした笑 宝物みたいな感じですかね笑
宅:僕も地元である栃木のWonder gooというしみったれたユーズドCDとか売ってるお店で、MC4のアルバムを一気に5枚見つけて歓喜した思い出があります笑 他人事とは思えません笑 そういう劇的な出会い方をしたレコードってめちゃめちゃ気持ち入っちゃいますよね。確かにMC4はUKメロディック御三家の中でも1番聴きやすい反面、特に後期なんかは奥深いサウンドを伴っていたように思います。

白:Wonder goo、僕の住んでた田舎町にもありまして、ワゴンセールでthe cureのDVDを500円で買えて最高でした笑 そうですねえ、僕は5枚目とかも最近聴き直して好きになりましたね。4枚目のwallflowerが1番好きなのでまあMC4は全部好きですね!後期の雰囲気もとても好きです。単にパンクだけで構成されてるわけじゃないんだなーと。wizはteenage fanclubとかmudhoneyのTシャツ着てますし。pixiesのカバーとかもやってますもんね。歌詞とか読むと救われます!
宅:Wonder gooでのディグは全国共通だったわけですね笑 それでは2枚目お願いします!

2枚目:exploding hearts/guitar romantic
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白:2枚目はexploding heartsです!
宅:バンド名のルーツですね。ギターのリフ等に影響が顕著だな、と感じてました。

白:そうですね、まんまリフ使ってしまってます笑 初めて聴いた時は衝撃的でした。てか声ミックジョーンズじゃん!みたいな。
宅:2000年代のバンドとは思えないですよね。ミック似のボーカルもそうですし、何よりメロディがポップで素晴らしいです。有名なフォロワーにはTHE CRY!等もいますが白浜くん的にどうですか?

白:CRY!好きですよ!けど、現行ならばsonic avenuesとかcrusaders of loveとか好きですね。

宅:sonic avenues!燃えますよね~笑

白:最高す。アルバム全部好きです!ちなみに、CRY!にメッセして音源送ったことがあるんですが、「音が汚い」と言われました笑

宅:ちょっとCRY!が嫌いになりました笑 

白:でもちゃんと良いトコも言ってくれましたよ笑 普通にやり取り出来て嬉しかったです。

宅:僕はthe sleeping~の方がずっと素晴らしいと思ってます。exploding heartsからの影響ってあくまで一部でしかないし、the sleeping~はもっと白浜くんの好きなものをごちゃごちゃにミキサーした感じを受けます。

白:僕らはクソですよ笑 でもそう言ってもらえると本当に救われます!
3枚目:DIIV/oshin
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宅:3枚目は元beach fossilsのギターがやってるDIIVですね!とにかくギターが気持ちいいアルバムですよね。beach fossilsより好きですか?

白:DIIVの方が好きですね!アルバム本当に凄すぎると思います。
宅:the sleeping~を聴いて、70'sのpunkとかpower popがルーツなのかな、と思ってたのですが新しい音楽からも積極的に影響受けてるんですね。

白:ともかく周りの人に負けたくないので色々吸収しなくては!と常々思ってます。でも結局他の人の方が詳しかったりするのでみんな凄いな~といつも思ってます。
宅:近年のインディーポップ、どこの国のも本当に面白いし良いバンドばかりです。

4枚目:the jesus and mary chain/darklands
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宅:ジザメリですか!世間では前作のpsychocandyの方が名盤とされてますが、白浜くん的にはこっちなんですね。理由を教えてください!

白:1stも、というよりはジザメリは全部最高ですが、昔唯一持ってたジザメリの音源がdarklandsでして、めっちゃカッコ良いramonesだな!と思った記憶があります。メロディがramonesなので笑 歌詞とかも好きです。陰鬱だけど救いがある感じで。psychocandyとか聴いたほうがシューゲイザーなんですけど、こっちの方がポップだなーと思います。やっぱり、単に聴きやすいのが好きなんです。

宅:確かにザラついたramones感ありますね笑 MC4のお話の時も感じたのですが、白浜くんは英詞の和訳も目を通すんですね。興味深いです。歌詞の内容で好きになることもあるんですか?

白:尊敬してるバンドの人って何考えてるんだろう?って思うので。歌詞の内容で好きになることも多いです。そしてそのまま自分の歌詞にも引用しちゃうパターンですねー笑
宅:時間も押してますので、最後の1枚いきましょうか!!

5枚目:over head kick girl/demo
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白:ラスト1枚はover head kick girlのデモCDです。札幌の先輩なんですが、間違いなく人生で1番聴きましたね。

宅:お名前しか拝見したことないです。確かMC4の影響下にあったバンドだと認識してます。

白:単にMC4ではないです。なんというか、まだマイスペースとかあると思うんで聴いてもらえれば夢中になっちゃうと思います。ちなみに僕は再結成ライブみたいなやつで信じられないくらい号泣しちゃいました。そのくらい大好きで、影響かは分からないですがああいう風になりたいな とよく思います。
宅:over head kick girl、チェックしてみます!今日はお時間を割いていただきありがとうございました。

白:本当にありがとうございました!!


以上、白浜くんありがとうございました!秋に出る新しい音源と東京でのライブ、楽しみにしてます。ちなみに白浜くんのベストフェイバリットでありますover head kick girlの音源はこちらで聴く事ができますー!


Over head kick girl - インディーズバンド試聴サイトAudioleaf