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Anorak citylights

レコードを買ってから開けるまでのドキドキとか、自転車のペダルを加速させる歌や夏の夜中のコンビニで流れる有線など些細な日常とくっついて離れない音楽についての駄文集 twitter ID→ takucity4

While We're Dead.:The First Year (勝手に)全曲解説

 遅れ馳せながら、4/22にリリースされたKiliKiliVillaのコンピレーションアルバム『While We're Dead.:The First Year』に付属しているファンジンに、本名で参加させていただきました。考えて考え抜いて、自分に求められた役割みたいなものを勝手に勘違いしながら書かせていただいたのですが、蓋を開けてみれば他の執筆者の方々の寄稿文が遥かに面白く、僕は完全に負けていましたね。悔しい。

さて、ロックやパンクミュージックにおいて、コンピレーションアルバムが果たしてきた役割が非常に大きいものだという事は、周知の通りでしょう。音楽シーンにおける時代や特定の地域、コミュニティが持つムードを切り取り、同時代のリスナーに紹介する役割を果たしていました。また、何分「時代を切り取る」ことに正しく成功したコンピレーションアルバムには資料的価値が追加され、後世の音楽リスナーに受け語り継がれていくのです。

そういう意味で、本作はまさしくコンピレーション・オブ・コンピレーション。KiliKiliVillaが一番ドキドキしている音楽の地点、PUNKレーベルとしてのスタンスがはっきり映し出されており、音楽性は様々ながらどこか共通した価値観を持つバンドのみ収録されております。

これは当ブログが去年から提示してきた「新しいパンクシーン」とがっちりリンクしてくるものでありまして、そういった文脈からも今回ファンジンへの参加をお誘いいただいたのだと認識してます。
とまあ、何だか小難しい話になりましたが、純粋に良い曲ばかりの名曲集です。「お前はどのバンドが一番良かった?」なんて話で友達と盛り上がるのが一番の楽しみ方でしょう。是非アルバムを購入してみてください。音源とファンジン、最高のコンビネーションになっております。
今回『While We're Dead.:The First Year』のリリースを記念しまして、勝手に全曲解説をやります。勿論非公式なので書きたい放題、語りたい放題の有り様であります。
解説に移る前に、意味深なアルバムタイトルについて、由来を安孫子氏にお伺い致しました。『While We’re Dead.: The First Year』とは文字通り、安孫子氏がパンクから遠ざかっている間、パンクシーンが非常に面白い事になっていた事に由来しております。タイトルにあるWe'reとは一体誰なんだろう?  本当に自分か?それとも私達の周りのシーンだったりして?転じて、We're をYou'reに置き換えたら、世間に何か投げ掛けてる意味にも捉えられます。あなた達がシカトしてる間にこっちはこっちで楽しんでるぞー、と。結局のところ、タイトルの真の意味は受け取り方次第といったところなのでしょう。しかしながら、First Yearの部分については文字通り、『元年』です。これはKiliKiliVillaが今後もコンピ、ファンジンは続けていくという意思表示であります。要するに、死んでる場合じゃないぞ!って事なんだと思います。それでは、勝手に全曲解説はじめます。全ての遊び足りない好事家たちへ。
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①Not Wonk『Laughing Nerds And A Wallflowers』

トップバッターはNot Wonk。KiliKiliVillaよりアルバムデビューが決まっている、北海道のヤングパンクス超新星。当ブログでも昨年にインタビューを実施しているので、是非チェックしてほしい。4つのカウントで静かに幕が上がり、加藤が確かめるように歌いだす。徐々に熱を帯びるサウンドの向こう側にはwizの魂、彼の青い疾走のバトンを引き受けたのは、苫小牧に住む20歳そこそこの若者たちだったと誰が予想しただろうか。MC4とCirca Wavesのミッシングリンクなんて形容は決して言い過ぎでは無く、むしろ彼らの肩の向こうにはもっと広く大きなステージが見えてくるのだ。所謂パンク以外のリスナーの間でも既に話題沸騰、5月にリリースされるファーストアルバムの射程距離は遥か遠い場所を指している。

 

②Seventeen Again『リプレイスメンツ』

Seventeen Againは歌う事を止めなかったバンドだ。社会が変わっても、歳を重ねても、家庭が生まれても、彼らはバンドを続けていく事を決して諦めなかった。結果、結成10年後にKiliKiliVillaとの邂逅を果たす事になる。彼らに対するパブリックイメージは所謂メロディックパンクかもしれないが、彼らがその通り実行した事はただの1度もない。彼らは常に一貫して様々なポップミュージックの要素をパンクに落とし込んできたし、その方法論はしっかりと後続に受け継がれている。いよいよ時代が彼らに追い付こうとしているが、ここにきて更に脚力を高めた彼らに届く事はないだろう。僕らが遅いのではない、彼らが速すぎたのだ。

 

③The Sleeping Aides & Razorblades 『SILENT MAN』

00年代以降のグラムパワーポップに、新旧様々なポップミュージックのエッセンスを配合し独自のパンクサウンドを生み出す彼らだが、今回はシンセサイザーを大胆に導入。新機軸!まるで若りし頃のロバートスミスにYoung Governerが憑依したかのような激キラー膝抱え系グラムシンセパワーポップが本作の勢いを更に加速させている。I Hate Smoke Tapesからのカセット、DEBAUCH MOODからの7’ではまさしくスリーピング節としか言いようのない独自のパンクロックを展開した彼ら/彼女らであるが、その尖ったセンスの矛先がどんどんポップに振りきれている事は大変恐ろしい事実であり、来るセカンドアルバムのクオリティは本作が保証済である。

 

④Summerman『Littleman』

2014年、bandcampに突如アップされたデビューepが瞬く間に評判を呼び、一気にインディーシーンの有望株に躍り出たバンドだ。Cap'n jazz や近年の90's emoリバイバルと共鳴しながら、そこからはみ出る 確かな日本的歌心。パンクのメンタリティが爆発する彼らのライブは死ぬほど熱く衝動的であり、トリプルギターの全員合唱スタイルは初見で度肝を抜いた。 Four Tomorrow等日本の地下メロディックシーンとの親和性も高く、いそうでいなかった存在であることは間違いない。本作もハートウォーミングでありながらサビでは大合唱間違いなしのキラーチューンを披露、煌めくコードワークに導かれた先には穏やかな波の音と潮風。夏はもうすぐだ。

 

 ⑤Over Head Kick Girl『The Sunrise For Me』

NOT WONKもTHE SLEEPING AIDES AND RAZORBLADESも彼ら無しでは生まれなかった(かもしれない)、北海道の生ける伝説。執拗なピックスクラッチから一気に疾走するバーストメロディックパンク。単にメロディックといっても彼らの場合は所謂ただのそれでは無く、過剰なまでのサッドネスや、特異な展開、情念で泥々のメロディセンスを持ち合わせている。僕もスリーピング白浜くんより彼らの音源をいただき、衝撃を受けた。この感覚はあらゆる意味で早すぎた。ごく少数作成されたデモ音源は当然に入手困難、ジャパニーズパンクの新たなカルト名盤誕生かと思われたが、なんと6月にはKiliKiliVillaより編集盤の発売が決定、震えて待つ!

 

⑥Homecomings『FINE』

Heavenly発Pavement経由スピッツ行の電車で帰路に着く四人組、Homecomings。ジャングリーなギターポップ然としたデビュー作、より普遍的な歌の魅力を獲得したフルアルバムに続き、脱臼オルタナポップソングを提供。世間が彼らに期待する方向を絶妙にかわしながら、自分たちだけの方法論でしっかりとルーツに落とし前をつけている。一見パンクと紐付かない彼女たちの佇まいではあるが、福富くんのソングライティングは確かなパンクの素養を感じさせるものであり、ネオアコやギターポップもパンクを起点としたカテゴリーである。彼女たちが現行のパンクバンド達と活動を共にしているという事実そのものが、現行のパンクシーン最大のエポックであり、面白いところだ。

 

⑦CAR10『Tornade Musashi』

 今年初頭にKiliKiliVillaより発表したセカンドアルバムの興奮冷めやらぬCAR10の新曲で後半戦が盛大にスタートする。彼らの演奏はどんどんエクストリームになっていくが、川田くんの歌の焦点はどんどん絞れていく。あまり指摘されていないところではあるが、川田くんの歌は相当に魅力的だ。どんなメロディも彼の声を経由すれば妙な脱力感が生まれ、強烈な記名性がある。近年はGEZANとの邂逅やVenus Peter沖野氏からの激賞、カジヒデキの自主イベント出演等存在そのものがジャンルのクロスオーバーとなりつつある彼らだが、出自は日本の地下パンクシーンである。本作は彼らのパンクバンドとしての意地と地力を感じさせる素晴らしい勢いと発想に満ちたパンクソングである。

 

 ⑧MILK『I Always』

Vampire Weekend『A-PUNK』を二倍速で鳴らしたら、やがて目の前には田園が広がっていた…釣りだ祭りだ収穫だ!世界初、耳に優しい草食系ハードコアパンク!な4ピースカルテット。Summer Of Fanからの単独デビュー名作7'『MY E.P』も即ソールドアウト。CHEAP SKATEも真っ青なMORE CHEAP SKATEサウンドであらゆるジャンルを控えめに横切る、エンドロール中に席を立つ若者系サウンドがいきり勃つ1分間の白昼夢。このスカスカサウンドでモッシュの海を作り出す事ができるのは、世界的に見ても彼らくらいでしょう。

 

⑨Hi,How are you?『それはそれとして』

2014年春の京都旅行中、「清水寺に忘れ物をした」と自分でもどうかと思う嘘をぶっこいてホテルを脱出、Hi,How are you?のインストアライブを観た。思いついた事を喋りながら、悠々と歌をうたう原田くんを見て、十代の頃街に出てひとり考えていたとりとめのない事や、どうでもいい出来事をいくつか思い出して、なんだか家に帰りたくなったのだ。シンプルな弾き語りながらパンクの素養に溢れているであろうハイハワの歌は、バンドサウンドだらけの本作においても、浮くどころか気の利いたフックとして機能していて何だかホッとする。生活を歌にしたり、歌が生活だったりする原田くんのバランスや音楽との向き合い方は、さながら曽我部恵一さんのようだ。多作なところも含めて。

 

⑩Odd eyes『All Time Favorite』

アメリカのSST、日本のless than tvのバンドに見られた「ハードコアパンク+アルファ」を地で行くストレンジパンクバンドOdd eyes。Summer Of Fanからの7'において、「同じバンドで疑似スプリット盤を作る」的驚異の発想を見せている。パンクの枠には到底収まらない情報過多なストレンジサウンドには様々な分野からのゲスト参加も多く、その支離滅裂な音楽性も相成り、ボーダレスな孤高の立ち位置を持つ。京都PUNKシーンの懐の広さを象徴する存在であり、あらゆる人脈を巻き込んで吹き飛ばす強烈なエネルギーがある。なによりカベヤくんの言葉はパンチラインだらけで非常にかっこいい。彼は間違いなく言葉の人だと思う。

 

⑪killerpass『レイシズム』

僕が最後に観たkillerpassは(もう数年前だが)ドタバタポップパンクサウンドに自前のスペイン語でまくし立てるように歌う林さんが印象的であった。少し前に出たファースト7インチでは謎のサウンドエフェクトを装備、歌も日本語に様変わり、さながらShock Treatmentの平均身長が165センチになってBURGER RECORDSから復活作をリリースしたかのような痛快具合だったのだ。恐らく林さんは様々な国のポップパンクを泥沼のように掘ったあげく、「ポップパンクは母国語で歌う事が一番カッコいいんじゃないか」という結論にたどり着いたのかもしれない。リリックについて、僕はタクという苗字であるため中国や韓国の方と誤解される事が多く、それはそれで全然構わないのだが、人一倍レイシズムというものに対して考えることが多かった。いつの日か無くなってくれって何度も考えた。これは僕の歌だと思うんだ。

 

⑫Suspended Girls『The Sun Wind In Summer Zeal』

ポップパンク大国日本が誇る巨人達で結成された広島のポップパンクバンドのミラクルポップチューン!ポップパンクの様式美を突き詰めるとオリジナルが生まれるという、世界でも類をみないほど開かれたポップパンクだ。CAR10やHomecomingsと並列して、Suspended Girlsも入ってしまうところが本作の面白味のひとつだ。むしろ、この90'sスタイルのポップパンクはKiliKiliVilla安孫子氏の重要なルーツであり、このバランス感覚こそ安孫子氏の提示する価値観のひとつであるように思うのだ。同じ価値観を共有できるパンクミュージックを、世代を越えた形でコンパイルする。狙いは大成功といえるだろう。また、killerpass~Suspended Girlsの流れも個人的に秀逸。ポップパンク親子夢の共演である。

 

⑬Link『Douglas』

エンドロールを飾るのはLink。90年代の終わりに横浜から現れ、日本のパンクロックシーンのど真ん中を走り抜けた彼らが20年後の日本で安孫子氏率いるKiliKiliVillaと合流したことは非常に意義深い。紆余曲折あり1度は足を止めてしまったが、本作における彼らの佇まいはとてもフレッシュであり、一巡した新しいパンクシーンで彼らが新たなポジションを獲得していることは本当に最高の事実である。今まで散々若いバンドについて書いたけど、世代とか関係なく共有できる者同士でとことん楽しもうよ!って事だと思う。1曲目のNOT WONKと同じ空気感をシェアしており、Linkも彼らのように新しい気持ちで無邪気に音楽を奏でていることが伝わるロックンロールパンクは、本作のエンドロールという大役を最高の形で果たしているのだ。