Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

Anorak citylights的2014年ベスト

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2014年ももう終わりますね。始まるときから分かってましたけど、やっぱり終わってしまいます。
Anorak citylightsは今年の1月に開設しました。音楽に対する自分の雑感を体系化したく、軽い気持ちで筆をとりました。個人ブログならではのフットワークで商業誌じゃ書けないような事ができれば と思っています。2015年も宜しくお願いします。
さて、様々な音楽誌やブログを読んでいて、一番楽しめる企画は年間ベスト特集だったりします。そこには「選ぶ」という概念が発生するため、どうしたって媒体やセレクターの個性が滲み出るわけです。媒体によっては明確なメッセージないしは主義主張のもとに作品が選ばれ、順位付けられるわけです。媒体として何かのメッセージを提示するならば、年間ベスト企画はうってつけであります。大げさな前置きをしてしまいましたが、今回Anorak citylightsが発表する年間ベスト企画にそんな大それた意図は一切ございません。私宅イチローと、今年ご縁あってお話することができた5名の方々が2014年に最もよく聴いたレコードを各々が5枚発表致します。合計30枚のレコードから新たな文脈を見つけていただくことができればこんなに嬉しい事はございません。それではどうぞ!


宅イチロー(Anorak citylights)

まだ当ブログでご紹介していない音源を中心に5枚選びました(順不同)。他にも2014年はネオアコの旧譜中心にあれこれ掘っていた気がします。インタビューをはじめこんなちっぽけなブログにご協力してくださった皆様、読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。2015年はKiliKiliVillaの動向全てと、DOWN NORTH CAMPのファーストが楽しみです。よろしくお願いします。

CAR10/Everything Starts From This Town
今年最も再生回数の多かった作品のひとつ。ワンアンドオンリーとは彼らの事を指す言葉です。ボーカルの川田君は僕の事を「毛虫さん」と呼んでいました。(理由は秘密っす)そのうち「さん」が抜けて「毛虫」だとか「毛虫野郎」になるのでしょう。

Suspended girls/Pop Punk Generation
Pop Punkの様式美をなぞりながら、鬼神のごときポップセンス。参りました。ちゃんとPop Punk聴き直さなきゃダメだな!と感じ、Beatnik Termitesから復習しています。

TEEN RUNNINGS/NOW
シティポップを現行インディー的感性でもってアウトプットしたかのような唯一無二の名作です。ほぼ1人で作り上げているというから頭が下がります。

The Hobbes fanclub/Up At Lagrange
The Pains Of Being Pure At Heart以降を強引に延長して追加料金を払わせる素晴らしいファーストアルバム。恐らく10人中9人が聴いても、「なにこれペインズの焼き直しじゃん」という感想を抱きかねませんが、それで良いんです。僕だけがこのアルバムを好きだと思っていたいです。

Tony Molina/Dissed And Dismissed
平行世界の初期weezerは恐るべきショートチューンバンドだったのだ、そんな妄想も進みます。slumberlandから本作のようなPUNK作品がリリースされたことは意外でした。同時に、slumberlandの懐の深さを感じ、バンドもレーベルも大好きになりました。


ヤブソン(SEVENTEEN AGAiN)
今年は年間ベスト5選出の御依頼を有難い事に二つ同時に頂きました関係で、Anorak citylightsさんに掲載するベスト5には自身が製作に関わった音源に限定して選出させて頂きました。TYPE SLOWLYさんにも投稿させて頂いてるので、お前なんかが関わった音源の話読みたくないぞ!お前が聞いたお前とは関係のない今年のベスト5が気になるぞ!っという屈折した私へのご好意を寄せて頂いてる方はそちらも是非ご覧ください。

SEVENTEEN AGAiN / 恋人はアナキスト
今になって思い返すと、色々な事がここから始まった様な気が年末の今思い返されます。そしてリベンジはまだ始まったばかりです。

THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADES / Dub Narcotic Fanclub
レーベルというか、ただのお節介な性分の延長と私のエゴイスティックな趣向に寛大な寛容を持って受け入れてくれる大澤君を始め、付き合ってくれる素晴らしい人達からなるI HATE SMOKE TAPESの正式音源一作目(SEVENTEEN AGAiNの音源は品番はIHSRで、IHSTでは0番です)です。
彼等は以前soundcloudに練習音源をアップしていて、こっそり本当によく聴いてたL.A.M.Fを、MVを含め携わらせて頂き光栄でした。記憶が定かではないのですが、ボーカルの白浜君と恵比寿で呑んだ後に、「ヤブさんって下ネタとか言わない人だと思ってました…」と、カルチャーショックを受けた趣旨を誰かに漏らしていたそうですが、イメージって本当に当てにならないのだなと我ながら思い知らされました。

NOT WONK / Fuck It Dog, Life Is Too Sugarless
この音源がもし他国の無名な新人バンドの音源だったならば、誰にも教えないで1人で噛み締めて聞いていただろうなぁと思う。現に私は本当に好きな音源って誰にも教えてなかったりします。出来れば上記の様に誰にも教えないで1人で楽しみに続けれたら幸せなのですが、如何せんレーベル業務の端くれを承らせて頂いてるので、歯を食いしばりながらリリースさせて頂きました。

THE FULL TEENZ / swim! swim!ep
はじめてTHE FULL TEENZの伊藤君を認識したのは、1年半前アルバムのツアーで京都の行った時だった。彼はその時酷く酒乱の様子であった。まるで体の隅々から関節と軟骨を取り除き、重力に全く抵抗する素振りの無い歪な彼のフロアーでの盛り上がりを方を見て「あぁ軟体動物がダイブをするとこんな感じなんだろうなぁ」っと、ライブ中一瞬自分でも驚く位冷静になってしまった程に、その当時から彼は異彩を放ったキャラクターであった。そんな彼が今では自分でレーベルも始め、今回のテープもほぼ全て自分達から明確なビジョンを持って、サウンド、アートワーク、納期とスケジュール管理、MV製作等々をキビキビ提案して、実行していく様に本当に驚かされ、感心させられてしまった。そしてそのどれもがあの軟体ダイブを1年半前にかましていた伊藤君が指揮をとっているのだから、彼の求心力と精進を見習わなくてはなぁと思い改めて、彼に近づく為にとりあえずストレッチから始めようと思うのであった。

銀杏BOYZ / 光のなかに立っていてね
携わったなんて烏滸がましく、身の程知らずな事は勿論全く一つも無いのですが、個人的にとても印象的なこのアルバムに纏わるお話です。
安孫子さんがまだ銀杏BOYZに在籍されていた頃に、私達は頻繁にMIXCDを交換させて頂いておりました。こんな若輩者の私が作ったMIXCDにも耳を傾けて下さるのですから、安孫子さんは本当に頭が下がる位に凄まじい止むなき探究心をお持ちの方だと痛感しっぱなしでした。そして、そのCDに収録したバンドの中でも安孫子さんが特に反応なさられたのがliturgyというバンドでした。そのバンドの曲がヒントとなり、今作に収録されてる曲にそのアイディアが反映されているとの趣旨を発売後お話してを伺い、更に感銘を受けました。元々は今は亡き下北沢のワルシャワレコードの店頭でliturgyのレコードが店頭演奏されていて「なんなんだこれは!!」っと衝撃を受け、店長にすぐさまバンド名を聞くも、既にアルバムは廃盤で販売はしていないとの事で落胆。するはずは勿論無く、世界中を隈なく探しだし無事に確保したのがこの話の始まりでした。その衝撃の連続が今作のアルバムを形成するアイディアの一片となり、liturgyなんか勿論知らない方へ、今作が新たにその衝撃の一片として波及していくのかと思うと、鳴らされる音や言葉は様々なところから、地続きで繋がっているのだなぁ、と染み染み思ったりしたくもなるのでした。


加藤くん(NOT WONK)

Literature/Chorus
ファーストの『Arab Spring』も良く聴いたんですが、これもよく聴きました!ファーストよりテンション高くなってていい感じです。あと、曲間の畳み掛けられる感が最高です!

kakkmaddafakka/six month is a long time
これは久しぶりに試聴して速攻カートに入れてしまった系です!バンド名もすごくいいし、色んな音が入ってるけどゴチャゴチャしてる訳ではなくて、バンドの要素として隙間埋めてる感が最高です。

Circa Waves/Circa Waves EP
この手のバンドはすごく流行っててもういいのかなと思っていたんですけど、イイモノはいいってこの事だなという感じです!

TEENAGE FANCLUB/ヒット大全集
BOOK OFFで「これ持ってないな」と思って買ったんですが、流石にベストだからか最高だなという感じです。曲順がめちゃくちゃいいです!

DROWNERS/DROWNERS
Circa Wavesとは別ですけどこの手のバンドはTHE STROKESさえ聴いてればいいや〜とも思っていたし、00年代でブームは過ぎたから現行ではいないんだろうとも思っていたんですが、これはめちゃくちゃいいです!これもいいものはいい系のサウンドです!


白浜くん(THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADES)

TOPS/PICTURE YOU STARING
今年は個人的にTOPSのアルバムというか、change of heartの一年でした。超中毒になりました。超中毒なんて言ったらすごくガッついてる感が出ますがTOPSのこの曲自体は超クールで聴いてたら俺もクールになれそう、、って期待しちゃうくらいの名曲でしたね、背伸びしちゃうよね。

YOUR PEST BAND/TIME TO GO
YOU WERE THE REBELという曲が凄く好きです。歌詞も良くてしばらくは歌詞カードとセットで聴いてました。色んな物が下らないなと思える吹っ切れる魔力みたいな物が、カッコいい音楽を聴くとそういう物があるんだなと僕は思います。

WARM SODA/YOUNG RECKLESS HEARTS
かなり期待してたリリースでしたが期待以上で最高でした。BARE WIRESの1枚目を偶然手にいれ聴いたときから、僕の無意識の中にあったツボを刺激してくれてたと感じ、今回はそれが絶好のミリ単位での精度で付いてくれたのでした。特に甘さの部分でかなりツボ。こうなりたいですね。

HATEMAN/SAMARIAN NIGHTS
こういうものを手に持っている限り価値観なんて意味もないし理屈なんてアホらしく感じてくるので、つまりは何にも形容出来ない程に言葉が邪魔になり、聴けばわかるよ!って事なんでしょうなー。

SNOW WITE/CHINA TOWN
GNARから出たカセットが既に懐かしくも思えてくるんですけど、コレは本当に良くてこんなの聴きたくてこの人を追っていたのだと思いました。捨て曲なしの爆裂ギターでポップで、ギターソロのときに良い加減ギターしか聴こえないくらい爆裂ギターなのが最高です。(ちょっと盛ってますけどたまに聴いててそう錯覚するくらい最高です)SWEET BLACK ANGELの名曲さがもうなんとも言えないです。


伊藤くん(THE FULL TEENZ)

SEVENTEEN AGAiN/恋人はアナキスト
今年一番聴きました。朝にも昼にも夜にも合うと思います。

Dorian/studio vacation
最後の曲が好き過ぎてシンセの音を真似しました。すみません!

ロンリー/楽しいvoid
夏に聴けてよかったです。いつもありがとうございます。

The Cribs/men's needs (7')
A面B面で2曲しか入ってないのにめっちゃ高くて大事に聴きました。

スカート/サイダーの庭
散歩しながらたくさん聴きました。散歩くらいしかやることがないので散歩中に音楽一番聴くかもしれません。


安孫子さん(KiliKiliVilla)
Anorak citylightsさんのセレクトには本当にびっくりしておりました。自分の好きな感じとあまりにも沢山の事がシンクロしていましたので。その様に驚いてた中、立ち上がり早々のまだまだ得体の知れない我々謎レーベルのインタビューなどもして頂き本当に感謝しております。実際、今回一緒に選者になるとお聞きしている、SEVENTEEN AGAiN薮くん、THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADES白浜くん、NOT WONK加藤くん、THE FULL TEENZ伊藤くん。彼らのバンドの作品は驚きと興奮を持って本当に愛聴致しました。偏りを防ぐ為、この度は敢えて彼らのバンドの音源は割愛させて頂きました。今年はいつになく邦楽パンク、インディーを沢山聴きました。新たな何かが生まれていると確信しております。来年は更にそれが加速してまだまだ楽しくなれば良いなと思っております。来年もどうぞ宜しくお願い致します☆

Alvvays/Alvvays

CAR10/Everything Starts From This Town

Homecomings/I Want You Back EP

MILK/MY E.P.

SUMMERMAN/This is SUMMERMAN ep


ベスト企画に協力していただいた皆様、ありがとうございました!2015年も宜しくお願い致します!

SEVENTEEN AGAiNと私

"僕はファシスト 君はレイシズム 君を傷つけた奴を僕は許さない"
1曲目"僕はファシスト"は安孫子真哉に捧げられた。僕は壁際の定位置から動けずに、固唾を飲んでステージを眺めていたのだ。
12/28に新代田FEVERで開催されたKiliKiliVilla主催イベント『不安と遊撃 VOLUME01』のラストを飾ったのはSEVENTEEN AGAiNだった。"僕はファシスト"から"Don't Break My Heart"の開始を告げるドラムロールが鳴らされた瞬間、フロアからは無数の拳が立ちのぼり、それは直ぐにモッシュの波に揺られ散り散りになった。僕は踊りまわる酔いどれ達を前に押し返しながら、SEVENTEEN AGAiNを観ていた自分の10年間を思っていたのだ。

SEVENTEEN AGAiNを初めて聴いたのは2005年だったと思う。
当時僕は大学2年生で、栃木の片田舎から大学進学のため上京してきたクソ大学デビュー野郎であった。唯一の取り柄というか趣味は音楽が大好きだったということ。高校1年生の時に出会ったGoing Steadyをキッカケに音楽に心惹かれ、彼らの背後に見え隠れしていた『西荻watts周辺のPUNKシーン』に没入。Stiffeen Recordsのタイトルを宇都宮の新星堂まで買いに走り、そこに無ければメールオーダーし、届いた音源の紙ジャケットを手でスリスリしながら未だ見ぬ東京の西荻wattsを思っているような高校生だったのである。
2004年の大学進学以降は下北沢まで自転車で20分あれば行けるアパートに住んでいたため、毎日のように自転車で下北沢へ行ってはdisk unionに通いつめ、安いPUNKの音源ばかりを発掘して一喜一憂していた。ライブもちょこちょこ観に行くようになり、やがて吉祥寺や池袋を中心に、僕と同世代の若者によるPUNKシーンの雛形が出来上がっていること知るようになったのだ。彼らは僕と同じように西荻wattsやGoing Steadyをルーツとしており、それは彼らの楽曲を聴けば直ぐに察しがつくものであった。そんな文脈の中で出会ったのがSEVENTEEN AGAiNだったのだ。
当時の彼らはまさしく西荻watts直系と形容する事ができた。短く汚く展開の激しい、散らかすようなポップソングを演奏しており、どこからどうみても悪ふざけにしか見えない代物であった。そんな楽曲が詰め込まれたCD-Rのデモ音源を聴き、「やりたいニュアンスは凄く分かるけど、何かしっくりこないなあ」と勝手極まりない感想を抱いていた。しかしながら、どこか彼らに引っ掛かりのようなものを感じていたのも事実だ。それは限りなく感覚的なものであったように思う。デモ音源のハンドメイド極まりない装丁だったり、レーベル名が『twenty one again』と表記されていたり、封入されていたライナーのフォントだったり、タイトルのセンスだったり、ホームページのBBSに書かれていたメンバーの好きなバンドや音源だったり、自分と同じ順路を辿ってきた人間が作ったものとしか思えなかったのだ。今思えば、"同年代の若者達が作っている"という事が自分にとって大きかった。
そんな風に彼らを気になっているうちにいつしか楽曲も好きになっていき、気付けば『youthful pop song』を口ずさむようになっていた。初めて聴いてから約半年程経った2005年の冬、僕は彼らのライブを観に行こうと決心し、高円寺の無力無善寺に繰り出した。初めて観た彼らのライブの印象を鮮明に覚えていないが、僕は一番後ろの壁際でゲラゲラ笑っていた。つまりはそんなライブだったのだろう。
それからは何かにつけ、少なくとも数ヵ月に1度は彼らのライブを観ていた。極端にシャイで一人ぼっちで人見知りだった僕はいつも一番後ろの壁際を陣取り、モッシュする酔いどれ達を前に押し返しながら観ていた。前売りを買ったことは1度しか無く、彼らだけを観て帰った事も数知れない。お客さん同士が仲良くなったり、バンドのメンバーと交流していく中、僕はひたすらバンドやお客さんと繋がる事を避けていた。訳のわからない自意識の拗らせ方をしていた事、つまらない意地のようなものを張っていた事が原因だろう。自分でも「まるで俺は幽霊みたいだ」と感じていた。ライブの転換時間が一番の敵だったよ。しかし、当時の僕の判断が間違っていたとは全く思っていない。なので、僕はメンバーのヤブさん以外の性格や人柄は今でも知る事ができていない。
さて、時が経つにつれ彼らの演奏する楽曲は徐々に変化していった。雑多な音楽要素をPUNKでアウトプットする手法こそブレないものの、従来とは大きく異なる、ストレートで直情的な新曲が披露されることが増えていった。メンバーが変わりギターの牛山さんが加入、大澤さんがベースを弾くようになり、ライブの勢いも爆発的に加速していったように思う。僕の想像し得ない幾多の経験の中で変化したのだろう、頻繁に対バンしていたFOUR TOMORROWや、ヤブさんも在籍していたA PAGE OF PUNKからの影響も顕著であったように思う。お客さんの数も少しずつ増えていった。NO PEOPLEとのスプリット盤や単独カセットテープは直ぐに物販から姿を消した。
2009年、僕は地元の銀行に就職するため栃木に帰らなくてはならなくなり、彼らのライブを観る機会は減っていった。それでも半年に1度は池袋や下北沢までライブを観に行っていたのだ。同年の夏にリリースされたファーストアルバム『NEVER WANNA BE SEVENTEEN AGAiN』はフラゲ日に購入し、噛み締めた。過去のあらゆるレコードをなぞりながら全く新しいPUNKが鳴っているのに、どこか懐かしくなるような音が詰まっていたのだ。僕は歌詞カードをバッグに忍ばせ会社に向かった。同時期、ヤブさんがファーストのアナログを作るため中古レコードを1枚10円で買い取っていた事が何だか印象深い。
幽霊のまま定期的にライブに通った。1年半が経った2011年の3月に震災が起きた。あまりにたくさんの問題が表面化したあの出来事以降、SEVENTEEN AGAiNのライブは殺気立つようになった。ただでさえストレートな楽曲は何かを吐き散らかすように暴力的に加速し、ヤブさんは隠すことなく怒りや迷いを観客に向けて叫んだ。坑がえない大きな何かの存在と存在への反発が彼らをそうさせたのだろうか、生活者としてとにかく怒って悩んで苦しんでいたように感じた。正直、僕はこの時期の彼らを観る事が怖かった。フロアではあんなにシャイで物静かな印象を与えるヤブさんが、顔を真っ赤にしながら混乱を伝えている。デモでの体験を伝えている。僕は重たい気持ちでライブハウスを後にしたのだ。
やがて、"シュプレヒコール"という曲ができた。僕はとても驚いた。日本語だ。レベルソングだ。それは僕のような無力かつPUNKに何かを求めている者にとって、一抹の光のように感じたのだ。下北沢の地下で、爆発的に大きな音で鳴らされたシュプレヒコールを僕は心から歓迎した。震災以降、ヤブさんの生活の道標となった言葉や体験が 誰にも分かる詞で歌われている。「何だよ、青春パンクじゃん」誰かの声が聞こえた。関係ない、引っ込んでろ。"シュプレヒコール"から狭い部屋のドアを開ける音が確かに聴こえたのだ。
それからの彼らは海外の現行インディーに大きく影響を受け 音楽性が拡張していく事と比例するように、新曲は日本語で作られていった。やがて生まれたセカンドアルバム『FUCK FOREVER』は生活者として 等身大のSEVENTEEN AGAiNがパッケージされた傑作だった。あそこまで過剰で、エゴイスティックで、激怒していて、愛に溢れたアルバムを聴いた事がない。つまるところ、「強い気持ち 強い愛」ってやつだ。
2013年以降も彼らは日本各地でライブを続け、ドラムのゴローさんが脱退。止まりたくないバンドは新メンバーにカズさんを迎えた。同年には、彼らからの影響を公言する若いバンドが現れ始めた。京都のTHE FULL TEENZや、北海道のTHE SLEEPING AIDES AND RAZORBLADESやNOT WONKもそうだろう。彼らに影響を受けた若者が各地で面白い動きを始めている。何かが変わる前触れ、胎動のようなものを確かに感じたのだ。
2014年6月、SEVENTEEN AGAiNはカセットテープ『恋人はアナキスト』をリリースした。僕は本作のリリースに際し、意を決してヤブさんにインタビューを申し込んだ。話したい事がたくさんあったのだ。ヤブさんはすぐに快諾をしてくださり、インタビューは始まった。この10年間のなかで、初めてSEVENTEEN AGAiNとコミュニケーションをとった瞬間だった。そりゃそうだ、彼らはいつだってこちらの事を知ろうとしてくれたのに、僕は固くドアを閉めていたのだから。初めてお話するヤブさんは僕のひとつ歳上とは思えない落ち着きぶりで、まるで10年分の時が一気に動き出したように思えた。それからは、ヤブさんとKiliKiliVilla安孫子さんの関係に着目し、インタビューを組ませていただいたのはご存知の通りだ。

2014年12月28日。つい先日の話だ。新代田FEVERで観たSEVENTEEN AGAiNはとにかく幸せな空気に溢れていた。僕はあんなに幸せそうに噛み締めながら演奏する彼らを初めて観たのだ。いつもどこか不満げで飽きたらない彼らが、初めて何かを成し遂げたような 達成感を滲ませている。10年前のライブハウスで彼らを観た時と全く同じように、壁際でモッシュする酔いどれ達を前に押し返しながら、この10年間の事を考えた。彼らに影響を受けたバンドマン達が重なりながらダイブし、安孫子さんもダイブし、僕も一瞬ダイブするか迷ったけどすぐ壁際に戻り、涙を抑えながらライブを観た。とても幸せな空間だったよ。2015年はSEVENTEEN AGAiNの逆襲が加速するに違いない。バンドの結成から10年以上を迎えて、彼らはますます求心力と音楽的語彙を高めている。自らの位置に甘んじることなく、どんどん先に進もうとしている。さすがはPUNKバンドだ、SEVENTEEN AGAiNと安孫子真哉が出会った瞬間から、PUNKの逆襲は始まっていたのだ。

僕が観ていたSEVENTEEN AGAiNは彼らのほんの一部に過ぎず、表層を薄くなぞった程度だろう。なので、これからも彼らを追い続ける。彼らが諦めて立ち尽くし辞めてしまうまで。多分その日は来ないので、僕はジジイになって歩けなくなるまでSEVENTEEN AGAiNを見届けてやるぞ!と、思うのだ。
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安孫子真哉(KiliKiliVilla)×ヤブソン(SEVENTEEN AGAiN)ロングインタビュー

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2014年10月15日、とある情報がひっそりと音楽系ニュースサイトにポストされた。
『元銀杏BOYZ・安孫子真哉らが新レーベル"KiliKiliVilla"設立 リリース第一弾はLIFE BALL』
この一報は一部の好事家達に大きな動揺を与えると共に、歓迎をもって受け入れられた。
"自分たちの居場所をきちんと作りたい"。これは前述したレーベル設立発表の際、安孫子真哉が発したコメントの一部である。彼がどのような思いでレーベルの設立を決意し、行動を起こし、音楽シーンへのささやかな帰還を果たしたのか。"KiliKiliVilla"とは一体何なのか。KiliKiliVillaが日本のインディーミュージックに作りたい居場所とはどんなものなのか。
今回、レーベルプロデューサーである安孫子真哉と、彼の良き友人であり、レーベル設立までの流れを傍らから見てきたヤブソン(SEVENTEEN AGAiN)にインタビューを実施。埼玉県某所の居酒屋でひっそりと行われた、"KiliKiliVilla"という名前の新興レーベル及び日本のインディペンデントミュージックに関する新しい対話。ここから始まる全てのことに敬意を込めて。


では、はじめさせていただきます!よろしくお願い致します!

安孫子(以下 安):よろしくお願いします!

ヤブソン(以下 薮):よろしくお願いしますー。

まずはレーベルの設立について聞いていきます。何故安孫子さんがシーンにカムバックするにあたり、バンドではなくレーベルだったのか。近年の日本のインディーポップの充実がきっかけだったのではないかと予想するのですが、いかがですか。

安:そういうことです!笑 あと、自分がバンドをやる事はもう無いので。バンドやってる最後の数年間はずっと体調悪く。。。ずっと引きこもってレコーディングやってたもんだから。色々病院とかも行ったんだけど、どうにもこうにもで。それでも作品を意地でも創ろうと思って、もう必死にやってたんだけど、レコーディングの終盤についにパニック障害になっちゃった。もうこれ以上はいよいよ本当に無理だなって痛切に思った。それでバンドを辞めさせてもらい。。。それからは東京で数ヶ月くらい廃人みたいな生活をしてました。見かねた妻の提案もあり、家族で妻の実家のある群馬に移住することになりました。それからのんびりさせて頂き体調は少しずつ良くなっていきました。そして仕事もはじめて、「家族と一緒にこのままごく普通に慎ましく生活していこうか」と思ってました。アルバムのリリースの時も、仕事の休憩中に連絡が沢山来てて「ああ、そっか今日出たんだ」みたいな感じで。

他人事みたいですね笑 

安:いっぱいいっぱいだったので笑 それでね、SEVENTEEN AGAiNのメンバーと仲良くなったのは…3年くらい前かな?

薮:そうですね。はじめてミックスCD交換をさせてもらったのが、僕らのセカンドアルバム(FUCK FOREVER)を作り終わる直前くらいだったので、ちょうどそのくらいですね。

安:薮くんやSEVENTEEN AGAiNのメンバーくらいでした、メンバー、スタッフ以外の外で会う人って。

そもそもどういった経緯でおふたりは交流するようになったんですか?

安:最初はね、当時disk unionで働いてた大澤くん(I Hate Smoke Records)からポップパンク本製作の協力依頼がきて、それで大澤くんと薮くんと一緒に呑みながら話してて。元々SEVENTEEN AGAiNは名前だけ知ってて。その時は聴いたことも無ければ観たことも無かったんだけど。ポップパンクの話しですから笑、すぐにハモりました笑 「ああ~、あの時俺が大量に売ったレコードをみんな薮くん達が供養してくれてたんだ!」みたいな笑 それでね、薮くんとかメンバーのみんなが、「何か一緒に創りませんか」って言ってくれるものだから嬉しくて。俺、SEVENTEEN AGAiNのライブ初めて観たのも遅いよね?

薮:セカンドアルバムのレコ発のファイナルの時ですね。

薮さん視点でのお話もお聞きしたいです。

薮:安孫子さんと始めてお会いしたのは、ボブ(shinobu、ASIAN MAN RECORDS)のアメリカへ帰国する送別会の時でした。ファーストアルバム(NEVER WANNA BE SEVENTEEN AGAiN)制作時は僕はそこまでミックスに興味が無かったんですが、セカンドアルバム制作時はミックスや宅録も積極的に自分達で行っていまして。当時安孫子さんが取り組んでいたアルバムのミックスを少し聴かせてもらったり、宅録や自らミックスをする事についての魅力をお話しして頂いて、とても視野が広がったんです。ミックスを工夫したり、突き詰めたりするだけで、同じ素材を使っているにも関わらずこんなに世界観が変わってくるのか、と。その流れで、当時作っていたセカンドの曲を安孫子さんに聴いてもらったりして沢山相談にも乗って頂きました。レコーディングの最終日も一緒にスタジオ入ってもらったりしたんですよ。

安:そうだね。そういう流れもありつつ、普通に遊んだりしてて仲良くなりましたね。

ここまでのお話だと、SEVENTEEN AGAiNメンバーとの交流と安孫子さんのレーベル設立が一線で繋がりませんね

安:そうだね。田舎で普通に働きながら、あとはたまにSEVENTEEN AGAiNのライブを楽しみにする生活でいいかなと笑。ある日、彼らのカセットテープ(恋人はアナキスト)のレコ発を観に行ったらCAR10が出ていて。大澤くんから「安孫子さんが移住する北関東ローカルのバンドです」と、音源を頂いててよく聴いてたんだけど、ライブ観たら虜になってしまって笑 メンバーと話をしてみたら、CAR10の活動拠点は足利だけど住んでいるのは群馬なのよ。だから地元でCAR10のライブを観て東京でSEVENTEEN AGAiNのライブを観る、みたいな生活でいいかなと笑 で、今年の6月末くらいかな。SEVENTEEN AGAiNの名古屋・京都を回るツアーに一緒についていった時の出来事が本当のきっかけです。俺、バンドマンから銀杏BOYZって疎まれてると思ってたから。

薮:そんなことないですよ笑。

安:そのツアーに付いていった時に色んな若いバンドマンの子達がたくさん声かけてくれて。「音源聴いてください」ってレコード、CD、カセットを本当にたくさん頂いて。「なんだこりゃー!」みたいな笑 すごい有難く嬉しい反面、正直すごい戸惑ったのよ。別に俺はバンドもレーベルもしてなかったし。でも、パンクの子達みんな優しくて笑 んでその時観たSEVENTEEN AGAiNもめちゃくちゃカッコ良くて。そんで、そのツアーの帰り道かな。京都から群馬に帰る道中、なんか込み上げてくるものがあって。思うことがあったんだろうね。「俺でもやれる事あるのかなー。結局俺こういうの好きなんだよなー。企画とかやろうかなー」ってしみじみ思って。それで家に帰った翌日、いただいた音源全部聴かせてもらったらさ、日本のパンクがすごく面白いことになってる事に今更ながら気付いて。それで、すぐ薮くんにメールしたの。どんなメールだったっけ?

薮:確か「パンクやそのシーンに関わる何かをやりたい」みたいなニュアンスでした。

安:そうそう。結局自分はそういうのが大好きな人間なんだから。もうシーンに参加したい!って素直に思えたの。そして、これからはそれを楽しみに生きていこうって笑 そう思った矢先に、今回一緒にレーベルを立ち上げることになった与田さんと福井さんと一緒に飲むことになったの。本当に偶然のタイミングで。名古屋京都ツアーから3日後とかの話。そこで今の日本の音楽の話になって。で、丁度すぐにSEVENTEEN AGAiNのライブがあったから、3人で観にいったのね。その日、3人でレーベルをやることが決まった。その手があったか!って思った笑 福井さんは元々YOUNG PUNCHというバンド、与田さんはWONDER RELEASEっていうレーベルをやってた方で。2人とも相当な音楽好きだし、元々大好きで信頼してる先輩方です。

レーベル設立が決まった際、おふたりとはどんな話をしたんですか?

安:簡単に言うと、私の「レーベルをやるならこういう事はしたくない」って事と、福井さん与田さんの「レーベルをやるならこういう事がしたい」ってことが合致したのです。後ろめたい事はしたくないという事です。

なるほどです。薮さんは安孫子さんがレーベル設立するまでを一番近いところから見ていた方だと思うんですけど、いかがでしたか。

薮:そうですね。安孫子さんが銀杏BOYZを脱退される発表があった当日の朝、久しぶりにメールを頂いたんです。「今日午後発表されるんだけど、おれ銀杏BOYZ辞めたんだ」という趣旨の内容でした。 その後すぐ渋谷で安孫子さんとお会いして色々お話しを伺いました。その当時は他人事とは思えない程に漠然とした虚無感や葛藤に何故か関係ない僕まで苛まれていたのですが、それと同時にこれから先も何か一緒にやれたら嬉しいなと考えていました。 安孫子さんは今迄オーバーグラウンドな活動をしていたバンドに在籍していたのですが、本質は僕達と同じ様なパンク的感覚をずっと持ち続けていた人だと思うんです。だから安孫子さん個人から発せられる表現をもっと見たいと常々思っていました。なので僕らと一緒に動いて頂ける中で「何かを作りたい」と思っていただけた事は本当にとても感銘深い事です。

安:薮くんいなかったらこの状況ないもん、ほんと。

薮:そう言って頂けると、バンド懲りずにやってて良かったなと思いますです笑

安:あっそうだ、色々お問い合わせ頂いたので。KiliKiliVillaはUK PROJECT内のレーベルですかってよく聞かれます。私も与田さんも福井さんも元々はUK PROJECTにお世話になってましたので。ですが、KiliKiliVillaは3人で立ち上げた完全に自主レーベルです。ゼロからのスタートです。インディーの音楽ってそこにどういう背景があってどんな文脈がそこにあるのかっていうのが重要だし、楽しさでもあるのでお伝えしておきます。

Stiffeen recordsは安孫子さんと角張さんの周辺のカッコ良いバンドを中心にリリースしていったと思うんですけど、KiliKiliVillaのポリシー及び活動理念のようなものが聞きたいです。

安:初めに思ったのは、宅さんの指摘通り、最近の若いバンドを中心にリリースしたいってことは考えてます。私本当にずーっと主にパンク中心にレコード買いまくってたんだけど、2006年辺りを境にパンクのレコードを買うのがかなり減ってきてた。というのは、正直飽きてたのかもしれない笑 自分の中でパンクロック飽和状態というか笑 ほんとdisk unionには2日に1回、高円寺BASEには1か月に1回は必ず行ってたくらいだったんだけど。 それでパンクから他のジャンルが主戦場になりはじめて笑、たまにパンク聴いてやっぱりこれなんだよなーなんては思っていたけど。うん、特に若いパンクバンドは本当に新鮮味に溢れててドキドキしてます。今まで混じってこなかった音楽の影響が見え隠れしてたり、極端な足し算、引き算や。色々なサウンドエフェクトなどを使っていたり。だけどもパンクロックとしてアウトプットしてるというのが本当に面白い。SEVENTEEN AGAiNとか中堅ところももちろんそうだけど、ずっと色んな音楽吸収しててさ。あっ、パンクロックが進化してるって思った。

レーベルの核に必ずパンクが横たわるわけですね。でも僕、何度か降神のライブで安孫子さん見ましたよ!笑

安:あっ、凄い目撃談ですね笑 降神最高です!一時期すげー追いかけてた。観れるうちに観とかないとって。最近ライブやってるの?

やってないですね。志人とかはちょくちょくソロとかでやるんですけど、ソロになるとぶっ飛びすぎてる感あって何か違うんですよね。

安:やっぱりあの2人の声の掛け合いだよね。ドラマを作るようなさ。

表情もいいし。

安:凄いよねー。

ちょっと軌道修正します!笑 薮さんにお聞きしたいんですけど、リスナー視点及びバンドマン視点でもそうなんですが、KiliKiliVillaの今後にどんな期待をします?

薮:僕の個人的な感想なんですけど、世界的に見て2008~09年以降、それ以前よりも面白いサウンドの組合せを打ち出したバンドが現れていると感じていました。

安:俺がパンク追わなくなってすぐだね笑

薮:そうですね。例えば今では大御所ですが、THE DRUMSやVAMPIRE WEEKENDも当時パンクサウンドを根底に感じさせる要素が沢山有りましたし、WASHED OUTも十代の頃パンクばかり聴いてたとインタビューで話していました。これも完全に個人的感覚の話なのですが、2007年以前は所謂インディーロックとパンクサウンドのバンドが分かりやすく住み分けされていたのが、それ以降両者が互いに交差しあい出して、様々なサウンドの要素を内包しながらアウトプットがパンクサウンドであるバンドも数多く出現し始めたなと感じました。それはそのバンドが所属しているレーベルの大小に関わらず起こっている様にも思いました。その辺りからレコード店のラインナップを見ていても、以前はパンク、パワーポップに特化していたDREAM ON RECORDSさんにもインディー系のレコードが入荷し始めたり、逆にESCALATER RECORDS(現BIG LOVE)に謎の無名パンクバンドが入荷し始めたり、レコード店単位でも双方にシンクロし始めていると感じていました。 日本にも近年そういった文脈を感じるバンドが沢山出てきていると感じています。その文脈を踏まえつつ、様々アウトプットは異なるけど根底にパンクが土台となっているバンドをKiliKiliVillaはリリースしていくのではないかな、と勝手にですが想像してます。I HATE SMOKE TAPESもその様なコンセプトで始めた節もあります。

なるほど。リスナーとして、安孫子さんとか薮さんは信頼できる審美眼をもった人だと思うんですよ。やっぱりこの人の推してる音源は間違いない!みたいなのってあるじゃないですか。

安:うん、やっぱりレーベルをDJみたいな捉え方をする音楽の探し方ってあるもんね。インディーミュージックの面白いところってさ、文脈で捉えやすいところだと思うのね。色々な事の関係性が見え隠れする感じ。自分たちもそれを辿ってきたわけだし。「SSTから謎の音源が出てて、全然良くないんだけど、SSTだから何かあるんじゃないか」みたいな笑 でもとりあえず自分にとって丁度いいところを目指したい。支持されない事も沢山あって当たり前。我々はただのパンクロック愛好者笑

薮:近年Captured TracksやMexican Summer、Burger RecordsやHardly Artだったりもそうなんですけど、一義的には捉えられないラインナップで様々なバンドをリリースしているレーベルが凄い勢いで飛躍していると感じます。KiliKiliVillaも日本において、そういった一義的には捉えられないけど、なんか面白い事になってるぞ!っと思われる様なレーベルになっていくんじゃないかなと思いますです。

確かに、そういう新しい色を持ったバンドはチラホラあっても、レーベルとしてしっかり文脈を作れるレーベルがなかなか出てきていない。I HATE SMOKE TAPESさんもKiliKiliVillaと向いてる方向は一緒だったりするんですかね?

薮:そうですね、面白がっている方向性は似てると思います。加えて、I HATE SMOKE TAPESはテープ専門のレーベルなので、もう少し局地的な盛り上がりを目指している感じがします。KiliKiliVillaは各バンドの方向性に合わせて、そのポテンシャルの裾野を更に広げることができるレーベルなのではないかと思います。安孫子さんや与田さんや福井さんは、例えば僕に出来ない事も沢山手掛けられる事が出来る方々だと思います。そういうところで共存しながらも、別個に進んで共に撃てれば良いなぁと感じております。

安:僕が考えているのは、単純に良いものを創りたいという事だけです。時間的にも予算的にも限られた状態だから何がベストなのかはしっかり考えたい。みんな仕事しながらだしね。それぞれのバンドのムード、持ち味から作品の完成系のイメージ。そしてそれに向かう為の方法。一緒に作品を創る人選。それはバンドによって全く違うから。自分達の考えや持ってるもの、または用意出来る事の中で最良の提案はしてあげたい。

ここで少しお話のベクトルを変えます。何故レーベルのリリース第一弾に、現行のバンドではなくLIFE BALLの編集盤を選んだのでしょうか。お話を聞くにKiliKiliVillaは現行のバンドを取り扱ってこそ!とも思ったのですが。

安:そこはね、第一弾をどうしようとかは別に考えてなくて。あっ、本当はあったんだけど笑。それはこれから埋まるであろう空けてある品番が埋まった時参照で笑。うん、これからリリースするバンドの音源の完成を待っていられなかったという事です。あとLIFE BALLの編集盤のリリースはね、Stiffeen recordsをやってる時からずっとやりたかったことなの。夢だったの笑 それで、今回のレーベル設立に際してリリースに向けて動いてみたら、バシッと決まった笑 昔はずっと拒否られてたから笑。あとね、LIFE BALLのリリースについては自分の意志表明かな。「結局自分の好きなもの、大事なものはこの感じです」っていう意志表明。

でも僕ほんと嬉しかったですねー。安孫子さんがレーベル始めるってなってリリース第一弾がLIFE BALLって聞いて、「僕の想像する安孫子さんそのままだな」って何か思いましたもん。僕も安孫子さんはパンクの価値観をずっと持ってる人だって思ってましたから。

安:そう言ってもらえるの本当に嬉しいな~笑

薮さんはバンドでLIFE BALLのカバーもされてましたが。

薮:カバーしてます。ほぼオマージュの様な仕上がりなのですが…。LIFE BALLは勿論めちゃめちゃ好きです。原曲の完成度が高いものをカバーするのは凄く難しくて、苦労しました。

和訳ではない独自解釈した日本語詞をのせた感じは、GOING STEADYのLIFE BALLカバーを思い出しました。

安:あれバックはほぼコピーだからね~笑 LIFE BALLのリリース、みんな楽しんでくれたらいいなあ。若い子達がLIFE BALLを再発見してくれたら最高だし、あとはオールドファンに喜んで貰えたらなー。昔話に花を咲かせたり笑。僕の地元の友達は凄い喜んでくれてた笑。私高校生の時コピバンしてました笑。

ここでインタビューも後半です。12/28に行われるKiliKiliVilla主催のイベント「不安と遊撃」について聞いていきます。これはレーベルのショーケース的なものと捉えていいんですか?

安:いや、ショーケースじゃないですね。世間一般的にはもちろん偏ってるんだけど、好きな人にとっては良い組み合わせだと思っていただけたら。なんていうんだろ、レーベルの方針としてはもちろん閉鎖的なものにはしたくないんだけど、秘密クラブみたいなところから始めたいって願望もあってね。共感してくれる人達に楽しんで欲しいというか。凄い楽しみ!

出演バンドの層がバラバラなのも面白いですよね。DiSGUSTEENS、LINKみたいな20年選手もいれば、MILKやNOT WONKやCAR10みたいな若いバンドもいるし。そういった中で個人的に面白い立ち位置なのは、ちょうどふたつの世代に挟まれたA PAGE OF PUNKとSEVENTEEN AGAiNだと思ったりもしてます。では、これから出演するバンドについてひとつずつおふたりにお話を伺っていきますね!特にテーマは無いんですが、紹介を兼ねた雑感等を語っていただければ。

A PAGE OF PUNK

A Page of Punk - Live in Waseda - 2014.08.31 - YouTube

安:ツトムくん(A PAGE OF PUNKリーダー)のことは本当に昔から知ってて。最初会った時はね、西荻WATTSのシーンの中にいる、ちょっと年長のくせ者の人ってイメージだった笑。今でもそうだけど笑。 そしてここ最近ライブとかで再びツトムくんと顔を合わせる様になったんだけど。それでね、この前10年ぶりくらいにMATSURIでA PAGE OF PUNKを観た時、あまりの相変わらずさに何だか泣けてきちゃって。バンドが放つ爆裂感も最高にカッコ良かった。僕がシーンにいない間も、10年間彼らは変わらずブレずにバンドをやってきたって事実にすげー感動した。またツトムくんには謎の立ち位置を感じていて。こういう人が居ないとダメだよなーって思う。今回のイベントのメンツの中に入って、彼らが美味しいのかそうじゃないのかは分からないけど、当初からA PAGE OF PUNKに出てほしいって気持ちがあった。

薮:僕は安孫子さんが見ていなかった10年間ずっとA PAGE OF PUNKとツトムさんを見ていたんですが、ツトムさんは根本的に全く変わらないのですけど、その間A PAGE OF PUNKというバンドとしては沢山の変化を経験していると思うんです。色んな変化がありつつ、ツトムさんはずっとやり続けてきて、それでいて誰もやってないことをやろうという信念を常に持ってる。 スタンダードでありながら、新しい事を目指し続けている。それは安孫子さんがやろうとしているレーベルのスタンスと近い側面もあるのかなと思いました。

安:なるほどー。何だか彼らには、続ければ続けるほど謎の説得力が増している感じもある。それが魅力になってるとも思う。おじいちゃんになっても続けてほしい。

CAR10

car10 - I Don't Meet You - YouTube

安:CAR10はね、大澤くんにファーストアルバムをプレゼントしてもらって聴いた時、本当にビックリした。ずっとギターにコーラスのエフェクトがかかっていて、最初はステレオがバグってるのかと思った笑 CAR10がsnuffy smilesから7インチ出してるとか、何の文脈も知らずにいきなり聴いたんだけど、とにかく衝撃的だった。曲がとにかくドストライクってところと、あと彼らって北関東ローカルじゃん? なんかね、話してみたら自分の地元の山形の友達と遊んでるみたいな感じがあるんだよね。年の差はあれど笑。めちゃくちゃアホで面白いし笑 ライブもMC無いけど、全くスカしてる感じもなくて、3人が天然で只々遊んでる感じもいい。川田くんは凄く良い曲創るし。また色々なシーンとリンクしてる。音源聴いてる人にはなかなかどうしても伝わらないと思うんだけど、彼らは恐ろしいほどの天然かつ自然体な直感であの音を作ってる。Jonathan Richmanみたいな感じ笑 彼がヘロヘロ声で歌って出来上がる、彼等しかしていない、彼等だけのサウンドフォーマットみたいなものが、CAR10にはきちんとある。超新世代です。

薮:Jonathan Richmanの例え、なるほど!と思います。安孫子さんが仰る通り、ただ天然なだけじゃ出来ないバランス感覚だと思います。CAR10は初期からリバーブを使いこなしてましたね。6年くらい前のI Hate Smoke Recordsのコンピに入ってる曲は、リバーブとコーラスがめちゃめちゃかかったSTIKKYみたいな感じの曲を収録してました。その頃から彼らはずっとサウンドエフェクトで遊んでいて、ここ数年でそのポテンシャルを一気に開花させた気がします。例えば何か直系かと言われたら全くそんなことないし、Captured Tracksとかのバンドにサウンドのアイディアは近くても、本人達がそこを意図的に目指している訳でもないと思うんです。元々メンバーが持ってる天然でラフな空気感が、そのまま音に反映出来てて素晴らしいなぁと思います。

DiSGUSTEENS

Disgusteens - Shelter, Toyko 23.Sept 2002 (Full ...

安:DiSGUSTEENSはね、俺が普通に大ファンなの笑 俺のアイドル、その一言です。最初に上京して観た時からずっと好き。

LIFE BALLからの文脈で好きだったんですか?

安:それが偶然で、大学受験の時に東京に10日間くらいいた時があって。丁度上京する少し前にSPICE OF LIFEの何かの7インチを買って、そこにJERRY BELLYのレコ発のフライヤーが入ってたの。ちょうど東京に滞在してた日と被ってたものだから、旧新宿ロフトまで観にいったのよ。そしたらDiSGUSTEENSが出てて。なんだこれ!超かっこいい!って思って後日調べたら、LIFE BALLの文脈で出来たバンドだった。当時は本当に情報が無かったものです。もう上京してからはDiSGUSTEENSの追っかけだった笑 初めて対バンできた時は本当に嬉しかったなあ。あの、頑なに辞めない感じも好き。「ずっと俺の店開けてるから来いよ」みたいな、メンバーが変わっても仕事が忙しくてもバンドをやめない。あの感じ凄く好き。サウンドも頑なに90’Sポップパンク。いつ観ても聴いても盛り上がれる。愛してる。

薮:少し話が逸れるんですけど、DiSGUSTEENSのサードアルバム(three)を録ったスタジオで、僕らのセカンドアルバムもレコーディングしたんです。それはthreeを聴いて、「凄い良い音だ!同じスタジオで録りたい!」と思ったんです。勿論僕もずっとDiSGUSTEENS大好きです。下地さんとはいつからお話しさせて頂く様になったのか曖昧なのですが、下地さんがFOLLOW UPで連載されていたレビューで僕らの音源を紹介してくれたことがあったんです。Ramonesのカバー集だったんですけど。

僕が買えなかったやつだ。。。泣

薮:Recess Recordsからリリースしてるバンドが来日した時に僕らでも一箇所企画をしたのですが、その際に出来るだけ多く交通費を渡したくて、即席でカバー音源集を作ってカンパ制で配布したんです。その音源を下地さんにお渡ししたのですが、なんとその後レビューを書いてくれたんです!毎月下地さんのレビューは欠かさず読んでいたので涙が出る程嬉しかったです笑 そこから会う度にお話してくれるようになって、ミックスCDを頂けたりもしました。下地さんはメタルにもとてつもなく精通されてる方で、南米メタルとかの音源を収録して頂いたりしました。バンドとしてもレコード収集家としても超尊敬する方です。

LINK

LINK / PUNK ROCK - YouTube

安:LINKが再結成したって話は聞いてたんだけど。元々歳も近く対バンも多かったし凄い仲良かったんだけと、この数年間疎遠だったの。それで群馬に引っ越してから、レーベルやることが決まって、ある日仕事しながらイベントの事を考えている時に、LINKがふと浮かんだんだよね。すぐライブスケジュール調べたらちょうどその日に横浜でライブがあった。速攻車飛ばして薮君誘って二人で観に行ったのね。そしたらライブ超カッコ良くて。かなり初期の曲を沢山演ってたんだけど。やっぱりLINKも長年バンドをやって来て色んな事を経てきたと思うんだけど、やっぱりこれなんだよなーって思ったんだと思うの。それが、レーベル始めた直後の自分の心境とフィットしたもので。周りのバンドマンに聞いてみたらみんなLINK好きだし。そういえば、銀杏BOYZの最初のライブはLINKとのツーマンだった。だから、自分の再スタートにはLINKがいてほしいって凄く思った笑 

薮:僕はGOING STEADYを観たことがなかったのですが、大澤くんがチケットをとってくれて初めて観れるはずだったのが2003年に予定されてたツアー(君と僕の★BEAT戦争)だったんです。 それでGOING STEADYは解散してツアーが中止になったんですけど、LINKとのツーマンが組まれていた日だけは銀杏BOYZとして出演された日だったんです。なので、僕が初めて観た時LINKが対バンだったんです。

僕もそのライブ行きましたよー。LINKはRevolution Rockとか月面砂漠ローリングロックの時期ですよね。

安:しかしなんかうまくストーリーが繋がったなあ笑。

MILK

MILK - MY (MV) - YouTube

安:MILKは、最初に話したツアー(SEVENTEEN AGAiNの京都名古屋ツアー)の名古屋で7インチを頂いて初めて知った。そんで帰宅して聴いてみてこれまたビックリ!とてつもなく興奮しました。数多の先人たちが挑戦してきたあのスタイルのパンクを完成させたバンドがとうとう出てきたなあ、って。凄まじい引き算!音源聴いてすぐ名古屋まで飛んでライブ観に行きました。そのまんまのサウンド。何が飛び出てくるか分からないあのメンバーのルックス、キャラクターも最高。始まった瞬間から爆笑しました。そしてとても感動致しました。

最初MILKを聴いた時、VAMPIRE WEEKENDのA-PUNKを高速で鳴らしてるイメージだったんですよね。

安:ああ、なるほどね。でもMILKはもっと全然アウトプットがパンクだと思うよ。でも、宅さんの仰る通り色んな解釈ができるんだよね。Lo-fi、ガレージ、インディポップ、パンク、ハードコア何でもいけちゃう。自分のフォーマットを確立しちゃってます。薮くんどう?

薮:MILKは今と違うスタイルだった少し昔に始めて聞いたんです。SCHOOL JACKETSに近いニュアンスの音だったと思います。それから今確立した、とことんプリミティブでポップなスタイルになって、少し前にツトムさんと安孫子さんとハヤシ(killerpass)と飲んだ時にも話したんですけど、きっとその初期の時に模索して、誰もやってない視点見つけ出して、ちゃんと確立して凄いなーと思います。あと毎回見る度印象的に残るのですが、ボーカルの松原君はkillerpassのライブをみてる時に必ず凄く良い顔して盛り上がってるんです。1人でもめちゃくちゃポゴってたりして、それを見る度に凄く良いなぁと思ってました。

安:いいね~、かわいい笑

NOT WONK

NOT WONK「Guess What I'm Thinking」2014.07.12 ...

安:NOT WONKは、生き埋めレコーズのコンピで聴いて一発で心掴まれました。アウトロで打ち込みに入るセンスもそうだし、何から何までいちいち本当にカッコ良くてもうぞくぞくしました。そしてデモ音源を通販して聴いてみたら、「あ、MEGA CITY FOURなんだ!?」って驚いた!苫小牧のティーンエイジャーでMEGA CITY FOURも好き。でももう既にその遥か先を見てる感じがグイグイきた。そんな風にNOT WONKにヤられてる矢先、薮くんから「今度I HATE SMOKE TAPESから出るNOT WONKのカセットやばいっす」ってメールがきて。ちょっとだけ早く先に聴かせてもらったんだけど、もう一曲目のイントロが流れた瞬間から、カッコ良過ぎて時間が止まるかと思った!それくらい衝撃でした。

薮さんは割と早い段階からNOT WONK推してましたよね。

薮:2013年のMATSURIの時に加藤くんと初めて会って、デモをもらったんですよ。そのデモのジャケット見たら僕らのセカンドアルバムのジャケットを一部転載して使ってくれてまして驚きました笑。その後音源を聴いたらめちゃめちゃ良くてまた更に驚きました。更にその後にCAR10のレコ発でライブを見て、凄く衝撃を受けました。

僕、加藤くんの声がすごくいいと思うんですよ。

安:うん、本当に加藤くんの声いいよね!与田さん福井さんもNOT WONK聴いた時、曲の良さはもちろん、真っ先に声の良さを指摘してた。

薮:本当にandymoriくらい声が良いですよね。

SEVENTEEN AGAiN

SEVENTEEN AGAiN 「シュプレヒコール」 MV - YouTube

安:僕はもう、ただのファンですから笑 「パンクや音楽を愛してやまない」感じと、「ど真ん中を目指してる」感じ、それと「ファックユーアティチュード」と「たまらなく優しい」感じ、その混在加減がほんと素晴らしくて。ジャストフィットというやつですね笑。正直、最初はSEVENTEEN AGAiNをなめてたかも知れない。でも観た瞬間、ドストライクを豪速球でぶつけられた笑。またメンバー各位のシーンに対する精力的すぎる活動にも本当に頭が下がります。僕が仕事しながらでもレーベルを始めようと思ったのはそういう彼等の姿を見たからが本当に大きい。「パンクだけじゃ物足りないし、ただのど真ん中だけじゃつまんない。毒がなきゃ面白くないけど、優しくなきゃ嫌なんだよな。」彼等はその感じがもう完璧。みんなと話しても、かっこいいし優しいし音楽詳しいし、ほんと何でもっと人気出ないのかなっーて思います。俺の感覚間違ってるのかな?笑 ほんと一緒に心中したいくらい好き。ライブも死ぬほど観たい。

僕、それこそ10年くらい前からSEVENTEEN AGAiN観てるんですけど…(以下、SEVENTEEN AGAiNへの愛を延々と語る)

薮:本当にありがとうございます…笑

その後、インタビュアーがバンドへの愛を語って終わるという何ともおかしな幕切れとなりました。KiliKiliVillaという新興レーベルの今後に期待しましょう。最後に、リリースインフォメーションとイベントのお知らせです。


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2014.12.10 RELEASE
LIFE BALL - If I Were Your Friend
品番:KKV-005
定価:2,300円+TAX
仕様:CD+DVD


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2015.1.14 RELEASE
CAR10 - RUSH TO THE FUNSPOT
品番:KKV-006
定価:1,800円+TAX


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Kilikilivilla presents 「不安と遊撃」Vol.1
2014/12/28(日) 新代田FEVER
OPEN 16:00 / START 16:30
ADV ¥2,000 (+1drink) / DOOR ¥2,500 (+1drink)
イープラス、ローソンチケット、FEVER店頭、レーベルHPにて発売中
ローソンチケット Lコード:78486
■出演アーティスト
A PAGE OF PUNK(東京)
CAR10(足利)
DiSGUSTEENS(東京)
LINK(横浜)
MILK(愛知)
NOT WONK(苫小牧)
SEVENTEEN AGAiN(東京)

【swim! swim!epリリース!】THE FULL TEENZ伊藤くんインタビュー

京都が生んだ新世代気鋭インディポップバンド、THE FULL TEENZ(フルティーンズ)が、なんと2014年12月24日にニューカセットテープをリリースします!

リリースはI HATE SMOKE TAPES。新しい時代の空気を的確に掴み取り、この国の新しいインディポップミュージックの密やかな楽しみ方を提示する同レーベルより、今年リリースした1stアルバム『魔法はとけた』で全く新しいパンクサウンドを手に入れたTHE FULL TEENZが音源をリリースするということは最早必然であるように思います。
今回はTHE FULL TEENZのメインソングライターである伊藤くんに話を聞くことに成功しました。
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(写真真ん中が伊藤くん)
本題に移る前に、まずは今年リリースされ著者も大いに感銘を受けた彼らの1stアルバムをレコメンドさせてください。

THE FULL TEENZ『魔法はとけた』
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THE FULL TEENZ 「Sea Breeze」MV - YouTube

”美しさ on baby ポケットの中で魔法をかけて”呟くように歌ったのは小沢健二であった。人生の美しさについて彼は願いを込めて歌にしたためて、うたかたの日々をおくる若者たちの生活を少しだけ豊かなものにした。優れたポップソングとは、決してリスナーの人生を大きく揺り動かすことをせず、日々を少しだけ豊かで美しいものに変えることのみを果たすのだ。THE FULL TEENZという奇妙な名前を持つ京都の若者たちが試行錯誤の上作り上げた1枚のアルバムは、そうしたポップソングの持つ役割と責任を正しく引き受ける、素晴らしいポップソングで構成されたアルバムである。シティポップとメロディックパンクを同列に配合させながら、そこからはみ出す雑多な音楽的要素、びっしりと敷かれたリヴァーヴの海。まるで海辺の喫茶店で頼んだサイダー瓶のしずくのように、甘いノスタルジーの波が僕らを日々の向こうへ押し流す。それは窓から射す光の屈折が音楽によって歪む瞬間である。現行USインディーとの同時代性を帯びながら、アルバムは後半になるにつれそのふり幅を広げていき、あっという間に終わる。今の彼らにしか作ることのできない8のポップソング、音楽の魔法がとけることはないのだ。

ということで、音楽の魔法をさらに加速させるブランニューカセットテープが遂にリリース。
特設サイトはこちら(新曲聴けます!ジャケかわいい!)
http://thefullteenz-swim-swim.tumblr.com/

購入はこちらから!(soulmineさん いつもお世話になってます!)
http://soulmine.jp/?pid=84223858

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『THE FULL TEENZの音楽に影響を与えた5枚のレコード』『伊藤くんの人生を変えた5枚のレコード』合計10枚のレコードの逸話を主軸に置いたインタビュー、若干21歳ながら、その豊かな感受性と鋭い審美眼で選ばれた10枚のレコードとそれに纏わるいくつかの話。それではどうぞ。


宅イチロー(以下:宅):それではインタビューをはじめます!宜しくお願いします!

伊藤くん(以下:伊):宜しくお願いします!

宅:今回は、『THE FULL TEENZの音楽に影響を与えた5枚のレコード』と『伊藤くんの人生を変えた5枚のレコード』合計10枚のレコードについてのお話を聞いていきながら、THE FULL TEENZの音楽を紐解いていけたら、と思います。

伊:ありがとうございます。じゃあ、まずは『THE FULL TEENZの音楽に影響を与えた5枚のレコード』を順番にお話します。まずは、こちらです。

かせきさいだぁΞ『VERY BEST OF かせきさいだぁ』
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伊:直接的に手法を真似た事は全く無いのですが、ポップであることの理想形というか、音源自体の持つ雰囲気にうっとりしてしまいます。作曲の時等、いつもこちらを聴いては背筋をピンとさせてもらっております。ここ数年で一番聴いてるかもしれません。彼のアルバム全て良いのですが、一枚選ぶとなると、美味しいトコ取りしているベスト盤を選んでしまいますね。

宅:彼の1stとか、はっぴいえんどからの文脈も感じ取ることができて最高ですよね。個人的な思いなのですが、THE FULL TEENZの音楽からはシティポップと現行USインディをパンクでアウトプットしたような風合いを感じていたんです。なので、かせきさんの持つ人懐っこくて洗練され過ぎてないシティポップ感はTHE FULL TEENZに直結するように感じます。

伊:ありがとうございます。歌詞も文学からの引用をしていたり、かせきさんの知的な側面にも憧れますね。

literature『Arab spring』
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宅:おー、THE FULL TEENZの持つ絶妙なハイブリット感は、確かにliteratureに通じますね。

伊:僕は今21歳なのですが、高校生の頃に背伸びして現行の海外のインディーものを色々聴いていた時期がありまして、その頃にWashed outやteen dazeにハマるんですけど、その後自分の中であまりピンとくるインディーバンドが見つからなくなってしまったんです。しばらく経ってから、菅沼くん(full teenzベース)の家でliteratureを聴かせてもらって衝撃を受けました。あまりパンクとかインディーとかカテゴライズはよく分からないんですが、あえて使うならば、パンクと現行インディーの理想的な融合だと思ったんです。特定のシーンやカテゴライズに拘った活動の格好良さも勿論分かるのですが、full teenzは色々な環境で活動したいと思っていて、まさにliteratureはどんな環境でも受け入れられる音楽だと思います。僕らもそうありたいです。

宅:THE FULL TEENZの『魔法はとけた』は、色んなタイプのリスナーから歓迎を受けてましたよ。


car10『S/T』

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伊:snuffy smilesから出たcar10の7インチです。

宅:同世代ですよね?少し意外なチョイスです。これから足利にライブ観に行きますよ。

伊:car10は昔のデモの頃のイメージが強かったので、これを聴いた時、僕の知っているcar10とは違うcar10がいる…と思ってしまいましたね笑 短い曲の中にカッコ良すぎるポイントが詰まりまくってて、本当に勘弁してほしかったですね笑

宅:サウンドフェクトの懲り具合が明らかに狂ってます笑 car10とは昔から交流があるんですか?

伊:car10は2年半くらい前に初めて対バンしてから、ちょくちょく一緒にやったりしてましたね。

宅:僕はcar10にもfull teenzにも、種違いの兄弟感というか、絶妙な同時代性をビンビン感じてるんです。

伊:ありがとうございます。確かに、car10もそうなのですが、北海道のnot wonkやthe sleeping aides and razorblades等ほぼ同世代で物凄くカッコいい音楽を作っている友達が周りにたくさんいるという事は、恐怖でもあり、大変恵まれているということでもあります。いつも良い刺激を受けていますね。

宅:あらゆるポップミュージックの交配を繰り返しながら、サウンドエフェクトや空気感で海外のインディとも繋がる文脈を作っていたり、本当に日本の若いインディバンドは面白いです。近年は東京よりも地方や郊外のバンドの方が気になりますね。

manchester schoolΞ『demo』
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宅:THE FULL TEENZは同時代の若いバンドからの影響が多大なんですね。

伊:そうですね、後で詳しくお話しますが、僕らは対バンになったり、直接会って友達になったバンドに刺激を受けることの方が多いかもしれません。僕は高校生まで大阪に住んでいたのですが、たまにmanchester schoolΞを観に行ってたんです。彼らはいつ観ても狂ったライブをしていました笑 自分の自転車をライブハウスのステージに持ってきてぶち壊したり、マイクを天井にぶつけて拾う謎の行為を繰り返したり、ハチャメチャでしたね。それでいて曲はポップでカッコ良く、僕にとってのヒーローだったんです。ハードコアパンクの速さでこんなにポップな曲ができるのか、と衝撃を受けましたし、バンドの姿勢や人柄も含めて本当に大好きです。

宅:狂ったステージングに反比例する曲の良さ、ですね笑 デモを出してた頃の彼らは伊藤くんの仰る通りハードコアパンクソングが多かったので、full teenzの『夏の思い出』に代表されるファストチューンに彼らからの影響が顕著であるように思います。

伊:先日、SEVENTEEN AGAiNのヤブさんにも同じご指摘を受けました笑

Various artists『生き埋めVA』
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宅:!?

伊:自分と仲間達で運営している生き埋めレコーズのコンピレーションアルバムですね。

宅:自分達でコンパイルした作品に自分達自身が多大な影響を受けたということですか?

伊:そうです!むしろ、影響を受けるような大好きなバンド達だからこそコンパイルしてリリースしたんです。僕はインタビューでしか考えている事や姿勢を知る事のできない昔の人や、直接話せない有名な人よりも、対バンしたりライブハウスで話したりした人達から刺激を受けることが多いんです。特に、このVAに参加してもらったバンドは各々の芯がしっかりとあって、ルーツやそれをアウトプットする活動の仕方も本当に尊敬できます。

宅:なるほど、とても納得できます。自分で見て聴いて話して遊んだ人や音楽からの経験は、音源や文献等の資料からの情報に勝る、と。このお話を聞けただけでも、今日インタビューができて良かったです。では、続きまして『伊藤くんの人生を変えた5枚のレコード』についてお話していきましょう!

銀杏boyz『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』
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宅:これ出た時、伊藤くんまだ小学生とかですよね?

伊:そうです!小学生でしたね。僕が中学生の頃、兄とi-podを共有していたんです。そこで初めて銀杏boyzと出会いました。中学生の頃は、夜更かしや朝まで起きている事もしないような真面目な少年だったんですが、夏休みの夜にi-podをイヤホンで聴きながら眠りにつこうと思っていると、突然バカでかい音で銀杏boyzが流れてきたんです。最初は、こんなうるさい音楽なんてあるのか とビックリしました。一通り聴いてるうちにどんどんのめり込んでいって、その夜だけで何度も何度も繰り返し狂ったように聴いてしまい、気付けば朝になっていました。人生初のオールナイトが、銀杏boyzと出会った夜です。

宅:刺激的な出会い方ですねー笑 そもそも兄のi-podという存在が、伊藤くんの音楽の原体験なのではないでしょうか?中学生で銀杏boyz聴いたら文字通り人生変わってしまいそうですね。

伊:僕の音楽の原体験は、確かに兄の影響が大きかったように思います。ellegardenやhide with spread beaver等も教えてもらいました笑

Fruity『songs:complete discography』
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宅:『魔法はとけた』からもfruityからの影響の一端を感じ取ることができます。

伊:きっかけは忘れてしまいましたが、確か中学生の頃に出会ったんだと思います。SCHOOLJACKETSもYOUR SONG IS GOODもそうですが、JxJXさんのセンスがあり得ないほど最高で、ずっとカッコ良くて。本当に凄いと思ってます。

宅:異ジャンルを租借してパンクに落とし込むセンスとか、マネしたくてもマネできないセンスですよね。また、Fruityにはあらゆる音楽への入り口が用意されている。

伊:そうですね、音楽にめちゃめちゃ精通している人が作ってるって一聴して分かりますもんね。雑多な要素を租借してアウトプットする点においては、それをどうやたらカッコ良く実現できるかをTHE FULL TEENZにおいても常に考えています。

宅:THE FULL TEENZの音楽からも色々な音楽への入り口が見え隠れしていて、そういう意味では非常にFruity的であると思います。

weezer『pinkerton』
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伊:普通のエディションも良いのですが、後々出たシングルのB面等をボーナストラックに加えたデラックスエディションが最高過ぎます。

宅:you gave your love to me softly!!!!

伊:それです!!

宅:伊藤くん絶対好きだと思ってました笑 というか、『sea breeze』の夕焼け疾走感は完全にそれです!笑

伊:この前、フジロッ久(仮)の藤原さんが仰っていたのですが、ただひたすらに良いメロディをどのように聴かせるかという事が重要で、結局僕らのようなバンドはそれに尽きると思っているんです。weezerのpinkertonはそれがパンクのテンションでもって完璧に実現されているように感じます

宅:良い話だな~。

Various artists『Make it alright!』
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宅:i hate smoke recordsが毎年末に出すコンピレーション、こちらは2009年リリースのものですね。

伊:これは初めて購入したi hate smoke recordsのコンピなのです。SEVENTEEN AGAiNくらいしか知ってるバンドがいない状態で買ったのですが、聴いて本当にびっくりしました。良い意味でハチャメチャな演奏をしているバンドしか入っていなくて、しかもみんな曲が短い笑 当時、既にTHE FULL TEENZはコピーバンドとして活動しいたのですが、i hate smoke recordsのコンピに入ってるようなバンドになりたいと思い、オリジナルの曲を作り始めたんです

宅:今回i hate smoke tapesから新譜がリリースされますが、そのお話がきた時いかがでした?

伊:大学の講義中だったのですが、震えましたね笑 今年の6月にSEVENTEEN AGAiNを京都に呼んでライブを企画したんです。正直に言うと、僕らは京都で活動していることもあって、SEVENTEEN AGAiNと対バンする機会も1年に1度あるか無いかくらいだし、大澤さんと話す機会もなかなか無いので、ダメ元で僕らから声をかけたんです。レコーディングするので、i hate smoke recordsからリリースしてもらえませんか?と。その時の話を覚えてくださったみたいで、今回のリリースが決まりました。

宅:なるほど。しかも今最も勢いのあるテープフォーマットでのリリースです。

伊:BURGER RECORDS等のテープを好んで買っているので、すごく嬉しいですね。なぜ今回の新譜を生き埋めレコーズではなくi hate smoke recordsから出したのか?と疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。何故今回どうしてもi hate smoke recordsからリリースしたかったのか、それは自分たちの活動だけでは届かないところまで知ってもらえる可能性を信じたからです。結果として、生き埋めレコーズや僕たちが京都でやっている事を知ってもらえる機会になれば最高ですね。

wienners『cult pop japan』
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伊:wiennersもi hate smoke records関連で名前を知ったのですが、とにかく速くて短い曲の中にこれでもかとポップなメロディと展開が詰め込まれていて衝撃を受けました。特にこの1stアルバムの頃のwiennersは短い曲を矢継ぎ早に連発するスタイルで、本当に刺激的です。ショートチューンバンドは大概ファストコア的なアプローチになると思うのですが、wiennersは1分以内の曲にイントロAメロBメロサビアウトロ全てがありました。僕達も特に意識して曲を短くしているわけではないのですが、初見の方がライブを観ていて飽きない尺を意識すると、どんどん曲が短くなってしまって笑 その短さの中に展開とメロディをいかに上手に組み込むかを考えています。

宅:ある意味、Fruity的方法論を極限まで応用したバンドがwiennersですもんね。THE FULL TEENZのショートチューンもきちっと展開しながらポップで後味が良く、Fruityやwiennersの方法論を更新しているように思いました。

伊:Fruityで培われた感覚を持った方(玉屋2060%)が、でんぱ組.incのような武道館でライブをするようなアイドルと共鳴してる事実、冷静に考えると凄い事です笑

宅:でんぱ組.incもFruityの隔世遺伝ってことになりますからね。伊藤くん、そろそろ時間なので終わりになりますが、最後に何でもいいんで一言ください!

伊:いつも面白い事を考えているので、少しでも気にかけてもらえると嬉しいです。また、今回リリースするテープはダウンロードコードもついていますので、テープを聴けない方も是非!ありがとうございました!

宅:最後に、レコ発イベントの告知です。伊藤くん、ありがとうございました。


2014年12月27日(土)@下北沢SHELTER
『I HATE SMOKE RECORDS×生き埋めレコーズ presents.』

2015年3月7日(土)@二条nano
『THE FULLTEENZ presents.』

※詳細は追って特設ページで!皆さんで行きましょう!!!

Not wonkとthe sleeping aides and razorbladesの新作に寄せて

10代後半~20代前半の若者によるインディーミュージックに、沢山のエポックが生まれております。
京都のhomecomings、hi how are you?、fullteenz。
名古屋のmilk、栃木のcar10、北海道のnot wonk、the sleeping aides and razorblades等々。
あらゆる文化の中心とされた東京を飛び越え、かといってヒップホップのように過剰なローカリズムを誇示し 東京をパブリックエネミーとすることなく、"生まれ育った場所で 自然体に"オリジナリティ溢れる音楽を鳴らす若いインディーバンド達の登場は、日本の音楽シーンにおける新しい流れの到来を予感させるものです。
あらゆるインフラが整備され、良質な個人ディストロが根付き、都心部に点在するマニアックなレコードショップもほとんどのところがメールオーダーに対応し、3日もあれば聴きたい音源が手元に到着します。YouTubeで新しい音楽を発見した翌日には音源が手元に届くわけです。リスナーとしても非常に恵まれた時代の空気を胸一杯に吸い込みながら、前述したバンドの中でも特に贔屓にして止まないのが北海道のnot wonkとthe sleeping aides and razorbladesです。両者のショートインタビューは当ブログにおいて、ヤブソンインタビューに次ぐヒット記事となりました。ありがたいです。
今秋、そんな両者が同時期に新作をリリース致しました。今回はそれらについて語る言葉を持ちたいと思います。才能溢れる若きインディペンデントミュージシャンに敬意を込めまして。

Not wonk "Fuck it dog, life is too sugarless"
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I hate smoke tapesリリース第3弾。
彼らを指して『青い』だとか『若い』という形容を使われることは多い。実際僕もそうだったし、彼らを青いとも若いとも思ってる。その形容は本作においても有効だろう。うら若き10代の焦燥を鼻歌に乗せたようなメロディ、時に咆哮も辞さない歌唱、どこまでも加速するバンドアンサンブル。若い。だが、それだけじゃないし、若さや青さや到底収まりのつかないような得体の知れぬポップセンスが本作には渦巻いているのだ。1曲目『Die young for the earth』を聴いてもらいたい。前作までの楽曲(本作の②と⑤、そして④)に現れていた複雑な曲の展開を2倍速でプレイしているかのような、イントロから怒涛の勢いで疾走するキラートラックである。僕はこんなポップソング聴いた事がない。彼らの愛聴するバンドの名前を挙げるまでもなく、○○っぽいフレーズや、~~みたいなメロディ等と引用や参照元を大声で語り合う必要もない。Mega city fourもSenseless thingsもbroccoliも関係ないのだ。Not wonkでしか聴くことのできないポップソングが、常軌を逸した瞬発力で生み出されたという事。既にファーストプレス分は完売、レーベル在庫もなくセカンドプレス待ち。納められた楽曲そのままの勢いで駆け上がるNot wonk最初の到達点。lifeはtoo sugarlessだから、このままどこまでも行ってしまって!
http://soulmine.jp/?pid=80943128

The sleeping aides and razorblades"Forget me"
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白浜くんのソングライティングにおける膨大な量のポップソングからの影響と参照、その配分と用法の巧みさについてはもはや種の無い手品であり、魔法のようである。
そのイメージソースは幾多に重ねられたファズの向こう側で炎天下のアイスクリームのように溶け合わさってしまい、音楽への愛情でドロドロになったポップソングが妖しい光を放つだけなのだ。
前作"Dub narcotic fanclub"で獲得した『ポップソング』としての強度及び普遍性は、白浜くんのソングライターとしての成熟を予感させた。成熟という言葉には語弊があるのかもしれないが、彼らは彼らの敬愛するexploding heartsやsmith westernsのフォロワー枠からとっくに逸脱しており、あらゆるソングライターが羨望の目を向けるであろうポップソングを量産する季節に突入しているのだ。前作から半年足らずでの7"リリースというスピードからも明らかである。パワーポップとしてもポップパンクとしてもギターポップとしてもカテゴライズ可能ながら、いずれに括られても大きくはみ出してしまう、魔法のようなポップソング達。その最新型が本作"Forget me"なのだ。誰にも歌うことの叶わなかったメロディが10分の間に何度も登場する。寝苦しい夜にスピーカーからこんなメロディが流れてきたら、それは めくるめく音楽体験の始まり というやつである。
発売日である11/1には既にレーベル在庫残少、ソールドアウトは目前であります。
http://debauchmood.blogspot.jp/2014/09/the-sleeping-aides-razorblades-forget.html?m=1

GOMES THE HITMANは素晴らしい

2014年10月11日。GOMES THE HITMAN7年ぶりとなる復活ライブを吉祥寺スターパインズカフェまで観てきた。正直まだ少しだけ興奮していて、うまく言葉にできないけれども。
17時オープンの会場は既に熱気で包まれていて、キャパシティ限界までチケットを出したのであろう、スペースに余裕が全く無い。整理番号44番で入ったので席は余裕で確保できたが、後ろを見るとスタンディングゾーンは さながら若手人気ロックバンドのライブかのような人口密度。
18時ピッタリで始まった7年ぶりのライブ。客電が落ちた瞬間、一瞬で高揚する感覚は久しぶりである。山田さんは普段あまりライブで着ることのないジャケットを羽織り、少しフォーマルな装いで登場した。メンバーが続々と現れてまず驚いたこと。メンバーのルックスが全然変わっていないのだ。顔や体型はさることながら髪型まで変わっていない。まるで7年前の彼らがそのままタイムスリップしてきたかのような、そんな印象だ。
登場して間髪いれず、ついに1曲目のイントロが鳴らされる。満を持して 7年の時が動き出す瞬間だ。堀越さんがあの曲のイントロを爪弾きだしたその刹那、僕がはじめてGOMES THE HITMANと出会った時から今この時までの、"GOMES THE HITMANの音楽と共に生きた時間"が猛スピードで僕の頭を駆けていき、気付くと涙が止まらなかった。
"楽しいときも悲しいときもイヤホンの奥で鳴ってたあの曲が、CD通りの音階で、しかしながら生きた人間たちの確かな技術と息づかいで 鳴らされている"
満員のフロアも一緒になって横に揺れ、新しい時の始まりを祝福している。おかえりなさいGOMES THE HITMAN
その後もweekendの曲を中心にライブは進行していく。
まるで結成されたばかりの大学生バンドの練習風景を見ているかのような初々しい雰囲気がweekendの瑞々しい曲達の青春性をうまいこと引き出していて、"ベテランバンドが懐古的にファーストアルバムの曲を再現する"という事には全く陥っていなかった。本当に本当に、新人バンドみたいな佇まいで楽しかった。
この日のライブがGOMES THE HITMANの全てを表現してるとは到底思えない。おそらくバンドが一番バンドとしての青春性を帯びた初期からの楽曲を意図的に組んだセットリストだ、再始動のイントロしてはこの上ない響きをもっていた。しかしながら、GOMES THE HITMANというバンドのポテンシャルや懐の深さ、内省的ながら豊潤な音楽性を帯びるmono以降の降り幅はまだまだ体験する余地がある。それはおそらく、11月と12月のライブで実現することだろう。
ごちゃごちゃと書かせていただいたけど、おかえりなさいGOMES THE HITMAN!言いたいことはこれだけっす!
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Number two/Know your rights

パンク この寛厚な言葉に具体性を持たせるとすれば、Number twoの作品ほど適しているものはないだろう。彼らの楽曲に通底したささくれ立つパンクサウンドとポップなメロディセンスは、RamonesやRichard hellから続くパンクの定型を示し、今の時代にアップデートさせたような純度の高い"永遠のティーンエイジソウル"を奏でているからだ。そう、彼らは常に怒っており、問題を提起しており、声をあげている。
パンクとは常に怒れる若者の音楽であり、ひいては怒れる若者のソウルを持った全ての群衆のための音楽であった。
彼らのアティチュードがハッキリと体現された歌詞の一部を抜粋し紹介する。

"みんなキチガイの追いかけっこに夢中なんだ 僕には関係ないけどね みんな自分の利益に狂っちまってる 僕には全く関係ないけどね"(who wants to be young forever)

"僕はアナキストじゃないから 毎日働くし税金だって払うさ 僕はファシストじゃないから 君がどうやったら笑ってくれるのかを考えるんだ 僕は資本主義って苦手だから マクドナルドには行きたくない"(attitude)

"うんざりだ くそ情報社会 たくさんだ 便利は人を馬鹿にする うんざりだ 洗脳薬の流行歌 たくさんだ 戦うときには好きな歌を聴くんだ"(gimmi radical radio)

社会や政治における彼らのポジショニングにおいて僕は語る言葉を持たないが、もしかしたら僕も彼らのエネミーなのかも知れない。僕らは生きていれば社会を切り離すことができず、パンクと社会は切っても切れない腐れ縁である。BPMは加速しギターのノイズが噴煙をあげる。分かることは、彼らの歌に嘘は混じっていないということだ。パンクバンドである。
しかしながら、ハードコアパンクにまで振り切れることなくポップなイメージを決して崩さないソングライティングの巧みさと、ボーカルであるジュニア君の歌の魅力と素晴らしいメロディはその他大勢のパンクバンドには決してたどり着けない境地にあるといっていいと思う。あらゆるパンクのレコードを10000枚聴き漁り、本質だけをピックしたような 古今東西の血が巡ったパンクソングが鳴らされている。
最後にひとつ 個人的な話になり恐縮であるが、2007年頃パンクバンドを組んでいた友人の企画ライブにDJトイレタイムとして出演させていただいた時、同ライブのトリを務めたのが前身バンドを経て結成されたばかりのNumber twoであった。打ち上げで ジュニア君はジャクソン5が大好きだと嬉しそうに話してくれた。ギターの牛君とも西荻やポップパンクについて話したはずだ。僕にとっては貴重な体験であったため よく覚えている。帰り際に出来たばかりだという7曲入りのデモ音源をいただいた。レコード棚の天辺に鎮座しているそいつを久しぶりに聴けば、今回出たアルバムと変わらずピュアなパンクソングで満たされていてとても嬉しくなったのだ。Number twoは最高だよ。

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